・乱世
そんなカオスの中にあるカレーライスが松坂牛ホルモンカレーだった。つまり、松阪牛ホルモンかつカレーそばはこの松坂牛ホルモンカレーを使ったカレーそばに豚かつがプラスされた一品というわけ。ちなみに、税込850円でした。
注文してみると、やって来たのは全部乗せみたいなカレーそば。豚かつをひと切れ持ち上げてみると、これがまた分厚い。ぼってりとした松阪牛ホルモンすら脇役にする存在感。強い。
カレーそばは発明当時、そばの風味が消えることもあって老舗そば屋に受け入れられなかったという歴史があるが、それどころの話じゃない。なにせ松坂牛ホルモンカレーに豚かつまでアサインしているのである。乱世だ。戦国時代で例えると、島左近くらいのポジションにそばが追いやられている。
だが、なぜだろう? その姿勢に潔さすら感じるのは。食べていると、めくるめく肉々しさにこう思わされた。「何かを得るためには何かを捨てる必要があるのかもしれない」と。
・社長に聞いた話
ガッツリ食べたなあ。850円でそう感じさせてくれるこの一杯はやはり普通の立ち食いそば屋のそばとは違う。何かを振り切っていると言えるだろう。限界突破している。突破してはいけない壁だった可能性もあるけど。
ゆえに、好き嫌いは分かれると思われるが、なぜ立ち食いそば屋で松阪牛ホルモンなのか? しかも、豚かつをトッピングしない「松坂牛ホルモンカレーそば」は600円で「松坂牛ホルモンカレーライス」は650円だから価格も別に高くない。
社長の大橋さんに聞いた話によると、この一帯で色んな飲食店を展開していて、焼き鳥屋・もつ焼き屋もその中にあるのだそうな。近所でそこの素材を回したりも簡単なため、立ち食いそば屋だけではあまり仕入れられない素材もメニューとして使えるという。
なんとなく立ち食いそば屋という枠に収まらない雰囲気はそういう裏側からにじみ出ているのかもしれない。パッと見カオスだけど、ある意味「うちの戦い方はこれ」という独自さも感じる雑賀屋。これからも邪道上等で突き進んでほしいものだ。
