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“瞬間の熱ときらめき”から“永遠の記録”へ 牧瀬里穂、清水美砂などが演じた「四姉妹物語」が映す80年代アイドルのまぶしい残像

“瞬間の熱ときらめき”から“永遠の記録”へ 牧瀬里穂、清水美砂などが演じた「四姉妹物語」が映す80年代アイドルのまぶしい残像

「四姉妹物語」
「四姉妹物語」 / (C)1995.glico

「推し活」という言葉が世に浸透して久しい昨今、アイドルの様相も時代とともに変化してきた。日本がアイドルという存在に熱狂した80年代は、アイドルがまだ“遠い憧れ”だった時代でもある。牧瀬里穂などポッキーのCMで話題をさらった4人が出演する映画「四姉妹物語」は、いまや女優として花開いた彼女たちの輝きが詰まった一作だ。

■時代の熱気が凝縮された「四姉妹」

1995年に公開された映画「四姉妹物語」は、その成り立ちからしてユニークといえる。赤川次郎原作の「三姉妹探偵団」を翻案し、当時放映されていたCM「ポッキー四姉妹物語」シリーズにおいて姉妹役を務めていた清水美砂、牧瀬里穂、中江有里、今村雅美をそのまま物語の「四姉妹」役に起用したのだ。

当時の芸能界を牽引していたアイドルが一堂に会しただけでなく、豊かなそれぞれのキャラクターを“個性豊かな四姉妹”という関係性で繋いだ同作。原作との親和性と話題性の両立を図る、柔軟な制作陣の発想が生んだ映画だった。

長女・小暮すなみを演じたのは清水。責任感が強く、亡き母に代わって妹たちを束ねるこの役は、アイドル的人気から既に実力派女優へと脱皮しつつあった清水の落ち着いた佇まいにピタリとハマる。清水は1987年にデビュー後、連続テレビ小説「青春家族」などで国民的な知名度を獲得。その静謐な存在感が「四姉妹物語」のアンカーとなり、悲劇を乗り越える強い意志を表現している。

次女・小暮ちなみには、JR東海「クリスマス・エクスプレス」のCMやポッキーのCMなどで時代のヒロインと称された牧瀬が配された。ちなみは自由奔放で、物語のムードメーカー。牧瀬の持つ弾けるようなオーラと時に見せる若さゆえの影が、物語に動的なエネルギーを与えた。

三女・小暮こなみを演じた中江は、1991年に歌手としてデビュー。1992年にテレビドラマ出演を果たした。本作では作家・脚本家となる知性的な雰囲気を武器に、繊細で文学的なイメージを持つこなみ役を好演。中江の持つ儚げな美しさと静かな演技によって、慈愛にあふれるこなみの役に説得力を持たせている。

そして最も無垢で愛らしい末っ子・小暮えなみを演じたのは今村だ。彼女は1990年代初頭にグラビアやCMで活躍し、その健康的で明るいルックスが魅力。えなみの持つ屈託のないキャラクターは今村の持つ当時のフレッシュな輝きと重なり、その無邪気さが物語に一服の清涼剤として機能した。

さらに竹中直人、伊原剛志、橋爪功、浅野忠信、笑福亭鶴瓶といった実力派俳優陣が揃い、監督は「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」の本田昌広、脚本を「あぶない刑事」の大川俊道が脇を固める。

■非日常の事件がアイドルを伝説に

「四姉妹物語」のストーリーは、前述のとおり赤川次郎の推理小説シリーズ「三姉妹探偵団」を原案としている。映画では「ポッキー四姉妹物語」の設定を大胆に落とし込み、スピンオフとして機能させた。

物語は、クルーズ船での結婚式ですなみの親友である花嫁が殺害される事件から始まる。クルーズ船にはさまざまな奇縁のすえ、四姉妹全員が知らないうちに乗船することに。冒頭15分までのにぎやかなやり取りは、CMから変わらないキャラクターを感じさせる。

だが殺人事件が発生すると同時に、次女ちなみが犯人と思しき男に誘拐されるという事件が発生。その後も四姉妹がそれぞれの形で事件と関わることになるのだが、ここにも各キャラクターの個性が光る。俯瞰力、機転、人情味、推理力…偶然とも噛み合いながら、四姉妹全員に見せ場があるのも同映画の魅力だ。

同映画は推理小説が原案でありながら、メインキャラクターを多くしたことで生まれる群像劇的表現も特徴といえるだろう。複雑な運命に翻弄されるすなみ、事件を追う刑事・沖田(伊原)とともに機転と頭脳で犯人を追うちなみ、思わぬ出会いから慈悲深さを表すこなみ、天真爛漫ながら意外なところで証拠を掴むえなみ。

個性的な各キャラクターの魅力をしっかり際立たせる脚本も見事だが、なによりも演じる女優陣と登場人物の親和性が強い。表情と言葉に感情がたっぷり乗せられる清水のしっとりした演技だけでなく、動きも表情も大きく動く牧瀬は快活な役にピッタリ。そして知性的で落ち着いた雰囲気の中江、そして今村の活き活きとした無垢さなど、各女優が違和感なく役にハマり込んでいるのだ。

“アイドル映画”という響きには、「アイドルを出しておけば見てもらえるだろう」というファン向けの作品というイメージがつきまとう。だが「四姉妹物語」は原案をアイドルたちとの親和性を織り込んで翻案したタイトル。それぞれのまぶしい魅力を映画に収めた、アイドル映画の傑作と言える。

■女優の演技とカメラが捉えた「残像」の貴重さ

本作で印象的なシーンの1つは、次女ちなみ(牧瀬)が事件を追う刑事・沖田に対して持ち前の奔放さで食ってかかる場面だ。「ちょっとあんたどこ見て運転してんのよ」「逃げる気!?刑事だろうとなんだろうと関係ないからね!」とまくし立てる序盤のシーンは、当時の彼女が持つ明るいエネルギーと女優としての爆発的な初期衝動を映し出している。ちなみは無邪気な笑顔から真剣な眼差しまで表情がクルクル変化するキャラで、アイドルから女優への過渡期にいた牧瀬のポテンシャルを示すシーンだ。

また長女すなみ(清水)は親友を襲った悲劇とある男の苦悩を目の当たりにした上で、自らの結婚式を迎える。妹たちに見守られながら「大人の女性」としての成長を象徴する、悲しみを乗り越えて新しい人生へと踏み出す長姉の姿。アイドルという消費される存在から、人生を生きる「女優」へと昇華した彼女の存在価値を決定づけた。

かつて、アイドルの輝きはライブやテレビ番組で瞬間的に消費されるものだった。しかし「アイドル映画」はその一瞬の輝きを物語の中に取り込み、永遠の「残像」としてフィルムに焼き付ける。

「四姉妹物語」は、当時のスターたちが持つ純粋な美しさと、それを打ち砕くような情念的な悲劇を対比させることで、観客がアイドルに求めた「遠い憧れ」を完成させた。

なおCS放送「衛星劇場」では、「スクリーンで輝いた80sアイドル映画まつり 第3弾」という特集のなかで1月8日(木)朝8時30分ほかより「四姉妹物語」を放送。同局ではほかにも1月の同特集で「愛の陽炎」(1月9日[金]夜9:00ほか)「満月 MR.MOONLIGHT」(1月16日[金]夜7:15ほか)「STAY GOLD」(1月9日[金]夜7:30ほか)をオンエアするほか、本田美奈子. のライブを3作品放送するなど充実のラインナップを取り揃える。

アイドルの輝きは永遠に失われないが、その最たる魅力は時代とともに移り変わっていく。アイドルという存在のありようまで変化していくなか、当時の熱気とまばゆい輝きを切り取った映像作品はさまざまな意味で貴重だ。牧瀬たち当人のファンはもちろん、アイドルという文化の変遷を楽しむという目的でも、同作をはじめとした“アイドル映画”の世界に飛び込んでみて欲しい。

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