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『空の大怪獣 ラドン』こそが最恐トラウマ特撮である理由 序盤で出てくる「猟奇殺人」の犯人覚えてる?

『空の大怪獣 ラドン』こそが最恐トラウマ特撮である理由 序盤で出てくる「猟奇殺人」の犯人覚えてる?


『空の大怪獣ラドン』DVD(東宝)

【画像】え、「マジ怖え」「出会いたくない」 コチラがラドンより先に出てくる「トラウマ級の怪獣」です

キュラキュラキュラ…… いまだに心拍数が上がる不気味な怪獣

 2026年に公開70周年を迎えるのが、東宝の特撮映画『空の大怪獣 ラドン』です。初代『ゴジラ』から2年後、1956年に公開された本作は「日本初のカラー怪獣映画」として制作され、大ヒットを記録しました。

 翼竜が怪獣となった「ラドン」が上空を縦横無尽に暴れる様は圧巻で、なかでも特撮美術の巨匠・井上泰幸さんが中心となって手がけた、クライマックスにおける福岡市天神の破壊シークエンスは、その精巧さからいまなお伝説として語り継がれています。

 そんな本作は、昭和特撮を代表する「トラウマ作品」でもあると言って差し支えないでしょう。筆者は非リアルタイム世代ですが、それでも小学生の頃に本作を観て、震えあがった記憶があります。

 ただ、その恐怖の対象は主役のラドンではありませんでした。少年少女にただならぬ恐怖を植え付けた張本人は、意外なところからやってきたのです。

 そいつが出てくるのは、物語の序盤でした。舞台となったのは阿蘇の炭鉱の坑道内で、鉱夫が何者かによって水中に引き摺り込まれ、惨殺死体が発見される事件が起きます。

 暗闇のなかで水中に浮かぶ死体、それを引き上げて治療室の浴槽で洗い、術台に乗せて検死をする描写のリアルなことと言ったらありません。本作が「空の大怪獣」とは限りなく遠い、地下の惨殺死体という極めて生々しい描写から始まることに、驚いた方も多いでしょう。

 その後も次々と犠牲者が発見され、サスペンスのような重苦しい緊張感が画面いっぱいに満ちていきます。そして「そいつ」は突然出てくるのです。

 とある民家の開け放たれた縁側から、「キュラキュラ……」という不可思議な異音とともに現れたのは、全長3mはあろうかという虫型の化け物でした。巨大な腹部と、複眼のついた頭部を揺らしながら、闖入してくるそいつは、まさに阿鼻叫喚必至のビジュアルです。

 この恐怖の原型のような化け物こそ、惨殺事件の犯人「メガヌロン」でした。古代のトンボの幼虫という設定で、いわば「巨大なヤゴ」です。

 一瞬で相手を引き裂く前脚のハサミ、巨大なアゴ、不釣り合いなほど発達した複眼、改めて見ても、あらゆる要素が恐怖をもたらします。さらに、開放的な夏場の日本家屋がこの化け物の侵入をたやすく許してしまうという現実と地続きのような描写も、恐怖を何倍にも増幅させたのです。

 その後、このメガヌロンを捕食する上位存在として、いよいよ真打・ラドンが登場するのですが、最後までメガヌロンへの恐怖は消えませんでした。

 本作の監督・本多猪四郎さんは、のちにインタビューで序盤の死体の発見から、術台に乗せるまでのシーンについて次のように語っています。

「あのあたりはハッキリした狙いですね。狙いというか、多分ああなるだろう、本当の事故が起きたとすればね。そういうところをあんまりね、手は抜かない方が語りかけが本当らしくなるということですよ。」

 存在しない生物を扱う怪獣映画だからこそ、リアリティーと恐怖にこだわったのです。ミニチュア同様に、極めて精緻に作られていた映画でした。

参考書籍:『特撮をめぐる人々: 日本映画昭和の時代』(竹内博)

配信元: マグミクス

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