『みいちゃんと山田さん』の第5巻が12月23日に発売された。宝島社「このマンガがすごい!2026」オトコ編で第4位にランクインし、紙・電子累計で120万部突破のヒットとなっている同作は、2025年の秋ごろからSNSでの議論が活発化していた。
「絶望」「不快」も含めた賛否両論も作品の価値
同作はその内容から、「絵柄が可愛いがエグさが炸裂」「具合が悪くなった」「すべてが目を背けたくなるほどの絶望」など、衝撃を受けたという読者が続出。
一方で、「こういう人たちが不幸になる社会がおかしいのだ、と皆が思える様にならなくてはならない」「境界知能(知能指数にしてIQ70以上85未満。平均的ではないが知的障害でもない状態)を扱った作品としては今までで最も他人事ではない感じがする」などと社会的な問題提起として受け取る意見も多い。
とはいえ、「不快で極端なエピソードを『これが人間のリアルだ!』みたいに出してくる漫画が苦手」「健常者による差別と偏見を助長する」と、作品自体を好ましく思えないという意見や、問題点を指摘する人も少なくない。
そうした賛否両論を巻き起こしていること自体も、この『みいちゃんと山田さん』の価値だといえる。確かに、始まり方にしても、単行本4巻の出来事にしても、露悪的とさえいえる要素が目立つ作品ではあるが、ショックを受けてこそ、考えられることもまたあるはずだ。
「個人的な話」だからこそ考えられること
『みいちゃんと山田さん』が投げかけているのは、社会全体への問題提起というよりも、どちらかと言えば「身近な人のために何ができるか」「自分はどう生きていくのか」といった、ごく個人の「気づき」ではないか。それは作者の亜月ねねによる、第1巻のあとがきからも読み取れる。
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「みいちゃんと山田さん」はかつての私の友人がモデルで、実体験をもとにしたフィクションになります。でも、この漫画は誰にとっても「個人的な話」になるのではとも思っています。あなたの周りにみいちゃんや山田さんみたいな人っていませんでしたか?または自分に似てる部分ってありませんか?
(『みいちゃんと山田さん』第1巻あとがきより引用)
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フィクションで「身近にこういう人はいる」「自分もこういうところがあるかもしれない」と、身近な誰かにどう接するか、自分をどう見つめるかのヒントを得ることは、意義深いことだと思う。以下では、キャラクターそれぞれの描写から、どのようなことを考えられるのかを整理していく。
※以下、『みいちゃんと山田さん』単行本の第4巻までの内容に触れています。

