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「トヨタより大きい会社をつくりたい」家具職人とZ世代起業家が語る、日本の伝統工芸が世界に挑む新時代

「トヨタより大きい会社をつくりたい」家具職人とZ世代起業家が語る、日本の伝統工芸が世界に挑む新時代

チームの総合力が手しごとを支える

松岡 KOMAは「一点ものの家具にこだわっている」と評されることがありますが、一点物にこだわっているわけじゃなくて、「一点物のクオリティ」にこだわっているという感じです。一点集中でいいものをつくるって、意外とできちゃうかなと思うんですよ。最初に大ちゃん(塚原さんの本名)も言っていたように、一点物の「作品」をつくる作家さんはそれなりにいるので。そのクオリティを複数個の「製品」のレベルまで持っていけるかというのが、難しいところなんです。

もちろん一点物の作品をつくる技術はあって当たり前。だけど数を回す力というのは、自分一人ではできないので、工程のある部分を担ってくれるスタッフたちの技術力も必要になってくる。そして一定数の製品をつくり続けるには、まず材料をストックしなきゃいけない、在庫を抱えなきゃいけない、在庫を抱えたら売らなきゃいけない。

となると、じゃあ販売力あるの? 在庫を抱える経済力あるの? 販売するための発信力あるの? とか、いろんな要素が必要になってくる。

だから一点物の家具を数つくって、製品として回していくというのは、なかなか難しいことなんです。技術的にも難しいし、ビジネスの仕組みとしても難しいので、それらをひとつずつクリアしていくには、自分の技術、チームの技術、あとは売ってくれるスタッフ、発信してくれるスタッフと、チームの総合力が大事になってきます。

自分がよいと信じるものを世に広めていく、または認めてもらうには、ただものをつくるだけでは駄目で、つくったものを見てもらう環境とかステージを自分たちでつくっていかないといけない。同じものをつくっても、それを認めてもらえるか否かというのは、そのものが置かれている環境によって変わってくるから。

何か一芸に秀でているわけではないけれど、すごい熱意があるという理由で採ったスタッフもいます。「お前でできなかったら、しょうがねえな」と思わせるぐらいの熱意があるから、青山に新しい店舗を出すときもそいつに任せた。だからやっぱりKOMAは「人ありき」で動いていくというのが、ひとつ特徴かもしれない。

塚原 KOMAはみんなめちゃくちゃ仲がいいというか、風通しがよくて。今日もお昼御飯、皆と御一緒させていただいたんですけど、スタッフさんの誕生日もみんなでお金出し合って、お祝いをしたり。

松岡 昼飯は一緒に食うんですよ。スタッフ20人くらい、みんなで自炊して。あと「クリエイティブデー」といって、2か月に1回、全員で朝から酒飲んで、みんなで料理持ち寄って、会社のあれこれを話し合う。議題を会社から設けて、その議題に対してそれぞれ考えてきたことを、たとえばどういうイベントをやろうとか、どういう売り方をしようとか、どんなものをつくろうとか話すんだけど、その日も給料は出すから、一日で30万円ぐらいかかる。お金はかかるし、時間も取られるけれど、でもその結果、チームワークもよくなるし、そのなかで育っていく人もいる。新しい何かが彼らの発想から生まれることもある。

塚原 以前、松岡さんに材木の仕入れに連れて行っていただいたことがありますが、材木屋さんとかって、どうやって開拓されていったんですか?

松岡 どうやって開拓したんだろう? たぶん紹介だと思う。

塚原 人の紹介で、「ここにはこういう木がある」というのを知っていくんですか?

松岡 逆に、「こういう木が出たら教えて」と言っている。こういうの探しているから、出たら声かけてくださいって。向こうも商売だから、出たよって声をかけてくれる。

塚原 道具とかも同じ感じですか? 

松岡 道具も、数にもつくれる人にも限りがあるものは、「誰のためにつくるか」というのを向こうが選べる状態だから、職人に認められないと手に入らない道具がある。ドラクエみたいな状態です。職人さんに会いに行って、自分の技術を見てもらって直談判して、「よし、つくってやる!」みたいな。

砥石とかもそうで、天然砥石って、いいものは大方掘り尽くされたと言われていて、掘り尽くされたということは、誰かがそれを持っているわけで。今SNSでも「日本のすごい刃物の技術」みたいなのが出ていて、外国の職人さんも日本まで砥石を買いに来るけど、本当にいいものはやっぱり出回らない。隠し持っている職人さんが、「こいつにだったら譲っていい」というレベルまで自分を持っていかないと、手に入らない道具があるんです。

トヨタより大きい会社をつくりたい

塚原 僕は今、日本の伝統工藝を世界に橋渡しするKASASAGIという会社をやっています。うまく行っているとは思っていないし、この先もうまく行くかはわからないですが、「うまく行くだろう」と思ってやっています。それには二つ理由があって、ひとつはこの会社をつくるときに「トヨタより大きい会社をつくりたい」と思ったんです。

最初はIT起業家を目指してアメリカで挑戦したんですけど、アメリカ人と「よーいどん」したときに、これは勝てないと思った。「じゃあ何をやればいいんだろう」と世界の時価総額ランキングを見ていたら、トヨタよりLVMHのほうが時価総額が高かった。「どこでも目にするトヨタの車より、贅沢品や嗜好品のような、ハイブランドのバッグをつくっている企業のほうが時価総額高いんだ?」と思って事業内容を見ると、ルイ・ヴィトンというものづくりを筆頭に、ドンペリ、モエシャンという酒類販売の事業があった。

そこで日本を見返したときに、日本には伝統工藝があって、日本酒があって、「これは日本でもLVMHみたいな会社がつくれるんじゃないか。ドメスティックでIT企業を細々とやるぐらいなら、グローバルでものづくり企業をやったほうが、ネクストトヨタをつくるには早いんじゃないか?」と思ったんです。

そのアイディアを実証している会社が実際にフランスにあるんだったら、じゃあ日本のものづくりが負けるのかと思うと、別に負ける気はしなかった。「だったら僕ら、伝統工藝で時価総額50兆円行ってもいいんじゃないか」という信念の下でKASASAGIをやっているというのが、うまく行くだろうと思って続けている理由のひとつです。

もうひとつの理由は松岡さんをはじめ、いろいろな伝統工藝の職人さんにお世話になっているということ。物販サイトの頓挫など紆余曲折あったなかで、僕がやめなかったのは、やっぱりいろんな職人さんにお世話になって、「この人たちに恩返ししないと、人じゃなくなるような感じがする」という思いがあるからです。今やっていることをやめて、これ以外の道で生きていっても「良い未来」が思い浮かばないので、逃げずにやれているのはそういう理由かなと思います。

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