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「トヨタより大きい会社をつくりたい」家具職人とZ世代起業家が語る、日本の伝統工芸が世界に挑む新時代

「トヨタより大きい会社をつくりたい」家具職人とZ世代起業家が語る、日本の伝統工芸が世界に挑む新時代

お前、アーティストなの、職人なの?

塚原 最近、KASASAGIが「Forbes Japan」などのメディアに御注目いただいているところは、「伝統工藝を空間に使う」という、会社の一番大きな柱の事業なんですけれども、それは僕らが「伝統工藝を空間に使ってみよう」という発想をしたわけではなく、最初にやっていたBtoCのオンライン販売があまりうまくいかなかったので、BtoBの記念品事業を始めて、その縁でいろいろな企業とおつきあいができたことがきっかけです。

オリジナルの工藝品を、企業の◯◯周年の記念品として、取引先何百社に渡しますという形でつくらせていただいて、「これだけすばらしいオリジナルの工藝品がつくれるなら、うちの物件にも使えるのでは?」というご提案をお客さんのほうから頂いて、「できます!」とちょっと背伸びをしてやってきました。

いざやってみると、「工藝品を建物に取り付けるときに下地がどうなっているか」とか、施工するときに、たとえばゼネコンに施工を任せると、「ものが落ちて事故が起きた場合、つくった工房の責任になるのか、取り付けたゼネコンの責任になるのか」といった責任区分の問題とか、いろいろテクニカルなハードルが出てきて、これを自分たちで超えるために、一級建築士事務所と建設業の許可を取得する流れになったんです。

そんな経緯で現在は、伝統工藝に用いられてきた技術や思想を、空間そのものに拡張する「工藝建築」を提唱して、設計から施工までを請け負っています。「イノベーティブに伝統工藝を空間に使っている」と評価していただいてありがたいのですが、正直な話、何ひとつ自分では考えてなくて、人とのつながりのなかでちょっと背伸びをしながら、できることをやってきたというのが本当のところです。

松岡 KOMAもうまく行っているとは思っていないし、「うまくいくことを信じてやっている」というところまで、大ちゃんと同じです。ただ俺の場合、独立した頃は下請仕事ばかりで、一生懸命やっているんだけど、単価が安いからお金もないという状況だった。今から20年前、サブプライムローン問題とか耐震強度偽装事件(構造計算書偽造問題)とかが重なって建築業界がズタボロになり、取引先の会社がバンバン潰れて、2000〜3000万かな、お金をもらえないで逃げられたりして。

でも、うちの下請とか材料屋にはお金を払わなきゃいけないから借金して払ったり。「こんなことのために、みんなで夢を持って独立したんだっけ?」となって、「どうせ潰れるなら最後に何かやりたいことやって潰れようぜ!」と自分たちの好きなものをつくって、新宿伊勢丹のバイヤーに持っていって、展覧会をやらせてもらった。2011年だったかな。

そうしたら3.11の大震災と重なって、「お客さん全然いない」みたいな状況で。どこまでも運悪いなと思ったんだけど、作品はめちゃめちゃ売れた。バイヤーもびっくりするぐらい売れて、全国の百貨店も巡業することができた。「自分の家具で勝負しよう」というタイミングは、あのあたりだったね。

でもその後も売れたり売れなかったり。製品を卸しても普通の販売員さんだと、つくり手の思いまでは伝えられないから、なかなか売れないんです。だから、本当に自分たちの思いを伝えるための直営店をつくろうと決意して、その辺からかな、少しずつ仲間が増えてきて、自分のつくりたいものをつくり、それを売る環境も整ってきてという、今のような状況になってきた。

ものづくりの転機となったのは、百貨店の催事場の巡業で、北海道から九州までの職人が集まって販売会をする機会があって。そこで「他人の作品から気づきを得てものづくりを変えていく人」と、「そのまま頑固にやり続ける人」という二極に分かれて、頑固にやり続ける人って、60歳とかになっていても概して裕福ではなかったりするし、作品も自分の方向性とは違うんだよね。

またその少し後に、ある大御所のデザイナーを紹介されて、作品を見てもらったんです。そうしたら、「お前、アーティストなの、職人なの?」って。アーティストだったら、もっとぶっ飛んで自分の表現をしろ。職人だったら「用途の追求」を極める努力をしろ。おまえはどっちに対しても覚悟がないから全然面白くないよと言われたことがあって、ものすごく考えた。

「俺ってやっぱり職人だよな。職人がやるべきことは、奇をてらったことではなく、着実に地に足がついたものづくりだな」あの時のデザイナーの問いかけをきっかけに、今の自分に通ずる「職人の原点」を自覚できたんだと思う。

その後もガーデンデザイナーとか、空間デザイナーとか、「うわ、この人のつくるものすげえな!」みたいな出会いが要所要所であって。その度に宿題をもらったり、怒られたりしながら気づきを与えてもらって、ここまで来ている感じですね。

構成/高山リョウ 撮影/三好祐司

なぜ日本の手しごとが世界を変えるのか 経年美化の思想

塚原 龍雲なぜ日本の手しごとが世界を変えるのか 経年美化の思想2025年11月17日発売990円(税込)新書判/208ページISBN: 978-4-08-721388-1

隈研吾氏(建築家)推薦!
「職人の手が紡ぐ時間と若い起業家のまなざしが交差する。
伝統と革新が響き合う、手しごと再生の書」

◆内容紹介◆
柳宗悦が民藝運動を提唱して百年。いま、その精神にZ世代の起業家が共鳴し、新たな光を当てる。
「経年美化」──時の流れが育む美しさに惹かれ、日本各地の工房を旅し、職人と火や木や土の声を聴くうちに、その意味は生きた実感となった。
伝統工藝は過去の遺産ではなく、持続可能な社会を築く知恵。モノを愛する心が人を結び、手しごとは世界を変える。そのメッセージは海外でも静かな共感を呼んでいる。工藝から未来を紡ぐ挑戦の書。

◆目次◆
第一章 Z世代、工藝に出合う
第二章 工藝から学んだ、これからの生き方・働き方
第三章 知られざる工藝の世界
第四章 これからの日本の工藝をつくる職人たち
第五章 日本の手しごとの「いま・これから」

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