■2026年も結局この人!“イ・ビョンホン劇場”は止まらない

2025年、間違いなく主演として精彩を放った俳優はイ・ビョンホン。今年日本公開も決まったパク・チャヌク監督との再タッグ作『しあわせな選択』(3月6日公開)は、製紙工場を解雇され孤軍奮闘する中年男性の卑屈さを完璧に体現し、“イ・ビョンホン劇場”と呼びたい仕上がりだった。Netflix映画『スンブ: 二人の棋士』で演じたのは、愛弟子に敗北してしまう伝説の囲碁棋士。実在の人物がいるキャラであることを忘れさせるほど、一挙手一投足をイ・ビョンホンのものにし魅力的な人物として鮮烈に表現した。第一次韓流ブーム時代からずっと現役トップスターで正真正銘のセレブである一方、昨年の第30回釜山国際映画祭のトークイベント「アクターズハウス」に登場した際は、いまなおカメラの前では緊張してしまうと明かしたり、Q&Aでは俳優志望の若者相手に膝を詰めて真剣に演技論を語るなど至って真面目な“役者バカ”の一面をのぞかせた。演じることへのあくなき探究心と演技への欲で、来年も俳優道のトップランナーに君臨し続けてほしい。
(映画ライター・荒井 南)
■60代でアクションに挑戦!ベテランの顔で最前線を更新するイ・ヘヨン

ベテラン女優の風格とともにまだまだ若手と対抗できる気合いをも兼ね備えたイ・ヘヨンを、今年の推し女優に挙げたい。2022年以降続くホン・サンス監督との絆は今年も健在で、『旅人の必需品』(公開中)ではイザベル・ユペース扮するフランス語教師と軽妙な会話劇を見せた。しかし彼女が最も強烈な印象を残したのは『The Old Woman with the Knife(原題:파과)』。物心ついたときから殺し屋として生きてきた女性チョガクが老いに直面してきたところに彼女に恨みを抱く青年が現れ…というサスペンスで、主演のイ・ヘヨンは60代と思えないすさまじいキレ味のアクションで観客を熱狂させた。悲劇的な人生を背負いながら孤高に闘うチョガクの姿を思い浮かべるたび、今も私は心の底から力が湧いてくる。その年の韓国映画界で最も活躍した製作者や俳優を選び表彰する韓国映画制作家協会賞で主演女優賞を獲得したのも納得。一刻も早く日本公開を望む。
(映画ライター・荒井 南)
■2025年に大ブレイク!これからがなおさら楽しみなホン・ギョン

2025年一躍スターとなったのは、ホン・ギョンだった。10月に配信されたNetflix映画『グッドニュース』で空軍中尉のゴミョンを熱演し、主演のソル・ギョングにも引けを取らない存在感を発揮した。2017年のデビュー以来、映画『潔白』(20)やドラマ「弱いヒーロー」、映画『君の声を聴かせて』(24)など、着実にキャリアを重ねてきたが、ゴミョン役のキレキレの演技でホン・ギョンの魅力にはまる人が続出した。『グッドニュース』は1970年のよど号ハイジャック事件を題材にしたブラックコメディーで、ゴミョンは、赤軍派にハイジャックされて平壌へ向かおうとする羽田発の航空機「よど号」を韓国の金浦空港に着陸させるべくエリート管制官として活躍する。頭脳明晰、英語もペラペラというかっこいい役どころだが、出世欲もあり、欲望と使命感を併せ持つ複雑なキャラクターを演じきった。これまではどちらかというと線の細いタイプの役柄が印象的だったので、アクの強い役は新鮮で、これからどんどん役の幅が広がりそうだ。
(映画ライター・成川 彩)
■はかなさも、さびしげな眼差しも武器にしてしまう“魔性の女”、パク・ジヒョン

ドラマ「財閥家の末息子」の頃から注目していたが、2025年の青龍映画賞で助演女優賞を受賞した映画『秘顔』(24)の演技には圧倒された。主人公のソンジン(ソン・スンホン)とスヨン(チョ・ヨジョン)を翻弄するミジュ役は、一見はかなく見えて、実は魔性の女そのもので、このギャップを見事に演じて作品に緊張感を吹き込んだ。『秘顔』のキム・デウ監督にインタビューした時、パク・ジヒョンのことを「初対面でも落ち着いた態度に感嘆した。まだ出演作が少ないにもかかわらず、100本は出た俳優のような雰囲気」と語っていた。肝が据わっているのだ。何より2025年、パク・ジヒョンが注目を集めたのは9月より配信されたNetflixドラマ「ウンジュンとサンヨン」のサンヨン役だ。キム・ゴウン演じる幼なじみのウンジュンと愛憎を抱えた関係を丁寧に演じ、多くの人の感情を揺さぶった。どこか達観したような目が、不幸を吸い寄せるように生き、若くして散ろうとするサンヨン役にぴったりだった。
(映画ライター・成川 彩)
■韓服もラブコメも反則級!進化が止まらないムン・サンミン

初めて「おお?」と心をつかまれたのは「シュルプ」。190センチの高身長に低音ボイス、少年の面影――いや、どこか赤ちゃんみすら残したキュートな顔立ち。高貴な世子の衣装に身を包んだ姿の、なんと麗しいこと!大君が世子へと成長していく過程を爽やかに演じきる姿に、「新たな青春スターの誕生だ」と胸が高鳴りました。続く「深夜2時のシンデレラ」では、年上の恋人と別れたくない一心で、あの手この手を尽くして引き留める“年下子犬系男子”を、スイートに、そしてキュートに好演。酔っ払ったり甘えたりする姿は、かわいすぎて反則だろ~と悶絶(笑)。身長差から生まれる極上のキスシーンも忘れがたい名場面でした。そして昨年、「愛する盗賊様」で再び大君役に挑戦し、韓服姿を披露。やっぱり、彼には韓服がよく似合う!ヒロインを演じるのは、男性主人公の魅力を最大限に引き出す名手ナム・ジヒョン。彼女との共演によって、ムン・サンミンの新たな魅力がいっそう際立っています。さらに、現代版「美女と野獣」と称されるNetflix映画『ビューティー・イン・ザ・ビースト(原題:뷰티 인 더 비스트)』の配信も控え、怒りを隠して生きる男という難役にも挑戦。ピュアな性格で、間近で見る実力派俳優たちの演技やアドバイスをスポンジのように吸収する彼。これからも演技の“偏差値”をぐんぐん上げ、私たちを驚かせてくれると思います。
(映画ライター・酒井美絵子)
■ジャンル無双で賞レース制覇!円熟の域に入ったチュ・ジフン

デビューから約25年を経て、軽々とジャンルを行き来しながら作品を輝かせる俳優となったチュ・ジフン。2025年は、大学病院の重症外傷センターを舞台にした「トラウマコード」で、医師としての天才的な能力はもちろん、アクションまでこなす、スーパーヒーローのような人物を好演。若手医師や看護師を率いるリーダーぶりも頼もしかった。作品は高く評価され、チュ・ジフンも百想芸術大賞放送部門最優秀演技賞、青龍シリーズアワード主演男優賞、ソウルドラマアワードK-ドラマ部門男性演技者賞を受賞。授賞式で名前を呼ばれ、飄々とした顔でマイクの前に立って語る姿も印象的だった。2026年も、話題のドラマへの出演が続く。人気ファンタジーマンガが原作の王宮ロマンス「再婚承認を要求します」では、架空の王国の皇帝役。公開されている写真を見ると、なつかしの「宮 -Love in Palace-」の皇太子が成長したような正装姿で期待が高まる。さらに「クライマックス」では、欲望渦巻く世界に飛び込む検事に扮するとのこと。こちらも、ハ・ジウォン、ナナ、オ・ジョンセといった魅力的なキャストとのアンサンブルが楽しみだ。
(映画ライター・佐藤 結)
■王道でも、やっぱり別格。世界に王手をかけるイ・ビョンホン

王道かもしれないが、あらためて推したいのがイ・ビョンホン。昨年の第30回釜山国際映画祭(BIFF)のオープニング作にも選ばれた最新作『しあわせな選択』では、ゴールデングローブ賞主演男優賞ノミネートをはじめ、ハリウッドでも高い評価を獲得し、名実ともに世界に王手をかけている。日本ではドラマ「美しき日々」で韓流ブームの象徴となり、「元祖四天王」として名を刻んだが、映画ファンにとって忘れがたいのは『JSA』(00)で演じた、禁断の南北交流に身を投じる兵士の姿だろう。実はこの代表作が韓国で公開されたのは30歳の時で、決して早咲きではなかった。昨年のBIFF「アクターズハウス」で本人が語ったように、デビュー当時は失敗続き。そんな時期に同じく模索の最中にあったパク・チャヌク監督と出会ったことが、俳優人生の大きな転機となった。その2人が21年ぶりに再タッグを組んだ『しあわせな選択』で演じているのは、困難な状況下でも製紙業界で生き抜こうとする主人公。映像業界の再編と逆風にさらされる韓国映画界の現在とも重なり、その背中はどこか切実だ。時代を背負い続け、完成形を拒む俳優、イ・ビョンホン。国際的な賞レース(ゴールデングローブ賞の競合相手には、ティモシー・シャラメ、ジョージ・クルーニー、レオナルド・ディカプリオ、イーサン・ホークなどがずらり!)の結果も含め、2026年は勝負の年となりそうだ。
(映画ライター・桑畑優香)
■新人とは思えない胆力!未来にさらに期待したいソ・スビン

まさに、すい星のように現れたという言葉がぴったりの新人。韓国で評判が高かった『The World of Love(原題:세계의 주인)』を観たくて訪れた東京フィルメックス。主演のソ・スビンの、これがデビュー作とは思えない度胸としなやかさを併せ持つ演技で、度肝を抜かれた。一見、奔放で明るい高校生の日常を切り取りながら、「深く傷ついた過去とどう向きあい
、どう乗り越えるべきか」を静かに、しかし強く問いかける本作。抑制された佇まいの奥から立ち上がる感情のうねりを一気に爆発させる洗車場のシーンは、「私的2025年一番の名場面」に決定。上映後、ロビーで観客のサインに応じていたソ・スビンは、スクリーン上の緊張感とは対照的に、驚くほどオーラを消してそこにいた。控えめで礼儀正しく、至極良い意味で「ふつう」。その余白こそが、何者にでも七変化できる柔軟さなのだろう。この資質が、やがて唯一無二の武器になっていくはずだ。
(映画ライター・桑畑優香)
■何を考えているかわからない、その目がいい。ク・ギョファンというスパイス

韓国では、「この人はかましているな!」と思わせる俳優が、毎年のように出てくる。少し前であれば、ピョン・ヨハンや、リュ・ジュンヨルが出ていると、なにか作品がピリっとした緊張感があった。そうした感覚をいま出しているのが、ク・ギョファンではないだろうか。芸歴は長いが、私が意識したのは、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(20)や「D.P. -脱走兵追跡官-」であった。それらの作品でもありきたりな役をただ演じているのではなく、やっぱり作品におけるスパイス的な役割を担っていた。どこか、何を考えているのかわからない目がいいのかもしれない。2025年は『脱走』の公開に合わせて来日し、イ・ジェフンとツーショットでのインタビューの機会もあった。映画好きで、相米信二を敬愛していると語っていた。彼自身も映画監督もやっていて意欲的である。韓国のインディペンデントな映画に注目が集まるいま、彼のような存在が、韓国映画界の明日を背負っているのではないだろうか。個性的な映画ばかり出演しているのイメージだが、ムン・ガヨンと出演した最新作『Once We Were Us(原題:만약에 우리)』は共感型のロマンス作品だという。こうした役の雰囲気もよさそうなのである。
(映画ライター・西森路代)
■際立つ人気と確かな演技。次を見たい俳優、パク・ボゴム

2025年最も涙を搾られたドラマ「おつかれさま」で、愚直なまでにひたすらエスン(IU)を愛し守り抜いたグァンシク役は、パク・ボゴムにしか演じられない難しい役だったと思う。人気・表現力ともに若手俳優のなかで頭ひとつ抜けているパク・ボゴムには、ポン・ジュノやパク・チャヌク監督のような名監督と組み、映画での“人生キャラクター”を得て欲しい。『母なる証明(09)のウォンビンや、「シンパサイザー」のホア・スアンデのように。「応答せよ1988」10周年記念バラエティ用の特別OSTを歌ってくれたのも、ドラマの後追いファンには嬉しい限りでした。
(映画ジャーナリスト・平井伊都子)
■グローバルスターへのカウントダウン!世界を相手に存在感を示したアン・ヒョソプ

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』でハントリックスと対峙するサジャ・ボーイズのリーダー、ジヌは北米小学生男子たちにも大人気で、ハロウィンではみんなジヌになりたがっていた。イケメンだけどとぼけていて、数奇な運命をあまんじて受け入れるのではなく、間違いを認め正そうとするジヌは、2025年ぽいヴィランだった。ジヌの声を務めたアン・ヒョソプは、英語での演技も完全にこなせることを証明。韓ドラではラブコメの印象が強いけれど、イ・ビョンホンやユ・テオのようにこれぞという代表作に巡り会えたら英語圏でもブレイクしそう。
(映画ジャーナリスト・平井伊都子)
■ジャンルを越えた多作モード突入!2026年は、“キム・ソンホの年”になりそう

俳優キム・ソンホが、2026年に向けて本格的な“多作モード”に入り、その存在感をさらに広げようとしている。2025年はNetflixオリジナルシリーズ「おつかれさま」1作のみと、比較的落ち着いた活動が続いたが、新年はロマンティック・コメディからファンタジー時代劇、さらには舞台まで、ジャンルを横断する幅広い活躍が予告されている。まず上半期には、Netflixオリジナルシリーズ「この恋、通訳できますか?」が配信予定。グローバルスターの専属通訳を務める多言語通訳者役を演じ、コ・ユンジョンとロマンティック・コメディで共演する。明るく軽快な物語の中で、キム・ソンホならではの生活感あふれる演技が、あらためて注目を集めそうだ。下半期には、ディズニープラスのオリジナルシリーズ「現惑」に出演。1930年代の京城を舞台にしたファンタジー時代劇で、画家ユン・イホ役を演じ、謎めいた女性ソン・ジョンファとの物語を紡ぐ。スジとの再共演も期待を集めている。さらにドラマにとどまらず、舞台にも挑戦する。2月から演劇「秘密通路」で大学路の舞台に立ち、2人芝居という形式の中で一人多役を演じるなど、新たな領域にも踏み込む予定だ。加えて、ウェブ小説原作ドラマ「議員さまのご加護」への出演も控えており、ジャンル作品での存在感も見せてくれそうだ。キム・ソンホにとって2026年は、俳優としてのキャリアに新たな転機をもたらす1年となるに間違いない。
(映画ライター・柳志潤)
