
海外ではエロアニメやエロマンガは『HENTAI(変態)』コンテンツと呼ばれています。
オーストラリアのマッコーリー大学(MU)で行われた研究によれば、このHENTAIコンテンツを好んで見る人々の心理を分析したところ、他のポルノを好む人々といくつかの点において異なる、との結果が得られました。
一見して不真面目な研究に思えますが、『HENTAI』の研究は人間の認知の奥深さと強く関連しています。
人間ではありえない巨大な目や、あり得ない等身・スタイルを持つ不定形の存在は、通常ならば恐怖や不気味さを感じさせる対象となりますが、『HENTAI』を好む人々はむしろ性的欲求の対象として積極的にかかわろうとしているからです。
しかも『HENTAI』の人気は現在も拡大しており、文化圏にかかわらずポルノにおける主要なジャンルになりつつあります。
なぜ人類はこんなにも、非人類的な存在に対して性的欲求を感じるのでしょうか?
本研究はそんな奥深い疑問に対して第一歩となる『HENTAI』愛好家たちの基礎的な心理分析が行われています。
研究内容の詳細は 2022年9月に科学雑誌『Sexologies』にて公開されています。
目次
- 変態消費者と他の消費者には違った特徴があると判明!
- 『HENTAI』に対する規制も人間のポルノとは区別したほうがいい
変態消費者と他の消費者には違った特徴があると判明!

現在『HENTAI』は国際語になりつつあります。
日本で発達したアニメ文化が世界中で人気になる陰で、アニメ風のキャラクターがポルノに従事しているエロアニメ・エロマンガもまた、大きな盛り上がりをみせるようになっていきました。
そんな日本初のエロアニメ・マンガをいつからか海外のポルノサイトでは『HENTAI』とカテゴライズするようになりました。
『HENTAI』コンテンツの人気はネットの普及とともに爆発的な増加をみせ、アジア地域だけでなく世界中の人々を魅了するに至っています。
有名な話ではファイナルファンタジー7のリメイクがリリースされた直後に、ポルノサイトでは登場キャラに対するポルノ検索件数が7631%も増加していたことが知られています。
マッコーリ大学のジョナサン・パーク氏もまた、日本のアニメ・ゲーム・同人誌が大好きな1人であり、10代の若い頃から『HENTAI』の魅力に夢中になっていました。
そこで、パーク氏らは『HENTAI』人気の謎を解くために、『HENTAI』を好む人々の心理学的な分析を行うことにしました。
実験にあたっては平均年齢21歳の208人の参加者(白人:44%、アジア人:40%。中東:6.7%)が募集され、愛情にかかわる心理テストが行われました。
(※男女比は男性75人・女性133人でした)

また上の画像(実際に実験に用いられたものの一部)のように、アニメキャラと実在の人間の画像の両方を用いた魅力の比較などが行われました。
結果、『HENTAI』愛好家たちは他の人々と比べてアニメキャラに高い魅力を感じており、ロマンチックな関係になりたいと感じていることが判明します。
一方で興味深いことに、『HENTAI』愛好家たちが実在する人間に対して感じる魅力の強さ(ランキング)も、他の人々のランキングと同じでした。
この結果は、『HENTAI』愛好家が非人間的な存在を好むのは、美的感覚や魅力の判断力が狂っているからではないことを示します。
(※つまり巨大な目が好きだからアニメキャラを好きになったわけではない)
当然のように感じる結果ですが、学術的に確かめられることは非常にまれです。
また心理学的なテストでは愛着回避と愛着不安の要素が調べられました。
愛着回避は親密な関係になるのを避ける傾向の強さ、愛着不安は親密な関係が崩れることを恐れる傾向の強さを意味します。
これらの要素が調べられたのは、アニメ好きのオタクはリアルの彼氏彼女を作るのを避ける愛着回避が強く、彼氏彼女ができたとしても関係が崩れることを恐れる愛着不安が強いだろうという、オタクに対する一般的な見解が正しいかどうかを確かめるためです。
結果、愛着回避は有意な差はみられなかったものの、一部の『HENTAI』愛好家の女性においては愛着不安が強い傾向が認められました。
『HENTAI』愛好家は実在する人間との間の愛情や恋愛に特に回避的というわけではありませんでしたが、女性の『HENTAI』愛好家においては、愛情不安を覚えやすいようです。
『HENTAI』に対する規制も人間のポルノとは区別したほうがいい

この研究により、『HENTAI』として世界中に拡散されているエロアニメ消費者の、心理的な傾向の一部が示されました。
『HENTAI』愛好家はアニメキャラに強い魅力を感じる一方で、実在する人間に対する魅力評価(美男美女ランキング)は他の人々と同じパターンを示しました。
また『HENTAI』愛好家は恋愛や愛情に対する積極性は他の人々と同じだったものの、女性の『HENTAI』愛好家においてはパートナーの愛情に対する不安が大きい傾向がみられました。
これらの違いから研究者たちは、『HENTAI』と人間のポルノを同列に考えるべきではないと結論しました。
『HENTAI』に登場するアニメキャラクターに対して人間は独自の解釈基準を持っており、女性においては心理的な状態も一部違いがあったからです。
研究者たちは論文の最後に、「『HENTAI』コンテンツが人間のポルノと同じように行動・感情・態度に影響を与えると仮定するのは適切ではない可能性がある」、と述べています。
何らかの規制を行う場合でも、『HENTAI』と人間のポルノは別個のものとして扱う必要があるかもしれません。
研究者たちは今後も『HENTAI』の研究を続け、人間の認知が非人間的な不定形の存在から受ける影響を調べていくとのこと。
巨大にふくれあがった『HENTAI』産業は人類の精神的な領地に独自の王国を築き上げており、その人気の秘密を解き明かすことで、人間の認知能力の奥深さを解明できるかもしれません。
参考文献
Psychologists have started to examine how hentai consumers differ from people who do not consume hentai
https://www.psypost.org/2022/01/psychologists-have-started-to-examine-how-hentai-consumers-differ-from-people-who-do-not-consume-hentai-62424
元論文
The differentiation between consumers of hentai pornography and human pornography
https://doi.org/10.1016/j.sexol.2021.11.002
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

