「お年玉、いくら渡すべきか」。毎年のように繰り返されるこの悩みが、ここ数年、少し違った重みを帯び始めている。理由は言うまでもなく、物価高だ。果たして今の大人は、子どもにいくらのお年玉を渡すのが妥当なのだろうか。
ガリガリ君、チョコボール、子どものお菓子に物価高が直撃
現在、SNS上では「お年玉の金額を上げたほうがいいのでは?」という声が上がり始めている。というのも、以前のような金額感では、子どもが満足して楽しめなくなっているという実感が広がっているからだ。
たとえば、身近なおやつのひとつ「ガリガリ君」を例にとってみよう。「ガリガリ君」といえば、60円のイメージを持っている人も多いだろう。実際、1981年の発売当初は50円、1991年に60円へ値上げされて以降、実に約25年ものあいだ、その価格が維持されてきた。
しかし2016年についに70円に値上げされ、2024年には80円へ。さらに先日、2026年3月には90円になる予定だと発表された。わずか10年で約5割の値上がりである。駄菓子やスナック菓子、飲料なども同様で、価格の引き上げだけでなく、内容量を減らす「実質値上げ」も珍しくなくなった。
チョコ菓子の「チョコボール」も、2014年時点では1箱70円程度だったが、現在では120円前後にまで上がっている。
また、お菓子だけでなく「おもちゃ」の値上がりを見ても、物価上昇の実感はわきやすい。
長年親しまれてきたミニカー玩具の代表格「トミカ」は、1970年の発売当初、希望小売価格が180円だった。その後も段階的に価格は引き上げられ、2014年には360円から450円へと約25%の値上げが行われた。さらに2025年3月には、定番シリーズの希望小売価格が550円から594円へ改定され、「定番ミニカー」を買うためのコストも年々上昇していることがわかる。
このように、子ども向けの商品でも長期で見れば価値の変化ははっきりと現れている。今回のお年玉をめぐる議論でも、こうした「同じ商品カテゴリでの価格変化」を意識することが重要だろう。
こうした状況のなかで、昔と同じ金額のお年玉を渡すことは、本当に「同じ価値」を渡していると言えるのだろうか。SNS上では、次のような声も見られる。
「身内が昔の感覚でお年玉上げてるけど、今の物価で数千円もらったところで子どもは大して嬉しくないような気がするんよな」
「今年は親戚の子に渡すけどいくら渡せばいいのか…物価はあがるけどお年玉の額はそんなにかわらないからかわいそうよね」
「先日私の叔母と『これだけ物価が上がるとお年玉も値上げだよねぇ……』と話したばかり。未就学児と小学生なんで心ばかり、と思っていたが、元来の金額じゃもはや心も通じないほど物価上がってる」
お年玉を3~4割増額するべき理由
この問いについて、ファイナンシャルプランナーの金子賢司氏は、感覚論ではなく、数字で考える必要があると指摘する。
「現在のお年玉は、10〜15年前と比較すると、3〜4割程度の増額をしなければ、子どもに当時と同等の体験をさせることは難しいと言えます」
その理由は、子どもが日常的に買うものの値段が、想像以上に上がっているからだ。先に挙げたガリガリ君やチョコボールに加え、チョコレート菓子は原材料のカカオ豆高騰の影響を受け、2024年だけで4〜47%の値上げが行なわれた商品もある。飲料やスナック菓子で、値上げや内容量の減少は、もはや珍しい話ではない。
「総務省の消費者物価指数(2024年平均)は、2020年を100として108.5です。ただし、先に挙げたガリガリ君やチョコレート菓子の値上げ率はこの水準を上回っており、子どもが買う商品ほど値上げの影響を受けやすい傾向がうかがえます。
こうした状況を踏まえると、お年玉の額面を据え置くことは、子どもにとって『受け取る喜びの目減り』を意味します。同じ金額をもらっても、買えるお菓子の数は確実に減っているのです」(金子氏)
具体的には、これまで3000円を渡していた場合は4000円前後、5000円なら6500円前後が、「同じ体験」を維持するひとつの目安になるという。
ただし、金子氏は「必ずしも全員が増額すべきだとは限らない」とも強調する。
「渡す側の家計も、同じように物価高の影響を受けています。食費や光熱費の上昇で余裕がない家庭も多く、親戚の子どもが多ければ、3〜4割の増額は総額で見ると大きな負担になります。無理に相場を引き上げる必要はありません」
むしろ金子氏は、金額を据え置く選択にも意味があると語る。
「『去年と同じ金額なのに、買えるものが減ったね』と子どもに伝えれば、物価と購買力の関係を学ぶ貴重な金融教育の機会になります。『なぜ値段が上がるのか』『同じお金でも買えるものが変わるのはなぜか』を一緒に考えることで、お金の価値を実感させることができるはずです」

