第3回NBAカップの王者となったのはニューヨーク・ニックスだった。準決勝で大本命のオクラホマシティ・サンダーを破り、勢いに乗っていたサンアントニオ・スパーズを倒しての栄冠だ。
1973年を最後に一度もNBAファイナルを制していないニックスにとっては、実に52年ぶりの“優勝”とあって、トーナメントMVPに選ばれたジェイレン・ブランソンをはじめ、選手たちは素直に喜んでいた。マイク・ブラウンHC(ヘッドコーチ)も「球団組織の誰にとっても自信になるだろうし、大事な時期(プレーオフ)に向けての推進力になる」と成果を口にした。
とはいえ、彼らが目指しているのは12月ではなく6月のタイトルであり、カップ戦の優勝バナーをマディソンスクエア・ガーデンに飾るつもりはない。では、その“本物”のバナーを手にすることはできるのだろうか。
現時点で、ニックスはイースタン・カンファレンスでデトロイト・ピストンズに次ぐ2位。2.5ゲーム差をつけられているが、得失点差は+7.0はピストンズより上。特にホームでは15勝2敗と非常に高い勝率を誇る。
昨季もニックスは51勝をあげ、25年ぶりのカンファレンス決勝進出を果たした。それでもオフにはトム・シボドーHCを解任。代わりに迎えられたのが、昨季途中までサクラメント・キングスのHCを務めていたブラウンだった。守備を重要視するシボドーに代え、攻撃型の指導者として知られるブラウンを据えたのが、どのように作用するかが注目されていた。
今季のオフェンシブ・レーティングは121.0で、前年より3.7ポイント増加。一方の守備のレーティングはどうかというと、114.1でリーグ14位(昨季は113.3で13位)と、ほぼ前年並みのクオリティを維持できている。コーチ交代はプラスに働いたと言って良さそうだ。
コーチが変わったこと以外、昨季と今季でさほど大きな変化があるわけではない。主要メンバーも、控えセンターのプレシャス・アチウワが退団し、ベテランガードのジョーダン・クラークソンとビッグマンのガーション・ヤブセレが加わったくらいだが、戦術面では3ポイントを積極的に打つようになった。
試投数/成功数は昨季の27位/24位から、今季は8位/4位へジャンプアップ。1試合4本以上打っている選手の数も5人から8人に増えた。成功率も8位から4位へ上がっているので、効果的な攻撃となっている。
また、リバウンドも前年の平均42.6本(24位)から46.1本の3位へと大幅に増えている。チーム1のリバウンダーで、昨季は故障により17試合の出場にとどまったミッチェル・ロビンソンが、すでに21試合出ていることも理由のひとつだが、彼だけでなくチーム全員で満遍なく本数を稼いでいる。
とはいえ、優勝を目指せるだけの戦力と断言するにはためらいを覚える。そもそも12月26日現在では、ウエスタン・カンファレンスの強豪とほとんど当たっていないのだ。西の上位6強とはウルブズと2度対戦しただけで、結果は1勝1敗(NBAカップ決勝のスパーズ戦を除く)。
しかも前述のようにホームでは圧倒的に強いのに、アウェーでは5勝7敗と負け越している。現在の好成績は、緩めのスケジュールと地の利に助けられている面は否定できない。
こうした状況を考えれば、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)のようなスーパースターを獲得し、さらに戦力強化を図るべきだとの意見が出ているのは不思議ではない。
だが、ニックスファンの間ではシーズン途中の大型補強に否定的な声が多い。せっかくいい流れに乗っているのに、今のメンバーを入れ替えてケミストリーを一から作り直すのは、デメリットのほうが大きいのでは? との懸念はもっともだ。それよりも、現状のコアをサポートできる人材を加えるほうが望ましい。
具体的にグレードアップが必要なのは控えポイントガード。現状ではブランソンのバックアップを担当しているのは2年目のタイラー・コーレックで、NBAカップの決勝戦でも活躍を演じたが、まだプレーに波があるのも事実。プレーオフを見据えた上では、経験豊富なベテラン司令塔タイプがいると心強い。
また、ロビンソンの過去の故障歴を考えると、彼以外にもう一人、サイズに恵まれたビッグマンも手に入れられると安心度が高まる。OG・アヌノビーがベンチに下がっている時間帯を任せられるウィングディフェンダーも欲しい。この三つをすべて埋めるのは無理だとしても、少なくともひとつは穴を塞いでおきたい。
「ニックスは間違いなくファイナルフォー(カンファレンス決勝)には進めるだろう。そして最後の4チームのひとつに入れば、どこにも優勝のチャンスはある」。
ある球団のコーチがこう述べているように、ニックスの強さは皆が認めている。ただし、不吉な前例もある。
過去2回のNBAカップ覇者(第1回/レイカーズ、第2回/バックス)は、いずれも本番のプレーオフでは1回戦で姿を消しているのだ。カップ王者としての勢いと、成長した攻撃力を武器に、ニックスはそのジンクスを打破できるか。
文●出野哲也
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