守ってもらうか、切られるか

本人の意思の関係のないところで…(写真:iStock)
一度「そういう噂」がついた人間は、もうまともに仕事が来ない。本人がどれだけ否定しても、空気がすでに決めてしまう。
私がいた現場でも、噂が立ったタレントが急に呼ばれなくなることは珍しくなかった。見えない“線引き”が存在するのだ。
知人のマネージャーCさん(仮名)は言っていた。
「この業界では“守ってもらう”か“切られる”か。上の機嫌を損ねたら終わり。タレント本人より、事務所がどう動くかがすべてなんです」
Cさんは、担当していたアイドルが会食に同席しただけで“そういう関係”を疑われ、結局グループを脱退させられたという。
証拠もなく、ただ空気だけで決まる。それがこの世界のリアルだ。
最初からいなかったかのように

存在ごと消される怖さ(写真:iStock)
私自身、現場で「察する」瞬間を何度も見てきた。たとえば、ある女性タレントが控室で涙を流していた時、誰も理由を聞かなかった。
「大人の事情」という言葉が沈黙を強制する。
やがて彼女も、次の収録から姿を見せなくなった。誰かが「事務所移籍したらしい」と言い、別の誰かが「干されたんでしょ」と囁く。
真実は誰にも分からない。ただ空気だけが現場を支配する。
「消された」なんてドラマみたい――と笑う人もいるだろう。けれど、この業界では笑えない。
消されるとは、物理的に消えるというより、“存在ごと消される”ことだ。名前も映像も、過去の功績さえもネット上から静かに削除される。
気づけば、“最初からいなかった”ように扱われる。それが本当の怖さだ。
