プロ野球を見ていると、ふとした瞬間に思うことがある。
「そういえば、左利きの捕手って見たことがないな」
草野球や少年野球ではそれほど珍しくないのに、プロの世界になると、なぜかほとんど姿を見かけなくなる。
左投げ捕手が生まれにくい理由として、よく挙げられる理由が3つある。
ひとつめは、右打者が打席に立つと二塁への送球がやりにくくなることだ。打者の体が送球ラインにかかるため、上半身のひねりが大きくなり、どうしても動きにロスが出やすい。
ふたつめは、三塁への送球だ。三塁は角度が厳しく、左投げの場合は体を大きく開いて投げる必要がある分、スピードや正確さを保ちにくい。
三つめは、本塁でのプレーである。三塁走者が突っ込んでくる場面では、左投げ捕手は走者にタッチする動きが大きくなりやすく、不利になるとされてきた。
ただ、現代の野球を見ていると、この話は少し違ってくる。かつてのように右打者がずらりと並ぶ打線は減り、むしろ左打者の方が多いチームは珍しくない。そう考えれば、左投げの捕手が有利に働く場面があっても、不思議ではないのだ。
事実、2000年夏の高校野球甲子園大会では、那覇高校の左投げ捕手が登場。
強い肩と巧みなリードで3回戦まで勝ち上がり、左利きでも十分にやれることを多くの人に印象づけた。少なくとも利き腕が左であること自体が捕手としての資質を否定するものではないことは、この時点ですでに示されている。
プロの世界でも、例外はある。1990年に中日に在籍したベニー・ディステファーノは、左投げながら1989年にパイレーツで捕手として3試合に出場した。
それでも左利きのプロ捕手がほとんどいないのは、能力の問題というより、育成の流れによるところが大きいだろう。少年野球や高校野球に左利きで肩の強い選手がいれば、まず投手に回される。あるいは三塁や外野へ。その過程で、捕手として育ててみようという選択肢は後回しにされ、いつの間にか消えてしまうのだ。
かつては「メガネをかけた捕手は使えない」と言われた時代があった。しかし、その常識をヤクルトの古田敦也が覆したように、野球の世界では普通だと思われてきたことが、気がつけば変わっていることがある。左利きの捕手も、同じような存在なのかもしれない。
もし左利きの捕手がプロの舞台に現れたら、野球の見方はきっと変わってくるはずだ。
(ケン高田)

