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五輪新種目にもなった「SKIMO」。スピードツーリングの先に見る藤川健の夢

滑っても、登っても、いまだに先頭をひた走る山岳アスリート、藤川健、51歳。
昨冬刊行された自伝『SPEED TOURING スピードツーリング  山岳アスリート 藤川健の半生と記録』は、山岳界やスキー界隈で話題となった。
2026年2月に開催されるミラノ・コルティナ五輪において「SKIMO」は新種目として登場する。専門メディア以外での露出も増え、注目の存在だ。
競技の黎明期にアスリートとして日本の山岳シーンを牽引し礎を築いてきた、生粋の山男にこれからの展望を聞いた。

頂にあるものは「スピードツーリング」

北海道札幌市を拠点に活動する藤川健は、さまざまな顔を持つ。限られた文字数で肩書きを書くのは至難の業だ。たとえば……。

・SKIMO(山岳スキー競技)日本選手権7連覇の実績を持つ山岳スキー競技者
・日本百名山をわずか33日間で連続登頂した最短記録を持つスピードハイカー
・四季を通して、日本人だけでなく外国人も案内する山岳ガイド
・スキーとテレマークのインストラクター
・「スカルパ」や「ブラックダイヤモンド」などのテクニカルレップ

肩書きともなるこれまでの功績を一冊にまとめたのが、2024年12年に刊行された『SPEED TOURING スピードツーリング  山岳アスリート 藤川健の半生と記録』(横尾絢子 著/六花編集室)だ。


『SPEED TOURING スピードツーリング  山岳アスリート 藤川健の半生と記録』(横尾絢子 著/六花編集室)
価格2,530円(税込)200ページ
Amazonで購入可能→https://www.amazon.co.jp/dp/499137300X

「書籍の発想から約4年間、構成内容を編集者とともに練ってきました。僕のビジョンというか、打ち込んでいるなかで一番上にあるものが、スピードツーリングです。
2014年に33日間で登頂した日本百名山も、毎年出場しているSKIMOも、スピードツーリングのためのトレーニングです。そういうのをかいつまんで、まとめて1冊にしましょうと僕から提案しました。紆余曲折ありましたけど、結果的に僕の意図するおもしろい一冊になったんじゃないかなと思います」

この著書は、藤川健みずから書いたものではない。藤川と長い付き合いがある出版元の編集者、横尾絢子さんが藤川の話をもとに書き起こしたもの。横尾さんは山岳雑誌『山と渓谷』の元編集者で、気象予報士の資格を持ち、自身も登山やSKIMO、テレマークスキーを楽しむ生粋のヤマヤさんだ。
つまり、藤川の功績とその背景をよく知る横尾さんと二人三脚で仕上げた本なのだ。

SKIMO(山岳スキー競技)日本選手権で連覇を果たした直後、編集担当、横尾絢子さんとのツーショット写真


「大手出版社から刊行した方が、楽だったかもしれないですよね。販売数も確実性があったかもしれない。だけど、本の仕上がりの出来不出来は、担当編集者次第だと思います。
担当編集とどれだけ、濃いやり取りができて、ゴールが共有できているか。ただ組織が大きいだけでは、いいものは作れない。そういう意味で、横尾さんとは付き合いが長く、昔からの僕の流れを遠目にかもしれないですけど、見ていてくれていた人。横尾さんが小さい出版レーベルを始めるってタイミングで、本として形に残すことができてよかったと思います」

次世代に残る尖った一冊に

ただ編集者へ本の制作を託すのではなく、藤川自身も客観的な視点で仕上がりの理想系を持っていたという。

「たくさん売れれば、収入にはなるかもしれない。だけど、数は売れなくても書籍として尖っていて、次世代に残る一冊にしたいと思いました。
おもしろいって思ってくれる人はたとえ少なくても、受け入れてもらえる人にはかなりハマる内容だと思います」

いかに文章がうまくても、いかに人の話を聞くのがうまくても、この文章は誰にでも書けるものではない。
山岳という厳しさ、山の広がりを体で理解し、それに向かう藤川の情熱や努力がいかなるものか? を理解した山に身を置く人にしか書けないものだ。

「スキー関係の雑誌でよく仕事をしていたので、スキーの部分だけを見てくれている編集者はいっぱいいるんですけど、山を含めた僕の活動をトータルに見てくれている編集者は少ない。
そういう意味で、僕も説明するのが楽というか。離れてもいない、近すぎてもいない。そのいい距離感が、僕がイメージしたテイストに仕上がったのだと思います」

藤川は哲学書など愛読する読書家でもある。ブログ(http://telemark.fujiken.boy.jp)を含めて彼の文章は、簡潔で、リズミカルで、論理的で、理解しやすい。自分で書くことは考えなかったのだろうか?

「自慢話のような歯が浮くこともあるので、やっぱり自分では書けなかったです。第三者的な視点で、横尾さんに書いてもらったのはよかったと思います」

配信元: STEEP

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