錦織圭などの活躍以降、「テニス選手になりたい!」「子どもをテニス選手にさせたい!」と考えているジュニアや親が多くなりました。しかし、根本的な問題として、どうすればプロテニス選手になれるのでしょうか? プロになるまでの道筋を詳しく紹介していきます。
今回からは、中学卒業後の進路について。解説は引き続き、プロとしてツアーを回り、引退後はMTSテニスアリーナ三鷹を運営しながらコーチとして選手を指導している増田健太郎氏です。
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中学卒業後の進路は、大きく分けて3つあります。
①全日制の高校
テニス強豪校に入学し部活でテニスの実力を上げる。ジュニア育成が充実しているテニスアカデミーに通いながら近所の全日制の高校に通う。以上の2つのバターンがある。高校の大会に出場でき、普通の高校生活を楽しめることがメリット。
②通信制の高校
学校には限られた日数だけ通い、家で勉強するスタイル。この場合、自分でテニスができる環境があることが大切。海外遠征など存分に行くことができる。インターハイに出場できる通信制の学校もある。
③海外留学
海外のテニスアカデミーに行き、現地の学校か日本の通信制の高校に入る。テニスをする環境には恵まれるが、全ては自分次第の部分もあるため強い気持ちが求められる。
現在、プロになることを考えているジュニアの多くは、②の通信制を選ぶ傾向があります。以前は普通の高校(全日制)に通ってインターハイにも出場して、その年代のトップになった選手がプロになるという流れでしたが、平成14年から高体連が「海外遠征45日ルール」を設けたことで状況が変わりました。このルールはインターハイや高校選抜に出場するためには、1年間に45日間以内しか海外遠征に行けないというものです。
通信制の学校を選択した土居美咲選手は、「まずは(高校から)東京の自由ガ丘インターナショナルテニスカレッジに行くことを決めました。そこから通える全日制の高校を探していたのですが、インターハイに出るとなると『45日ルール』の問題もあり、通信制という選択肢が出てきました。インターハイに出ないのであれば全日制に通う意味はありませんでしたし、よりテニスができる環境を求めて通信制に決めました」と45日ルールが決断に影響したと話します。
この時期はITF Jr.ランキングを上げたい時ですし、前哨戦を含めたグランドスラムJr.に出場しようとすれば1年間の海外遠征日数は45日では足りません。そのため、45日ルールができてから、ジュニアたちは高校進学時期にはプロになる決意をするようになってきました。
平成26年からこの45日ルールは廃止されましたが、通信制を選ぶ流れは変わっていません。インターハイや全国選抜の全国大会に出場するために、選手は各都道府県大会、各地域大会に参加する必要があることがネックになっているようです。つまり、学校に通いながら、各大会の予選となる大会にも出場していると、結局海外遠征に行こうと思っても日程が合わなかったりするのです。
全日制の高校に通うにしても、プロになることに理解のある学校や監督であれば、1年生の時に全国優勝をしたら、2年からは出場しなくてもいいとか、高校の大会には出場しなくてもいいなど、融通してくれる学校もあるようです。しかし実際のところ、どの学校も全国優勝はしたいものですし、プロを考える強い選手が出場してくれれば優勝や上位進出の可能性が広がるため、全日制で高校の大会に出ない選択をするのは簡単ではないでしょう。
通信制を選択するならテニス環境を整える
プロになりたいなら通信制を選択したらいいのかと言えば、単純にそうとは限りません。中学1年から荏原湘南スポーツセンターでテニスに打ち込みながら、全日制の高校に進学した増田氏は、通信制を選ぶ際にも注意が必要だと言います。
「今、通信を選ぶジュニアが多いですが、高校に行きながらでも十分にやれることはやれます。ただ通信というもっといい道が出てきたというだけのことです。しかし、リスクも高いことを認識しておいてください。早いうちからテニスに特化しすぎてバーンアウトしてしまうケースもありますし、日中の使い方がうまくいかない場合もあります」
「日中にテニスが十分にできるプログラムを持っているクラブはあまりありません。そういう環境が整っていないと、結局夕方までフリーの時間が増えただけということになります。高校生で日中に時間が空いてしまうと、楽しいことは他にいっぱいあるので、テニスに集中できなくなってしまう場合もあります」
実際、通信制を選んで成功しているプロは、日中にテニスができる環境を整えています。前述した土居選手もそうですし、尾﨑里紗選手も、「中学卒業後も同じコーチと一緒にやっていこうと思っていたので、海外ではなく日本にいることは決まっていました。通信か全日制で考えましたが、やはり練習量に差が付くと考えて通信にしました。この時期に学校に行ってから夜に2、3時間練習するよりは、日中からずっとできる方がいいかと思いました。ただ、 日中にテニスができる環境がなかったら通信にする意味はありません」と、環境が整った上で、通信に決めています。
この時期からプロと同じようなテニスに没頭する生活ができることは大きなメリットです。ただし、プロのように自分で考えて行動する必要があります。
~~後編へ続く~~
取材・文●スマッシュ編集部
※スマッシュ2018年2月号から抜粋・再編集
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