
“個性”を持つ人間が当たり前となった世界で、ヒーローを目指す少年・緑谷出久(CV:山下大輝)の成長を描く物語「僕のヒーローアカデミア」。TVアニメ最終章となる「FINAL SEASON」(ABEMA、ディズニープラス・FOD・Lemino・TVer・Huluほかで配信)。11月22日に放送された第8話をプレイバック。ヒーローたちとオール・フォー・ワン(AFO)の最終決戦の様子が描かれた、まさにシリーズの集大成とも言える神回「緑谷出久:ライジング」。(以下、ネタバレを含みます)
■「走れ!」――青山が繋いだ、デクへの第一歩
死柄木弔(CV:内山昂輝)=志村転弧との邂逅を経て、現実世界へと戻ったデク。しかし、その代償は大きく、ワン・フォー・オール(OFA)を失い、身体もボロボロで立ち上がることすらできない。そんな絶望的な状況のなか、戦場に駆けつけたのは1年A組のクラスメイトたちだった。「オイラたちが来た!」と叫ぶ峰田実(CV:広橋涼)を筆頭に、傷だらけのヒーローたちが死柄木の身体を乗っ取ったAFO(CV:大塚明夫)の前に立ちはだかる。黒霧のワープゲートから現れたエンデヴァー(CV:稲田徹)と轟焦凍(CV:梶裕貴)の親子コンビが奇襲の先制攻撃を放ち、瀬呂範太(CV:古島清孝)が二人をサポートすると、ついに最終決戦の火蓋が落とされた。
一方、ダメージが深く足が動かないデクの手を握ったのは青山優雅(CV:桑野晃輔)だった。「みんな、いっしょに戦ってくれてるよ」とデクの手を引き、「走れ!」と背中を押す青山。かつて内通者として苦悩し、デクに救われた彼が、今度はデクを最終決戦のフィールドへと送り出すのだった。
冒頭から、これまでの物語の積み重ねが胸に迫る展開の連続だ。エンデヴァーと焦凍が肩を並べて戦う姿は、轟家の長い確執と再生の歴史を知るファンならば感慨深いものがあるし、青山の行動にも涙なしには観られない。AFOの攻撃に晒されながらも、笑顔で「走れ!」とデクを送り出すその姿は間違いなくヒーローそのもの。このシーンにはSNSでも「青山くんがデクの背中を押すの、エモすぎて無理」「轟親子の共闘に瀬呂くんが絡むの最高かよ!」「みんなボロボロなのに、誰一人目を逸らしてない」と、感動の声が殺到した。

■世界中に響く「頑張れ!!」――“弱さ”が繋いだ最強の力
全因子を解放し、異形の怪物となって襲い来るAFO。その圧倒的な力の前に、ヒーローたちは自らの身体を盾にしてデクを守り抜く。放たれた極大のレーザーを葉隠透(CV:名塚佳織)が「集光屈折」で受け止め、上鳴電気(CV:畠中祐)と八百万百(CV:井上麻里奈)のコンビが電磁砲で迎撃。それでも止まらないAFOの攻撃を、尾白猿夫(CV:三好晃祐)たちが身を挺して防ぎ、「力を温存しろ!」とデクを先へと促す。さらには、障子目蔵(CV:西田雅一)と蛙吹梅雨(CV:悠木碧)がデクを抱えてAFOの巨体を駆け上がり、切島鋭児郎(CV:増田俊樹)、芦戸三奈(CV:喜多村英梨)、ファットガム(CV:興津和幸)が壁となって攻撃を止める。耳郎響香(CV:真堂圭)はプレゼント・マイク(CV:吉野裕行)と“個性”を繋ぎ、音波攻撃で道を切り開く。鉄哲徹鐵(CV:沖野晃司)や峰田も続き、全員が「デクなら勝てる」と信じてバトンを繋いでいく。
これほどの実力差がありながらも、なぜヒーローたちは倒れないのか。AFOはそこで気づく。オールマイトにはなかったデクの資質、それは“弱さ”だと。一人では何もできないと知っているからこそ、周りが彼を支え、何度でも立ち上がらせるのだ。そしてその光景は、配信を通じて世界中の人々にも伝播していく。避難所の市民たちが、常闇踏陰(CV:細谷佳正)が、麗日お茶子(CV:佐倉綾音)が、次々と「頑張れ!!」と声を上げる。そんななか、飯田天哉(CV:石川界人)の加速を受けたデクは、ついにAFOの懐へと飛び込み、渾身のスマッシュを叩き込むのだった!
中盤は、まさに作中のオールキャストがデクを助け応援する、「みんなが来た」展開。手を差し伸べたり、手を握ったり、エールを贈ることは、本作を通じてずっと描かれ続けてきたシリーズを象徴する行為なだけに、ここではまさにその集大成が描かれたと言える。特にキーワードとして連呼される「頑張れ」という言葉に反応した視聴者も多く、「『頑張れ』がこんなに重くて熱い言葉になるなんて」「世界中からの『頑張れ』の大合唱、画面の前で一緒に叫んで泣いた」「みんなの祈りがデクの背中を押す演出、少年漫画の最高峰だ」と、興奮と感動のコメントが溢れかえった。

■「お前はただの、寂しがりの人間だ」――敵<ヴィラン>への救済と決着
デクの一撃を受け、身体が崩壊し始めるAFO。しかし、魔王の執念は凄まじく、「まだだ!」と無理やり崩壊を止め、再攻撃を仕掛けようとする。その刹那、相澤たちの傍にいた黒霧(CV:藤原貴弘)――いや、白雲朧の意識が、「ごめんな」と言い残してAFOの元へとワープし、「死柄木弔をお返しください」と懇願。白雲の遺志とヴィランとしての使命が混ざり合った最期の抵抗を見せるも、さらにその直後、デクの背後から爆音と共に飛来してきた人物がもう1人いた。轟が作った氷のジャンプ台を使い、満身創痍の身体でデクの背中を押し「俺に追い越されてんなよ!」と叫んだのは、爆豪勝己(CV:岡本信彦)だった。その推進力を得たデクは、再びAFOに拳を振りかぶる。
「お前はただの 寂しがりな人間だ!!」
デクの言葉と共に放たれた一撃は、今度こそAFOの精神を粉砕する。薄れゆく意識の中、弟・与一の残滓と出会ったAFOは、彼に「大好きだ」と叫ぶも、与一から「そうやって全てを己が為に利用してきたツケを払う時だ」と返され、共に消えていく。そして、消滅したAFOと入れ替わりで戻ってきたのが死柄木の意識だった。最後の最後まで敵<ヴィラン>として振る舞い、壊すために戦おうとする死柄木に、デクが「もう、壊したよ」と返すと、死柄木は笑って消滅していくのだった。
終盤は、AFOと死柄木に対する救済の物語。絶対悪であるAFOに対し、力でねじ伏せるのではなく「寂しがりな人間」と定義した上で引導を渡したデク。彼が最後まで貫いたのは、たとえAFOのような理解不能な存在であっても、決して理解しようとすることを諦めない、そんな「救ける」戦いだったと言える。相手がデクだったからこそ、AFOも死柄木も、最後には人間として死んでいくことができたことを考えると、まさしくそれは「救済」と呼べる結末なのかもしれない。この結末にはSNSでも「AFO、最後はただの弟大好きな兄貴だったな…」「かっちゃんが最後に背中を押すの、完璧すぎる」「デクの優しさが世界を救ったんだ」と、視聴者も涙、涙の嵐となった。
長きにわたる戦いが、ついに終わった。しかし、物語はまだ終わらない。失われたものの復興と再生、そして彼らの未来がどう描かれるのか。次回「エピローグ/地獄の轟くん家・FINAL」のレビューもお楽しみに!
◆文/岡本大介


