学生時代からお笑いサークルなどで活動していた芸人は、もはや珍しい存在ではない。2025年の「M-1グランプリ」優勝者「たくろう」の赤木裕ときむらバンドも、実はNSC(吉本総合芸能学院)入学前からお笑いのキャリアがある。きむらは大学の落語研究会に所属していた。
現在のお笑い界を見渡すと、M-1決勝進出者の真空ジェシカ、ママタルト、ヤーレンズをはじめ、ナイツ、小島よしお、カズレーザー、ミルクボーイ、マヂカルラブリー・村上、サツマカワRPG、空気階段・鈴木もぐら、ハナコ・岡部大、にゃんこスター・アンゴラ村長、ななまがりなど、大学お笑いサークル出身者が数多く第一線で活躍している
博多華丸・大吉の博多大吉はこの事態に、
「やっぱ時代がもう変わってきてる、と。もう間違いなく変わった。お笑いサークル出身なんよ。令和ロマンもそうやし、真空ジェシカもそうじゃない。もう今、こうやってM-1の舞台に出てくる時代になってて」
大吉が注目したのは、芸人としての「仕上がり方」の違いである。
「吉本入って、NSC入って卒業して。さぁ、じゃあ今から舞台ってなった時にまず『どれだけ立てる?』と。よっぽどのヤツやないと、そんな毎日のように出番なんかもらえるわけないし。いろんなオーディションとか勝ち上がって、やっと月に1回、2回立てるかどうかやけど」
一方、大学のお笑いサークルでは環境が全く異なると、大吉は言う。
「大学生のうちは、やりたい時はいつでもやれるし。だからいろんなコンビがいて。例えばこのコンビがやってるネタを見て、違うコンビが『ここ、こうしたらいいよ』とか。『このボケするんやったら、こっちのボケの方がいいんじゃない』とか、みんなで協力してやってる。お笑いサークル出身の子はみんなでブラッシュアップして卒業してる」
従来の芸人との決定的な違いを指摘するのだった。
「芸人って、実はこれがないのよ。全員、ライバルやから。先輩は言うかもしれんけど、同期とかはまず言わんやろ。それはM-1に関して言うと、ドラゴン桜じゃないけど『M-1獲りたいんなら大学へ行け』って。『NSCなんかに来るんじゃないぞ』っていう。そういう時代に入ったなぁって。M-1を獲る最短距離は、お笑いサークルかもしれんなぁ」
ところがナイツの塙宣之は、大学お笑い出身者の「完成度の高さ」に異議を唱えるのだ。
「相撲の学生横綱の感じに似てるよ。正代や朝乃山は学生相撲出身なんだよ。だけど横綱までいけないのよ、みんな。大関まではいくんだけど。ちょっとそれに似てるよね、お笑いの世界も」
即戦力として評価される一方で「出来上がっているがゆえに、崩せない」というジレンマがあるというのだ。
「ラランドとかも、おそらく学生の時は無敵だったんだけど、この世界に入っちゃうとやっぱり『うまさ』とかになっちゃうじゃん。だから、あれを1回崩す勇気も必要なわけじゃん。だけど割ともう出来上がっちゃってるから、崩せないんだよ。はじめから荒削りなヤツの方がもう1回できる。ナイツなんかもそうだよね」
自らの経験から、そう語るのだった。
(坂下ブーラン)
1969年生まれのテレビディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティー番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティーの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発を目指して奮闘中。

