
地上波放送のリアルタイム視聴だけでなく、配信プラットフォームでのアニメ視聴が一般化した。TVerが民放公式サービスとして配信数を拡大し、新たな選択肢として台頭する中、それとは一線を画す独自の戦略で支持を集めているのが「ABEMA」だ。
2025年、ABEMAが仕掛けた多角的なアニメ施策を振り返ると、そこには単なる「動画配信」に留まらない、視聴体験そのものの変容が見て取れる。
■「最新作の豊富さ」とデータが裏付ける多様な視聴ニーズ
2025年のABEMAは、1月クールの『薬屋のひとりごと』を筆頭に、4月の『ジークアクス』、7月の『光が死んだ夏』など、各期話題の最新作を網羅的にラインナップし、常に「今、見るべき作品」が揃う環境を維持した。特に『薬屋のひとりごと』は、ABEMA全体の上半期・下半期視聴ランキングでジャンルを超えて上位に食い込むなど、最新作の無料配信をフックにした集客力の高さを示している。
また、単に配信するだけでなく、視聴動向の可視化にも注力した。12月に発表された「10代に人気なアニメランキング」や、過去の「異世界アニメ累計視聴数」の分析など、ターゲットやジャンルを深掘りしたデータ発信を積極的に実施。これにより、コアなアニメファンから最新の流行を追うライト層まで、多様なニーズがプラットフォーム内で共存している現状を浮き彫りにした。
■「番組」から「祭り」へ:オン・オフを融合させた独自施策
ABEMAの特色は、画面の中だけに留まらない展開にある。人気声優が日替わりでMCとなるバラエティー『声優と夜あそび』では、生放送ならではのライブ感を生かしたコンテンツが日常的に供給されている。
その延長線上にあるのが、9月に開催された「ABEMAアニメ祭」だ。会場来場者数は6万人を超え、総視聴数は61万を記録。渋谷・MIYASHITA PARKをはじめとする渋谷周辺にて、新作アニメの声優たちによるトークイベントのほか、フォトスポットやシネマ上映など渋谷の街をアニメ一色に包んだ。
オンライン配信とオフラインイベントをシームレスに繋ぎ、ファンが一体となって熱狂できる場を創出する手法は、プラットフォームとしての独自のアイデンティティを確立させている。
■「コメント機能」と「専用チャンネル」が作る、イベントのような熱狂
もう一つ、ABEMAを語る上で欠かせないのが「コメント機能」による擬似的なリアルタイム体験だ。
テレビ放送の強みが「同時視聴による一体感」であるならば、ABEMAはデジタル上でそれを再現している唯一無二の存在と言える。誰かの書き込みを見ながらアニメを見る体験は、孤独な視聴を「イベント」へと変える。
この強みを最大化させているのが、2024年から2025年にかけて驚異的なペースで増設された「24時間編成の専用チャンネル」群だ。
3月の『マクロス』『ちいかわ』『黒執事』を皮切りに、『名探偵コナン』『遊☆戯☆王』『SPY×FAMILY』、そして11月の『ゆるキャン△』に至るまで、期間限定で話題作が24時間絶え間なく流れる状態を構築。通年で展開される『あたしンち』や『ポケモン』も含め、「探して選ぶ」というオンデマンドのハードルを下げ、「とりあえずABEMAをつけておく」という視聴習慣を生み出している点は、Amazon Prime Videoなどのストック型サービスにはない独自の価値と言えるだろう。
■2025年の総括と、年末年始の視聴環境
2025年を締めくくる試みとして展開されるのが、300作品以上に及ぶ一挙無料配信である。『薬屋のひとりごと』『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』など最新のヒット作から長編シリーズまでが並ぶ「300作品一挙無料配信」ラインナップは、年末年始というまとまった時間に「見逃した作品を補完したい」「お気に入りを一気見したい」という視聴者心理に合致する。1年を通じて蓄積された多様なコンテンツが、この時期に改めて解放される形だ。
オンラインの利便性と、オフラインの熱量。その双方を循環させ続けた2025年のABEMAアニメ。その取り組みの積み重ねが、2026年以降のアニメ視聴スタイルにどのような影響を与えていくのか、今後の動向が注視される。

