
静かにブチギレる男による大暴力というステイサムの使い方として100点満点の脚本を手掛けているのが、盟友シルヴェスター・スタローンだ。執筆した脚本の主人公はほぼ自分で演じてきたスタローンが、出演もせず脚本、製作に徹しているのは、実はステイサムが主演を務めた映画のみ。
このことからもわかるように、「エクスペンダブルズ」シリーズさながらの相棒、師弟関係を築いてきたスタローンとステイサム。その熱い友情をここでは振り返っていきたい。
■出会いの1作『エクスペンダブルズ』ですぐさま意気投合!

ステイサムとスタローンの初めての仕事となったのが、2010年の『エクスペンダブルズ』。スタローンが主導となり、自身をはじめとする80年代を代表するアクションスターとそれ以降のアクションスターを新旧大集合させた本作で、ステイサムは、スタローン演じるバーニー・ロスの“右腕”となるリー・クリスマス役に抜擢されている。
あるインタビューによると、スタローンは「『エクスペンダブルズ』で誰をキャストすべきか考えた時、その年齢で適任なのはステイサムしかいない」と記者に話していたそうで、キャスティングの時点からステイサムに大きな期待を寄せていたことがわかる。

ステイサムも名だたるスターたちのなかでひと際輝く、現役バリバリのアクションをはじめ、長年の相棒感を落とし込んだバーニーとのコミカルなかけ合いなど、相性ぴったりな演技でスタローンの期待に応えた。
“消耗品軍団”ゆえにキャラクターが頻繁に“入退場”するなか、常に頼れる男としてシリーズに皆勤したステイサム。特に4作目『エクスペンダブルズ ニューブラッド』(23)では、バーニーの存在感が薄れるなか、主役として活躍。製作にも名を連ねるなど、スタローンからステイサムへバトンが受け継がれたかのような1作だった。
■スタローン直々に脚本を贈られた『バトルフロント』

危険なスタントにも自ら挑むような強烈なエゴという共通点を持ち、現場で意気投合した2人。「この業界で最も充実した時間は、スライ(スタローンの愛称)と仕事ができた時。多くのことを学ばせてもらった。スライを心から敬愛している」とステイサムが語るなど、単なる共演者以上の師弟関係を築いてきた。その関係を象徴する作品が2013年の『バトルフロント』だ。
本作はステイサム演じる元麻薬捜査官のフィルが、亡き妻の故郷であるルイジアナ州の小さな町で再出発を誓うが、麻薬密売人に目をつけられ、最愛の娘を守るためにたった1人で立ち向かっていくという、いかにもスタローン脚本らしい“ローンウルフ”ものだ。

もともとスタローン自身が主演するつもりで書いた脚本だったが、「少し違う側面を見せられる作品をつくるべきだ」とステイサムのキャリアを思い、作品を直接渡したそう。そんな思いに応えるように、これまでは超人的な強さを持つ男という役が多かったステイサムだが、本作では心に闇を抱えた複雑なキャラクターを、深みをもって見事に演じてみせた。
■スタローンが考えるステイサムの魅力が詰まった『ワーキングマン』
そしてスタローンとステイサムの再タッグが叶ったのが、本日、日本公開を迎えた『ワーキングマン』だ。


危険な世界から身を引き、いまは建設業の現場監督として働く元特殊部隊員のレヴォン・ケイド(ステイサム)。妻を亡くしたレヴォンは、普通の父親となるため汗水たらして働いていたが、自分を拾ってくれた恩人である社長ジョー(マイケル・ペーニャ)の娘ジェニー(アリアンナ・リヴァス)が失踪。ジェニーが人身売買を行うロシアンマフィアにさらわれたことを突き止めたレヴォンは立ち上がり、マフィアたちを一人、また一人と地獄送りにしていく…。
チャック・ディクソンによる小説「Levon’s Trade」を原作とする本プロジェクトは、「エクスペンダブルズ」シリーズのグラフィックノベル「The Expendables Go to Hell」でディクソンと仕事をしたスタローンが作品に興味を抱いたことからスタート。

テレビ化を考えつつも映画化を決断したスタローンは「彼はこういう役にうってつけ。用心棒のように現れ、無駄なく事を成し遂げ、姿を消す。その潔さが最もロマンチックなんだ」と、真っ先に主人公にステイサムを思い浮かべたそう。
その言葉どおりステイサムは、付きまとう暴力の影から逃れようとしながらも愛する者たちを守るために立ち上がる正義漢を、ダークでシリアスな佇まいから、ユーモア交じりに浮かび上がらせる圧倒的強者の余裕まで魅力的に表現。娘に向ける父としての顔まで、様々な一面を持つキャラクターとして演じてみせた。


また、ほぼすべてのスタントを自らこなしたというアクションも、工事現場道具からゴリゴリの銃火器を駆使したものまで多彩かつ迫力満点で、これぞステイサム印というべき『ワーキングマン』。盟友であり師匠でもあるスタローンが引きだすステイサムの魅力を堪能したい。
文/サンクレイオ翼
