
オリジナル劇場長編アニメーション「迷宮のしおり」が、2026年1月1日(木)に公開される。「マクロス」シリーズや「アクエリオン」シリーズで知られ、近年は大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサーも務めた河森正治監督が手掛ける本作は、「歌」、「SF」という河森作品の代名詞に、「スマートフォン」という現代的モチーフを掛け合わせた、エモーショナルな異世界青春脱出劇だ。そんな本作で、声優に初挑戦したtimelesz・寺西拓人。声優ならではの難しさや、作品の内容にかけてSNSに関することについてたっぷりと語ってもらった。
■声優業は初挑戦“ベタ褒めされて「本当に?」と疑いながらのアフレコ”
――数々の舞台やドラマ・映画に出演されている寺西さんが「声優」に初挑戦ということで、「初めてだからこそ気づいたこと」はありましたか。
なんとなく知ってはいたのですが、実際に現場で皆さんのプロフェッショナルな働きを目の当たりにして、アニメという作品にどれだけ多くの人手と時間がかけられているのかを改めて実感して、よりリスペクトが生まれました。
それに何といっても実際にやってみて、「声優さんってスゴイな」と感じました。アニメのアフレコって、画面に表示されるタイムコードを見ながらキャラクターの口の動きも見る。その上で自分のお芝居をするんですよ。普段僕がやっている、役者さんとのやりとりとはまったくの別物でした。いろいろなことを気にしながら考えてお芝居をするのは、難しかったです。
――逆に声の演技だからこそ楽しかったのは、どんなところでしたでしょうか。
自分であって自分じゃない部分がすごく大きいところ…でしょうか。終盤で大掛かりなバトルシーンがあるのですが、技名を言ったりするのは、アニメーションならでは。そういう部分は、すごく新鮮で楽しかったです。
――確かに。そういうのは、生身のお芝居ではなかなかないですね。ところで、声優というお仕事に興味はあったのですか。
実は、マネージャーさんに「アニメの声優って興味ある?」と聞かれていたんです。もちろんその時に「興味あります、やりたいです」と返事はしたのですが、聞かれ方があまりにフランクだったから、ずっと先の話だと思っていたんです。なのですぐに決まって、びっくりしました(笑)。声優ができることになってうれしかったのですが、ちゃんと勉強しないといけないものだと思っていたから「できるのかな?」という不安もありました。
――では、勉強する時間もなくぶっつけ本番での挑戦だった?
「初めてなので、可能であれば事前に練習させていただきたいです」とリクエストはしていたのですが、アフレコ当日に、現場で「練習がてらテストで録ってみましょう」という感じで…(笑)。
――それでも、監督やスタッフさんにたくさん褒められたそうですね。
そうなんです。自分としては、そのテストでいろいろと指導していただこうという心持ちだったのですが、「いいっすね」、「素晴らしいっすね」とベタ褒めされて、「本当ですか?」、「初めてなのに?」と疑いながら(笑)。とにかく、すごくやさしい雰囲気が流れている現場だったので、それも相まって、自信がない中ながらノセられてしまった感じでした。
■傑のセリフは「僕が普段絶対言わないような言葉が多い」
――寺西さんが演じられた架神傑(かがみすぐる)は、スマホと人間の脳を直接つなぐ研究者で、若き天才起業家。主人公・前澤栞と、栞と入れ替わったSHIORIを翻弄する役どころです。栞とSHIORI、2人の主人公の声を担当したSUZUKAさん(新しい学校のリーダーズ)とのシーンを演じることが多かったと思いますが、アフレコは一緒だったのでしょうか。
はい。2人のやりとりのあるシーンは、ほぼ一緒に録らせていただきました。なので、その場でSUZUKAさんと監督とやり取りしながら雰囲気を作っていきました。
――演じられた架神傑の魅力は、どのようなところだと思われましたか。
掴めないところ…が魅力かな? 実は僕も「掴めないヤツ」と言われることがあるので、ちょっと似ているところがあるのかも。でも僕自身は、そんなことないと思っているのですが(笑)。
傑は、自信のないところから希望を見つけて、崩壊していく人間。掴みどころのない雰囲気というか、ミステリアスな雰囲気が出せるように、ちょっと誘惑する感じを意識して演じました。誘惑といっても恋愛的誘惑ではなく、自分の目的のために引き込んでいく感じ。どんどん変化していくキャラクターなので、いろいろな傑を出せるように心がけました。
――スマホの中に閉じ込められた栞に「本当の自分を取り戻させてあげる」と言ったり、SHIORIに“ある計画”をささやきかけたりするのは、まさに誘惑ですね。恋愛的ではないとおっしゃいましたが、傑が栞に言う「君は運命の人かもしれない」というセリフは、寺西ファンをキュンとさせる「キラーワード」でした。
いや…、演じたときはキラーワードと思ってなかったんですよ。その時は恥ずかしい方が大きくて。でもこうやって改めて言われると、キラーワードですよね(笑)。傑のセリフって、僕が普段絶対言わないような言葉が多いんです。運命はもちろん大事だと思うけど、そういうことを言えちゃう人物ですね、傑は。
――寺西さんが「運命の人かもしれない」と思った人はいますか?
僕はずっとサッカーをやっていたのですが、今の会社に入る時、偶然同じオーディションに同じサッカークラブで一緒にプレイしていたヤツがいたんです。ふたりとも合格して、しばらく一緒に活動していたのですが、その関係性は運命だなと思いました。そいつは辞めてしまったけれど、今でも仲良くしていますよ!
■「timelesz project」がきっかけでデジタルデトックス
――物語は、スマホの世界で展開されます。スマホ中毒、SNS中毒ともいえる現代社会への警鐘とも捉えられよね。
そうですね。実際に僕も、映像を見たり、台本を読むのもスマホでやっているので、スマホを手放せない。だから、時代にマッチしている作品だなと思いました。この作品を通して、スマホの中の世界だけを見て「こうなりたい」と思ったり、他人と比べたりするよりも、自分と向き合って、自分を受け入れることが大事だなと実感しました。
――「こうなりたい」と思うこと、あるんですか?
僕自身は「こうなりたい」と思うよりも、そうなるために頑張り続けている…なのかな。でも僕らの仕事は比べられることが多いから、考えるところは多かったですね。10代の頃は活躍している人を見て、「こんな音楽をやれるってカッコいいな」とか、「こんなお芝居ができるっていいな」と思っていましたが、この10年くらいで、ようやく「自分は自分」と思えるようになりました。できないことは、できないので(笑)。
――ちなみに、SNSでのエゴサはされますか。
こうして作品が世に出るタイミングは、どう受け取られているのかが気になるから、見ちゃいます。でもそこで見えるものだけが全てではないので、エゴサで傷ついたり落ち込むことはないですね。むしろ、読みながら「わかってないなぁ」と思うことが多いかな(笑)。切り取られた部分だけを見ている人も多いので仕方がないのかもしれませんが、timeleszになってから、そう感じることが増えたかも。世論とどう対峙するかは課題だと思っています。
――先ほど「スマホが手放せない生活」とおっしゃいましたが、もし1日スマホが手元になかったら?
ないと不安になるけれど、「timelesz project」のオーディション期間中は、スマホを預けていて触ることができなかったんです。「イマドキそんなことあるんだ!」と驚いたし、ファンクラブのブログを更新したり、現場とのやり取りもしなきゃならなくて困ったけど、「これはこれでいいな」と思う瞬間もありました。
それがちょっと心地よくて、以前はお風呂にもスマホを持ち込んでいたけれど、今はあえてお風呂には持ち込まないようにしています。
――じゃあ、なければなくても平気なんですね。
なくても周りの方に頼れば、なんとかなりそう(笑)。
――映画『迷宮のしおり』は、1月1日公開です。最後に、完成作で初経験の声優・寺西拓人の声聞いて、どういう感想を持たれたのかを教えてください。
もちろんアフレコの時は、自分の持てる全てをやりきったつもりですけれど、完成した作品を見てみると、アフレコのときに発した自分の声のテンション感と、映像から聞こえる声のテンション感って全然違うんだなというのを改めて実感しました。まだまだ、立ち向かう課題は多いですね!
◆取材・文=坂本ゆかり/撮影=梁瀬玉実

