それでも多くの人が胸を熱くする。この反応には、明確な思考の特徴がある。
「音楽史」ではなく「自分史」で聴いている
オアシスで盛り上がれる人は、彼らを90年代ブリットポップの代表として評価していない。
代わりに、初めてCDを買った記憶、ラジオから流れてきた「Don’t Look Back in Anger」、ロックがまだ“人生を変えるもの”だと信じられていた感覚といった、個人の時間を丸ごと再生している。
再結成とは、音楽ニュースではなく「過去の自分との再会」である。
重要なのは、盛り上がっている人ほど「新しい時代が来る」とは思っていないことだ。
むしろ逆で、もう前には進まない。それでも、あの瞬間だけは確かにあったという諦念を含んだ感情で受け止めている。
オアシス再結成は、未来志向のイベントではなく、回収されなかった感情の清算に近い。
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ロックが“終わった”ことを前提にしている
オアシスで盛り上がれる人は、ロックが今も世界を動かしているとは思っていない。
チャートも、若者文化も、もはやロックの居場所ではないことを理解している。
それでも盛り上がれるのは、終わったものにしか宿らない強度を知っているからだ。
現役で戦っていないからこそ、記号ではなく記憶として残っている。
