
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え…っ! ここは「史実と大きく違う」 コチラが実は「身長ほぼ変わらない」ラフカディオ・ハーン、小泉セツ夫妻の並んだ姿です
北川景子が物乞いになるのも「まさかの実話」
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『怪談』などで知られる小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と、彼を支えた妻・小泉セツをモデルにした物語です。
『ばけばけ』は史実をもとにしたフィクションですが、「これは創作だろう」と思っていたエピソードが「まさかの実話だった」ということがしばしばあり、視聴者を驚かせています。
たとえば、第5話ではヒロインの「松野トキ(演:高石あかり)」が友人とともに八重垣神社の「鏡の池」で恋占いをする場面が描かれました。こちらは和紙に硬貨を乗せて池に浮かべ、その沈む早さと場所で結ばれる相手と時期を占う、というものです。友人ふたりの紙はすぐに沈みましたが、トキの紙だけはなかなか沈まず、週をまたいだ第6話でようやく池の奥に沈んでいます。
セツも娘時代に友人たちと鏡の池に占いに行っており、友人たちの紙がすぐに沈んだのに対し、セツの紙だけは池の奥へ流れていってから、ようやく沈んだそうです。「遠くの人と結ばれる」という、外国人・八雲との結婚の暗示とも思えるエピソードは、ドラマにもそのまま活かされました。現在も「鏡の池」では、「縁占い」をすることができます。
また、第23話では「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」がたくさんの生卵を一気に飲んで周りを驚かせますが、ハーンが卵好きだったというのも実話です。ハーンの家に奉公していた人物が、「(ハーンの)朝食は牛乳二合、生卵五、六個」と証言しています。ヘブンが「糸こんにゃく」を嫌がる場面も史実通りで、ハーンは虫を連想させる糸こんにゃくが嫌いだったそうです。
第40話でヘブンが「クイズ大会」で語った、「料理屋を開いたことがある」というのも実話でした。ハーンはニューオリンズにいた頃、料理屋を開いたことがあります。
ハーンは1879年に「南部で一番安い料理店」というキャッチコピーの、なんでも1皿5セントの激安食堂「不景気屋(ハード・タイムス)」を開業しますが、わずか20日間で閉店してしまいました。
潰れた理由は、一緒に店を開いた友人が売上金を持ち逃げしてしまったからです。ハーンは手紙で、彼のことを「狂暴な大男で、コーヒーがまずいという客を殺しかねない男」と書いていました。
そのほか、視聴者に衝撃を与えたのは、上級武士の妻でトキの実母でもある「雨清水タエ(演:北川景子)」が、第28話で物乞いになっていた場面です。これも実話でした。
セツの実母・チエは、松江藩家老の娘として育ちましたが、嫁いだ小泉家は明治維新後に始めた機織り会社が潰れて零落し、困窮するようになります。当時の松江では乞食をする武士のことを「士族乞食」と呼び、けっして珍しくはありませんでした。チエのことも山陰新聞が「乞食と迄に至りし」と報じており、物乞いをしていたのは事実だったようです。
今後もどんな「まさかの実話」エピソードが飛び出すのか、楽しみにしたいと思います。
参考:長谷川洋二『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮文庫)、工藤美代子『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』(毎日文庫)、大澤隆幸「研究ノート・資料 焼津から見たラフカディオ・ハーンと小泉八雲」
