映像怪談が暴く“死者の無意識”
後半はいよいよ、本イベント最大の見どころである映像怪談パートへ。3人が「これは映像化すべき」と判断した実話怪談を、ナレーション付き映像として上映するこの試みは、単なる怪談の再現に留まらない。
富田氏が提示した「子供病棟に現れる老女」の怪談では、「幽霊自身が自分の死を自覚していない」という無意識の恐怖が提示され、さらに「霊同士は互いを認識できず、孤立しているからこそ生者に執着する」という考察が、観客に深い戦慄を与えた。
國澤氏は、事故多発交差点のカーブミラー映像を用い、「ミラーは条件次第で別の世界線を映し出すチャンネルになり得る」という、物理学的視点を交えた解釈を披露。日常風景が一転して恐怖の装置へと変貌する瞬間だった。
阿部氏の怪談では、「宿泊したホテルが実は廃墟だった」という戦慄の体験が映像化される。
無限に続く囁き声と、朝に明かされる非現実的な光景。これを阿部氏は「動物霊による化かし」とし、民俗学的視点から解説することで、観客を思考の迷宮へと誘った。
観客参加型心理戦「ウソつき怪談師」
映像怪談で理性を削られた観客を待っていたのは、「ウソつき怪談師」という参加型企画。
3人のうち1人だけが完全創作の嘘を語り、観客は拍手の大きさでそれを見破る。
誰を信じるか、何を根拠に判断するのか。怪談というジャンルそのものを疑うこの心理戦は、会場に強烈な一体感を生み出した。
