F1で2度王者となっているフェルナンド・アロンソは、同郷のMotoGPライダーであるマルク・マルケスが2025年に成し遂げた6年ぶりのチャンピオン獲得を大絶賛している。
マルケスは2013年にMotoGPクラスへ昇格すると、最年少王者となり、そこからシリーズを支配する最強ライダーとして君臨してきた。ただ2020年に右腕を骨折したあとは、ホンダの戦闘力低下もあり大苦戦。2024年にドゥカティのサテライトチームであるグレシーニへ移籍する思い切った決断を下した。
そしてドゥカティファクトリーチームのシートを掴んだ2025年に、マルケスは圧倒的な強さを発揮。シーズン残り5戦という、MotoGP史上最も早いタイミングでチャンピオン獲得を決めた。実に2019年以来のチャンピオン返り咲きだ。
この復活劇は様々なところで称賛されてきたが、同郷スペイン出身で2度のF1王者でもあるフェルナンド・アロンソも大絶賛している。スペインDAZNの配信したドキュメンタリーで、彼はマルケスの精神力を次のように称賛した。
「ライダーとしての天性の才能に加えて、並外れた精神力と規律が必要だ。それがこの偉業を特別なものにしている」
アロンソはそう語った。
「“普通”の人間なんて存在しない。だからこそ、5年間タイトルを獲れなくても、決意や闘争心、そしてもちろん才能を一切失わず、常に向上を求め続けることは並外れたことなんだ」
「世界チャンピオンの自分自身をさらに向上させるのは非常に難しい。そのことを頭で理解し、日々その自分を超える向上心を持ち続けることができる人間は、ごくわずかだ。だからこそ、今年マルクが成し遂げたことは、ほんの一握りの人にしかできないことだと思う」
アロンソは2005年、2006年とF1を連覇。その後も幾度となくタイトル獲得に迫ったが、2015年以降のマクラーレン移籍後は、現在のアストンマーティン在籍時を含み、競争力が十分ではないマシンでの戦いが長く続いている。
その結果、史上最高のドライバーの一人と評価されながらも、グランプリ未勝利の期間はすでに12年に及んでいる。
2020年代初頭にマルケスがホンダで苦しんだ状況に触れつつ、アロンソは勝てるマシンを持たない状況でトップアスリートがモチベーションを維持することの難しさを次のように説明した。
「しばらく勝てていない時や、バイクであれ、ここ数年の僕のようにトップに立てるようなクルマがない時は、家で何度も自分自身と対話する必要がある」
「毎日起きて、ジムに行き、バイクに乗り、トレーニングをするんだ。そのほとんどが一人で過ごす長い時間だ。3時間自転車に乗れば、その間ずっと自分自身と対話している」
「シャワーを浴び、自分の傷跡を見る。僕の場合はアザだ。過去の映像を見返し、さまざまなことを通じて、今結果が出ていなくても、自分はまだあの頃の自分なのだと言い聞かせなければいけないんだ」
負傷という面では、マルケスは非常に苦しんできた。2020年の腕の骨折の影響は長期間続き、目の複視や、2023年に負った骨折などにも悩まされた。
アロンソは、そこからマルケスが復活しチャンピオンに返り咲くことが、どれだけ大変だったかが理解できると話す。
「F1に復帰した当初のテストでは、2年前と同じレベルで走れていると思っていた。だけどストップウォッチはそう告げなかった。コンマ数秒遅れていたんだ」
「限界までプッシュしていたのに、そのコンマ数秒をどこで見つければいいのか分からなかった。これは認知システムの問題で、生まれ持ったものでもあり、練習の中で磨かれるものだ」
「一度休むとそういうのはリセットされる。まるで自転車に再び乗るのに、バランスを崩していて補助輪を付けなければならないようなものだ。外野から見れば簡単そうに見えて、才能があればすぐにまた勝てると思われがちでも、身体、脳、感覚は、どうにかしてもう一度目覚めさせなければいけないんだ」
「二度目の成功や、再び頂点に立つ過程は、最初とはまったく違う。僕たちのようなドライバーはトップカテゴリーに到達するまで、下位カテゴリーでは勝ち続けてきた。5歳から22歳まで勝つのが当たり前で、マルクのように何度も世界チャンピオンになれば、常に勝つことが普通だと思ってしまう」
「苦しい時期を経て再び表彰台に立つと、その価値を実感する。2024年のマルクや、2023年の僕がいい例だ。僕はアストンマーティンで8回表彰台に上がっているけど勝ってはいない。それでも、あの表彰台には爆発的な喜びがあった」
「写真を見ると、1位のマックス・フェルスタッペンや2位のチェコ(セルジオ・ペレス)は控えめな喜び方をしているのに、3位の僕は夢中になっている。2024年のMotoGPでも同じだった。タイトルを争うホルヘ・マルティンやペッコ(フランチェスコ・バニャイヤ)がプレッシャーを抱える中、勝っていなくても2位や3位のマルクは踊ったり帽子を被ったりしていた。感じ方がまったく違うんだ。だからこそ、その瞬間を楽しむ必要がある」

