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「壁を超える人間力が築かれた」オランダで急上昇中の日本代表CBが“高校サッカー”と“高校選手権”への想いを語る。「満足したら這い上がれない」【現地独占】

「壁を超える人間力が築かれた」オランダで急上昇中の日本代表CBが“高校サッカー”と“高校選手権”への想いを語る。「満足したら這い上がれない」【現地独占】


 11月27日、ヨーロッパリーグのフェイエノールト対セルティック戦には両チーム合わせて4人の、その3日後のオランダリーグ、フェイエノールト対NEC戦では5人の日本人選手がフェイエノールトのホームスタジアム、デ・カイプで競演した。

 フェイエノールトの日本人選手はDF渡辺剛(山梨学院)、FW上田綺世(鹿島学園)。セルティックはMF旗手怜央(静岡学園)、FW前田大然(山梨学院)。NECはMF佐野航大(米子北)、FW小川航基(桐光学園)、塩貝健人(國學院久我山)。7人全員、全国高校サッカー選手権の経験者だ。なかでも渡辺と前田は高校サッカー部の1年先輩・後輩の間柄。旗手は2年時の第93回大会で、渡辺とともに優秀選手に選ばれている。

 これまで17人もの高体連育ちの日本人選手がオランダに渡った。ただひとり、全国高校サッカー選手権に出場経験のない小野伸二(清水商/現清水桜が丘)は、フェイエノールト時代に二度、応援リーダーという形で同大会に関わった。ちなみに昨季は上田が同役を務めている。

 Jリーグ・アカデミーとともに、高校サッカーは二段構えで日本ユース年代育成を支えている。なかでも全国高校サッカー選手権は彼らにとって最高の檜舞台だ。渡辺は第93大会の3回戦でPK戦の末、前橋育成に敗れた。
 
 年の瀬のロッテルダムで、渡辺に高校時代の思い出を語ってもらった。

――今夏、フェイエノールトに移籍し半年経ちました。

「今、チームはオランダリーグでCL(チャンピオンズリーグ)出場圏内の2位。僕も試合に出つづけてます。理想的な流れだと思います」

――北中米ワールドカップの抽選ですが、オランダと同組ということでチームメイトから反応はありましたか?

「チームメイトとは『日本とオランダが同じ組になったら面白いね』という話をしてました。それが本当になって、僕がチーム内チャットに日本の国旗を送ったら笑いが起きました。ルチアーノ(ヴァレンテ/MF)、クインテン(ティンベル/MF)といった警戒すべき選手がチームメイトにいるのは不思議な感じがします」

――さて、本題の高校サッカーの話になります。

「ひとつの目標に向かって戦う。その経験ができるのが高校サッカーの強みだと思います。ちょうど先ほど(上田)綺世と、そのことを話してたんです。進路のことを考えたら3年生にとってはインターハイのほうが大事。3年生の多くが全国高校サッカー選手権(以下、高校選手権)が始まる前に進路が決まってます。それでも全力で臨むのは、『このチームで結果を残したい』という気持ちだけじゃないでしょうか。

 高校選手権は日本国民が注目している大会のひとつ。ノックアウト形式で負けたら終わりという緊張感。高校として、サッカー部として、同じ方向を向いて全力で取り組める。そういう大会を高校年代から経験できるのが、とても大きい」

――オランダではユース選手へのインタビューはめったにない。日本では良くも悪くもメディアの注目度が高く、高校生の段階から取材対応が求められます。

「Jリーグのアカデミーと比べると、間違いなく高校サッカーに対する注目度は高い。そこで『サッカーがうまい』と言われたりして天狗になった選手は今、僕が見ている限り生き残ってません。高校サッカーで活躍したからといって、プロの世界で通用するかどうか、分かりません。プロの壁にぶち当たり、そこから這い上がれるかどうかは人間力。そこに気づいた選手はプロとして長い」
――アカデミー(FC東京)から名門高校に行くとキツかったのでは?

「それは感じなかったですね。山梨学院はどちらかと言ったら施設は良かったですし。寮生活でしたが」

――そこが大変だったのでは?

「山梨学院でサッカーをすると決めたとき、親元から離れる感覚はありましたが、東京から出るという感覚があまりなく、いざ寮生活するときになったとき『え? 俺、寮で生活するんだ』という感じだったんです。もともと性格的に楽観的なので、そこで寮生活をしながら山梨に住むということに初めて気づきました。寮生活は楽しかったです。

 大学も楽しかったです。東京に戻り、中央大学サッカー部には意識の高い選手がいて、さまざまな目標を持つ選手がいて、サッカーのレベルが一個上がる。大学では『自分がどれだけ努力できるか』が一番大事。そこがすごく楽しかった」

――大学では自分を律しないといけない。

「そうです。トップを目ざしている選手はいるけれど、それ以外の選手もいっぱいいます。朝、練習すると午後は(サッカー部としての活動は)何もない。時間がいっぱいある中で、どれだけ自己投資に費やす時間に回せるか。午後、自主練する人はするし、筋トレする人はするし、何もしない人もいる――という世界なので、個人の意識がすごく大事になってくる気がします」

――これも議論が分かれるところですが、高校生にとって高校選手権は頂点で、そこで一度目標のピークが来る。しかし、その後もサッカー人生は続きます。

「負けたときは失望感がありました。僕は高校サッカーがすごく好きだったから、終わったときにひとつ違うサッカーのフェーズに入る感覚になりました。高校選抜(デュッセルドルフ国際大会に遠征)に行ったときは嬉しかったですけれど、自分のサッカー部とは違って“サッカーの選抜で集まった選手たち”という感覚がありました。

 感覚的には大学のほうがどちらかというと“個”。大学サッカー部として同じ方向を向くのは難しい。100人いる部員の中にはサッカーを一番の目標に置いてない選手もいますし、大学生なのでバイトをしている選手もいますし、勉強を優先する選手もいます。しかし、高校選手権ではメンバー外の選手も本気で応援します。大学もチームとして戦いますけれど、個の能力が重要視されるフェーズにここから入るのかなと感じました」
――コルトレイク時代、坂元達也選手(当時オーステンデ/現コベントリー)と「家族ぐるみの付き合いをしている」とおっしゃってました。ベルギーでは金子拓郎選手(当時コルトレイク/現浦和)とも対峙しました。このふたりは前橋育英出身で、渡辺選手が3回戦で負けたときのメンバーでした。同じ大会には、セルティック戦で対戦した旗手選手もいて――と考えると高校サッカーの貢献は今も凄いですよね。

「自分の周りを見てみても、高校サッカー出身の選手は多いですよね。なぜか分からないけれど、そういう選手が這い上がってくるイメージがあります」

――オランダリーグの9人のうちふたりがJリーグアカデミー、ひとりがJFAアカデミー。残る6人が高校選手権に出ています。

「そうなんですよね。先ほど言ったように、高校として同じ方向を向いて戦う大きな大会がある。それがすべてということでは絶対ないですけれど、一理あるのかなという感じがします」

――高校サッカーで達成感があっても、その先のほうが長いということですよね。

「そうです。満足してしまう選手は壁にぶち当たってから這い上がれない。僕よりも高校ですごく活躍していた選手が大学で芽が出なかったりしたことはいくらでもある。運とか努力とかもありますが、高校のときにどういう立ち振る舞いをしたとか、人間としてどれだけ成長できたか。そこもあると思います」
――上田選手は高校・大学を経てプロとして鹿島に戻った。渡辺選手も同じストーリーです。高校・大学から古巣に戻る感覚は?

「ユースに上がれなかったときに、自分の実力不足というのは分かっていた。悔しい気持ちは間違いなくありましたが、自分以外に矢印を向けることはなかった。高校のとき『プロになりたい』と言ってましたが、『FC東京に戻りたい』という気持ちがあったので、大学に進んでから他のJリーグのクラブからオファーがあっても『FC東京(のオファー)を待ちたい』という話もしました。やがてFC東京から誘いが来たので、『僕は成長した姿を見せたい』という思いでした」

――そろそろ高校選手権が開幕します。今でも追ってますか?

「見てます。第99回高校選手権で山梨学院が優勝しました。僕が2年生のとき、先輩の代でいろいろあってニュースになり、新入生徒が来なくなったので、『この先、うちのサッカー部はどうなるんだろう』と心配しました。そこから盛り返して全国で結果を残した山梨学院は凄いと思いました」
 
――ベルギー時代、田中聡選手(元コルトレイク/現広島)や伊藤敦樹選手(現ヘント)に対する、渡辺選手の細やかな心遣いを感じ、記事にもしてきました。山梨学院サッカー部が揺れたとき、渡辺選手はイニシアチブを取って行動したのでは?

「高校3年になったとき『内部を変えたい』と思って、キャプテンと動いて『良い高校にしよう』というところからスタートし、これまであった伝統みたいなことを自分たちの代でなくすなど、達成できました。『変えられることは変えたい』という思いは高校生のときも、大学生のときもありましたし、今でもあります。置かれた環境の中で、自分にできることをやる。

 聡がコルトレイクに来たときもそう。彼には能力がある。あとは精神的なことさえ安定すれば彼のプレーが伸びるし、彼のプレーが伸びればチームにとっても良いこと。聡は一度、日本に戻りましたが、だいぶ活躍しました。今ではメンタル的にも自信を持ってると思います。

 敦樹に対しても同じ。彼はすぐに順応できましたが、それでも最初はメンタル的なところが難しかったと思う。お互いに助け合いながらやってるうちに、安定したプレーになっていき、それがチームにとって助けになり、僕への助けにもなりました。

 それは(フェイエノールトで上田とともにプレーする)今でもそうです。周りのことを気にしながら行動することで、それが良い形で自分にも返ってきます。壁を超える人間力。そういうところが高校サッカーで築かれたのかなと思います」

取材・文●中田 徹
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配信元: SOCCER DIGEST Web

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