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「皆実のために」会社を辞めて教壇へ、そして全国へ――母校・広島皆実を率いる上田貴典監督の原点【選手権】

「皆実のために」会社を辞めて教壇へ、そして全国へ――母校・広島皆実を率いる上田貴典監督の原点【選手権】


[高校選手権・2回戦]水口(滋賀)3-1 広島皆実(広島)/12月31日/ニッパツ三ツ沢球技場

 監督就任1年目で母校である広島皆実を3大会ぶりの選手権出場に導いた上田貴典監督は、選手権との不思議な縁を感じていたという。

 吉弘充志氏(サンフレッチェ広島などでプレー)とCBを組んで出場した2003年度の選手権はベスト16まで進んでいるが、この時に2回戦で対戦したのは滋賀県代表の守山北。監督として挑んだ今回も2回戦で再び滋賀県代表と対戦することになった。

 自身の現役時代は2-0で勝利したが、今回は試合序盤に許した2失点が響き、水口に1-3で敗戦した。

「今年の学年は個性的な選手が多かったので、日本一のチームである神村学園高とやらせてあげたかった。勝たせることができなかったのは監督としての経験値が足りなかったから。選手たちは一生懸命やってくれました」(上田監督)

 悔しい結果で選手権を去ることになったが、「皆実のために頑張りたい」と口にする指揮官の目標を叶える大会になったのは間違いない。広島皆実を卒業後、上田監督は大阪学院大学に進学。関西選抜の一員としてデンソーカップに出場し、大学卒業後は地元・広島に戻り、富士ゼロックスに就職した。
 
「広島にある会社だったし、高校サッカー選手権大会のスポンサーをやっていたので身近にも感じていました。中国リーグでしたがサッカーを続けることもできるのが魅力だった」

 平日はコピー機の営業として汗を流し、週末はボールを蹴る日々にやりがいを感じていたが、27歳となった入社4年目の冬に転機が訪れる。休日に母校を応援するために選手権予選決勝を観戦し、心を揺さぶられた。

「母校が勝つ姿、子どもたちが頑張っている姿に惹かれた。それに努力すること、目標を立てる、人間性を磨く、仲間を信頼する。自分はサッカーでそうした色んなことを学んだ。皆実高校で育ってもらった恩があるので母校に帰って全国大会に行きたかった」

 
 教員免許を持っていなかったが、大阪の中学校で教員をしていた大学時代のチームメイトである前川敬介氏(現、住吉大社SC監督)から科目履修生制度を教えてもらった。「30歳になるまでには教員免許が欲しかった」という上田監督は周囲の反対を押しのけ、富士ゼロックスを退社。大阪に戻り、体育の教員に必要な単位数を取るために大学に再び通い始めた。

 卒業した10代の生徒と授業を受ける毎日。社会人時代の貯金だけでは足らず、アルバイトにも精を出した。「あの3年間はすごくしんどかった」と振り返るが、母校で指導者として全国大会に出場するという目標があるから頑張れたという。

 2年間のスクーリングによって体育の教員免許を取得し、広島県の教員採用試験を受けたが、合格できなかった。そのため、合格した大阪府の公立高校で教員生活をスタートさせたが、赴任校はやんちゃな生徒が多い高校で「毎日、遅刻が60人ほどいた。年間1万人ぐらいの遅刻件数があって、毎日遅刻指導をしていました」。

 サッカー部の指導も行なったが、部員数は13人ほど。参加校数が多い大阪府は3月末からインターハイ予選が始まるが、1回戦で負けることもあった。
 
「子どもたちから『なぜ俺たちは勝てないんだ』と言われて、すごく悲しかった。選手権も1回戦で勝てなかった。ただ、やんちゃな子たちも一生懸命接すれば応えてくれますし、サッカーを通じて人間性が身に付くと改めて学べた」

 この高校は3年連続で定員割れが続いたため廃校となり、そのタイミングで広島県の教員採用試験を受け直し、今度は合格。2019年からは念願だった母校に戻ることができた。6年間のコーチ生活を経て、今年から監督としてチームの指揮を執るが、自身の現役時代と同じようにサッカーを通じて人間性を高める指導を心がけてきた。

 そうした成果が3大会ぶりの選手権出場となり、12年ぶりに選手権で初戦を突破できた。今大会では悔しさと同時に手応えも感じている。

「皆実高校の新たな歴史を3年生たちが作ってくれましたし、スタートで出ている選手にも楽しみな1、2年生がいる。新チームに移行してから、もう1回巻き返す準備をしたい」

 広島皆実愛に満ちた熱い上田監督なら、強い広島皆実を取り戻してくれそうだ。

取材・文●森田将義

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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