
1996年放送の『機動新世紀ガンダムX』DVD1巻(バンダイビジュアル)
【画像】「えっ」「ここが語源だったのか」 これが『ガンダムX』に欠かせない「ゲテモノ」な敵メカです(5枚)
「ニュータイプ」の概念に一石を投じた作品
2026年に『新機動戦記ガンダムX』は放送30周年を迎えます。初代『機動戦士ガンダム』から議論の的となっていた「ニュータイプ」の概念に正面から取り組んだ数少ない作品であり、過去を引きずる大人たちと逞しく生きる若者たちが繰り広げる群像劇は高い評価を得ています。
高松信司監督は『ガンダムX』を「ガンダムを考えるガンダム」だと語っています。
ちょうどこの時期は『機動戦士Vガンダム』『機動武闘伝Gガンダム』『新機動世紀ガンダムW』など、新たなガンダムが次々と登場し、「ガンダムとは何なのか?」を新たに定義する必要がありました。『GX』はそのなかでも「ニュータイプ」に着目し、ひとつの解答を提示したことでも大きな意義を持つ作品と言えるでしょう。
『機動戦士ガンダム』で登場した人類の革新、進化の可能性を秘めた存在「ニュータイプ」は、その卓越した能力から次々と戦場に投入され命を散らしていきました。
心を交わしたニュータイプどうしの殺し合いは止まることなく繰り返され、『機動戦士ガンダムUC』にはニュータイプ論を否定するためのNT-D(ニュータイプ・デストロイヤー)が登場しました。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』では、ニュータイプの存在は表向き抹消されるなど、時代が進むにつれてニュータイプは権力者にとっての脅威として扱われるようになったことも、ガンダム世界の深みに重要な色彩を加えています。

『ガンダムX』は、非ニュータイプの主人公ガロードと、生まれつきのニュータイプであるティファの出会いが物語を動かした。画像は『機動新世紀ガンダムX』ビジュアル (C)創通・サンライズ
大量殺戮と「心のつながり」の象徴
『GX』でのニュータイプは、「大量殺戮兵器」と「心のつながり」という、ふたつの面が強調されているのが特徴です。
主人公機であるガンダムXは一撃でスペースコロニーを破壊する力を持つ「サテライトキャノン」を装備しているだけでなく、また、ニュータイプ能力を増幅する「フラッシュシステム」を使用することにより、ガンダムXと同等の性能を持つ「GXビット」を最大12機運用可能となり、合計13基のサテライトキャノンの同時発射が可能となっています。
作中に登場するニュータイプの少女「ティファ・アディール」(CV:かないみか)は、人間だけでなく動物とも心を交わすほど高い共感能力を持ちますが、サテライトキャノンによる大量殺戮が行われた際は、多数の断末魔が心に流れ込むという苦痛を味わいました。
心を交わせる存在が、殺戮の主役たり得るのか。人の心はそこまで残忍になれるのか。そもそも耐えられるのか。この矛盾に真っ向から切り込んだのが『ガンダムX』ではないでしょうか。
最終局面において、ファーストニュータイプ「D.O.M.E.」は「ニュータイプが人類の革新というのは幻想に過ぎない」と、ニュータイプの概念を否定し、たまたま能力を持って生まれた人間に過ぎないと定義します。特別な力を持たなくても意志をもって進むことが未来を切り開く力だと語り、主人公であるガロード・ランの生きざまを肯定し、「ニュータイプ」という言葉の終焉を宣言しました。
もちろん異論をお持ちの方もいると思いますが、「概念」だけでは何も為しえず、行動のみが結果を生むのは、現実世界においても変わりません。
現代社会はインターネットにより、本来出会わないはずの人と人がつながり、善意も悪意も簡単に増幅される社会となりました。いわば現代人は「疑似的なニュータイプ環境」に身を置いていると言えなくもありません。
時には暴力にもなり得る「つながる力」に振り回されないようにするにはどうすればいいのか。その答えのひとつが、『ガンダムX』のなかにあるのかもしれません。
