シールウォーキングという新しい遊び
スキー場のゲレンデを登って、滑る。遊びであり、トレーニングであり、日常のエクササイズでもあるユルいアクティビティー。SKIMOとはだいぶ違う。
そこで藤川は「シールウォーキング」という名前をつけた。
「クライミングシールを滑走面に貼って、レースではなくてウォーキング。スキーは滑るためだけの道具ではありません。
歩いたり、登ったりできる多機能な優れた移動手段です。初心者はいきなり雪山へはいけません。
バックカントリーをめざす人、検定一級をめざす人、あらゆるスキーヤーが練習できる場がゲレンデであって欲しいと思います」
われわれ一般人にとって、もっとも身近な雪面であるスキー場が、入門者のために解放しなければ、なにひとつ広がってはいかない。
ヨーロッパのようにSKIMOやスピードツーリングがなかなか日本に根付かない歯痒さを感じてきた藤川の大きな一手となった。

こちらがさっぽろばんけいスキー場のシールウォーキングリーフレット。
ガイド付きの2時間半ツアーは、6,000円。
スキー、シール、ストック3点セットのレンタルは、3,500円。(エリア外への持ち出しは5,000円)
ゲレンデでのルールは4つ。
1)スキー場では滑走者が優先他の人に迷惑をかけないように。(コースの端を歩いてください。)
2)何名かで登るときはコースを塞いでしまわないように。(定められたルート以外は登らないように)
3)疲れたら、どこから引き返してもOK。ただしシールの着脱は邪魔にならない場所で。
4)滑走時は自分の実力に合わせたコース選択を!(ゲレンデコース以外は滑らないように)
「だから装備はなにもいりません。
シールとせいぜい飲み物ぐらいあればいい。初心者をとにかく増やしたかったので、スキースクールの心得のあるインストラクターにもガイド役をやらせて、いろんな人を巻き込んでいきました。ゲレンデスキーヤーがいきなりボンって道具だけ渡されても、できないじゃないですか。
ガイドみたいな専門的な人じゃなくて、ただ道具の扱いと、歩く初歩的なことを教えるだけでいい。インストラクターなら初心者でも一緒に滑って下れますから。こんなスキー場がこれから増えていけば、SKIMOの魅力が裾野へ広がっていくと思います」


SKIMOを語るとき、藤川の一言一言から一抹の寂しさのようなものを感じた。スキー・スノーボード界隈ではこれだけバックカントリーが盛り上がっているのに、なぜSKIMOは一般のスキーヤーに認知されないのだろうという悔しさのようなものだった。
スキーによる滑走、登攀技術を極めて、雪山と対峙してきた山岳アスリートは、次なるステップへ踏み出していた。赤ちゃんを背負った母親がゲレンデをスキーで登っている光景が、日本のスキー場で見られること。これが、藤川健のSKIMOにかけた夢である。
インタビュー日時:2025年2月1日(土)
取材協力: ロストアロー
