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【2025年シーズンを振り返るコラム】ブラピ史上最大のヒットとなった映画『F1/エフワン』は、日本のモータースポーツファン層拡大に寄与したか? とにかく面白かったよね

【2025年シーズンを振り返るコラム】ブラピ史上最大のヒットとなった映画『F1/エフワン』は、日本のモータースポーツファン層拡大に寄与したか? とにかく面白かったよね

2025年のモータースポーツシーンで忘れてはならないのが、映画『F1/エフワン』の公開・大ヒットであろう。

 今年の6月のことであった。以前から話題に挙がっていた映画『F1/エフワン』が日本でも公開された。実に面白かったと思うのだが、みなさんはいかがであろうか?

 振り返ると、AppleがF1を題材にした映画の制作を開始しており、主演ブラッド・ピット、制作は大ヒット映画『トップガン:マーヴェリック』のチームが手がけるという情報が飛び込んできたのは、2022年1月のことであったらしい。

 以前にもF1やモータースポーツを題材にした映画はあった。ジェームス・ハントとニキ・ラウダの対決を描いた『ラッシュ』など、どれも素晴らしい作品だった。しかし今回は今のF1を題材にした映画だという……そんな映画が本当に作れるのか、作れたとしてもチープな仕上がりになってしまうのではないかという不安を抱えた方もいらっしゃったのではないだろうか。

 しかし徐々に全貌が明らかになっていくと、期待感が高まっていった。F1全面協力、ルイス・ハミルトンがエクゼクティブ・プロデューサーを務め、実際のグランプリ中に撮影が行なわれる……これはとんでもない映画になるのではないかと感じたのを覚えている。

 そして実際に撮影が始まると、グリッドに並ぶAPXGPのマシン、実際のドライバーと共にスタート進行に臨むブラッド・ピットなどを撮影した写真が撮影され、その一端が見えてきた。またDAZNの中継前などに送られてくるテスト映像に、APX GPのマシンがF1セッション直前のコースを走るシーンも、実は何度か送られてきており(本編では、APX GPのマシンやブラッド・ピットらが映り込まないよう、巧妙な画作りがなされていたが)、本格的な映画になるだろうと確信した。

 恐縮ながら私は、試写会でひと足先に拝見させていただいた。空撮でシルバーストン・サーキットに徐々に近づいていき、そしてAPX GPのマシンを捉え、バックショットを背景に本作品のタイトル『F1』が、まさにF1の公式ロゴで表示されたその瞬間、心をグッと鷲掴みにされた気がした。もちろん、ハンス・ジマー作曲のメインテーマも、気持ちを昂らせた。

 そこからはあっという間の3時間であった。

 我々は普段、朝から晩までモータースポーツに触れている。そういうこともあり、私は業務から離れた時には、極力モータースポーツから離れることにしている。しかしこの映画『F1/エフワン』はちょっと違った。プライベートでも映画館に観に行ったし、有料でのデジタル配信が開始されたその日に購入し、その後何度も観た。

 もちろん、レギュレーションをはじめとして、実際のF1と違う部分はたくさんある。しかしF1を題材とした映画として、非常によくできていたというのは、紛れもない事実であろう。いや、一作品の映画としても素晴らしい出来だったということなのではないだろうか。

 モータースポーツファンの方が多く映画館に足を運んだというのは、まさにその通りであろう。私が劇場に行った時にも、F1チームのウェアを身に纏った方も何人か見かけた。往年のミナルディ・チームのウェアを着用した強者もいた。

 しかしそれ以上に、一般の方々、多くの映画好きの方が、この映画『F1/エフワン』を映画館で見ることをお選びになったようだ。現に私のプライベートの知人も何人もが本作を見に映画館に出かけた。中にはその結果モータースポーツにどハマりしたという方もいる。ことわっておくが、私がこの映画をオススメしたわけではない。また、IMAXなど大スクリーンでの上映は連日満席だったということも、それを裏付けていると思う。

 実は本作が公開されたタイミングは、実に厳しい時期だったと言える。当時は『ミッション:インポッシブル』や『ジュラシックパーク』の最新作が公開され、邦画でも今年話題沸騰の『国宝』や『鬼滅の刃』などが公開された頃であった。映画『F1/エフワン』は、山のようなライバル映画と対峙しなければいけなかったのだ。しかも、事前のCMなどはほとんどなし。にもかかわらず、公開前からその期待度は高く、実際に公開されると、大ヒットを記録した。

 公開前には、ブラッド・ピットが急遽来日。聞くところによると、本当にイベント実施直前に来日が決まったのだという。これも、日本での期待が高まっていることが実を結んだということだろう。

 また、IMAXなど大スクリーンでの公開期間が終わった直後に、IMAXでの再上映が行なわれるというのも、映画関係者によれば実に異例のことだという。

 興行成績では、前述したタイトルには叶わなかったものの、それでも強烈なインパクトを残した作品になったというのは間違いないだろう。そして「F1が好き」という方以外にもF1/モータースポーツの魅力を伝えるという意味では、大きな役割を果たしたと言うべきであろう。

 既に続編の制作・企画も動き出しているという。公開が何年後になるのか分からないが、今から観劇するのが楽しみである。しかし数年後ともなればブラッド・ピットはいったい何歳になるのだ??? 次回作でも現役のレーシングドライバーを演じるのかな? というところは気になる。

 そして願わくば、次回作公開の際には事前のPRがもっと行なわれ、そして角田裕毅の出番が増えることも期待したい。

 ちなみにもうひとつだけ。字幕の出来上がりも秀逸であった。F1の専門用語は極力使わず、それでいてF1ファンが見ても違和感のない言葉・言い回しを選ばなければいけない。たとえば”ステイアウト”という言葉は、我々のようにモータースポーツに慣れ親しんでいるなら理解できるが、一般の方には理解しづらい。監修を務められた中野信治さんをはじめ、日本語字幕の制作チームは大変なご苦労をされたことだろう。しかしその甲斐もあって、素晴らしい出来になったと思う。

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