2025年の6月に公開され、大ヒットした映画『F1/エフワン』。この映画の成功を後押ししたひとつは、衣装であったと言えるかもしれない。
本作の衣装デザインを担当したジュリアン・デイは、非常に難しい課題に直面したと明かす。それは本物のF1チームらしく見えるだけでなく、映画を牽引するにふさわしい個性的なチームを作り上げるということだった。そしてその課題の解決策を思いついたのは、まさに偶然だったという。
「ある日、ブラッド(ピット)とフィッティングをしていた。その時はチームカラーを決めるのに苦労したんだ」
デイ氏はF1公式サイトのインタビューでそう語った。
「その時、ふと銀白色とグレーのスーツを持ってきたことを思い出したんだ。みんながそれを見て、『ああ、これだ』と言ったんだ」
この決定が、チームのカラーを決定づけた。しかしデイ氏は、ありがちな落とし穴にはまらないように気を配っていたと語る。
「黒すぎると、ダース・ベイダーみたいに見えてしまうからね」
「レーシングスーツのスポンサーロゴが2mm大きすぎると、10万ポンドのスポンサーフィーが追加される。ロゴが小さすぎたり、間違った場所についていたら、それは大変なことになる」
これを解決したのが、メルセデスF1チームを視察したことだったという。映画の精度を確保すため、メルセデスはデイ氏をファクトリーに招いた。
「メルセデスのファクトリーに招かれ、彼らの仕事ぶりを見学した。最初から、何から何まで協力的だった。ユニフォームは白と黒を基調としていて、わかりやすくまさに完璧だと思った」
安全基準にも準拠する必要があった。映画ではF2マシンだったとはいえ、実際のレーシングカーを走らせて撮影を行なったため、必然的に本物のF1チーム並の安全基準を確保しなければいけなかったのだ。
「結局、ピットクルーのユニフォームを、OMPに再度注文しなければいけなくなった。そのユニフォームには、最新の生地が使われていたんだ。その生地はシャツのように薄いのに、完全な防火性がある」
そういった細部へのこだわりは、撮影を通じて重要なテーマになった。
「細部にまでこだわった。映画を見ている時には意識しないような、細部にまでこだわった」
ファンの衣装まで、徹底的に準備されたという。
「たくさんのグッズを制作し、レース会場で配布した」
「俳優たちがレース後や予選後のインタビューを受ける際には、周りの人々にAPX GP(映画に登場する架空のF1チーム)のキャップやTシャツを着てもらって、ファンのように見えるようにしたんだ」
F1も全面協力して制作された本作。ただこういう細部にこだわったことで、リアルさの実現に成功した。
「我々のようにスポーツと融合した映画は、二度とないだろうと思う」
「彼らがF1のスケジュールにうまく溶け込ませたのは、本当に驚くべきことだ」
そのことが、確実に映画を見るはずだろうと考えていたF1ファンの没入感を演出したと、デイ氏は言う。
「広い世界だから、レースチームだけでなく、パドックや大勢の観客も登場する」
「細部にまでこだわって制作し、小さな部分も(悪い形で)目立たないようにした」
「全てのディテールがうまく調和して、映画全体の雰囲気が作られることを願っていたんだ」

