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深津絵里、初単独主演作「満月のくちづけ」から覗く国際的女優の片鱗 長く配信・放送されなかったレアタイトルを解説

深津絵里、初単独主演作「満月のくちづけ」から覗く国際的女優の片鱗 長く配信・放送されなかったレアタイトルを解説

「満月のくちづけ」
「満月のくちづけ」 / (C)アミューズ

2025年9月公開の「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」で8年ぶりの実写映画出演を果たした女優・深津絵里。その圧倒的な演技力と変わらない美貌で観客を魅了し続けている彼女だが、そのキャリアの原点…彼女が単独初主演を果たした映画「満月のくちづけ」はあまり知られていない。これまで配信や再放送の機会に恵まれなかったためだが、1989年の公開から30年以上を経た今、この伝説的な作品がついにCS放送「衛星劇場」で放送されることになった。同局の「令和によみがえる。懐かしのちょいレア劇場」特集の注目作である「満月のくちづけ」と、もう1つのレア作品である映画版「ショムニ」に焦点を当て、その魅力を紐解いていく。

■深津絵里、16歳の初単独主演作「満月のくちづけ」

映画「満月のくちづけ」は、深津が「高原里絵」名義で活動していた時期に制作された記念すべき単独初主演作だ。物語の舞台は横浜郊外にある女子高校。主人公の里絵(深津)は内気な性格から、密かに思いを寄せる美術教師・沢田(寺脇康文)に気持ちを伝えられずにいた。

そんな彼女を見かねた親友が、恋を成就させるための「おまじない」を提案。しかし悪ふざけからその儀式が失敗に終わると、里絵の周りでは不可解で恐ろしいできごとが次々と起こり始める。

ホラーというジャンルでありながら、どこか甘酸っぱい青春の空気感が漂う本作。単なる怖さだけではない独特の魅力が評価され、深津は「日本アカデミー賞新人俳優賞」を受賞、さらにローマ国際ファンタスティック映画祭でも「最優秀監督賞」と「最優秀主演女優賞」を受賞するなど高く評価された。

それもそのはずというべきか、振り返ってみればキャスト陣も今となっては豪華な面々が集まっている。初々しい演技を見せる深津だけでなく、里絵が思いを寄せる沢田先生役を演じたのは同作が映画デビュー作となった寺脇康文だ。

いまでは実力派俳優として押しも押されもせぬ深津、寺脇。その演技力は、この頃から片鱗を見せ始めている。

■多くの縁を感じさせる貴重な映画

「満月のくちづけ」を見るべき最大の理由は、何といっても深津の瑞々しく、愛らしい姿に尽きる。公開当時16歳だった彼女はアイドルとしても活躍しているタイミング。同作は本格的な俳優としてブレイク前の出演作だ。

里絵というキャラクターは内気で純粋、そしてどこか儚げな雰囲気を持ち合わせている。深津は、そんな里絵の繊細な心情を丁寧に演じる。好きな先生を前にした時の照れた表情や得体の知れない恐怖に怯える姿は、まだまだ粗削りながら素直でストレートな感情が乗っている。

ちなみに同作のエンディングテーマ「マリオネット・ブルー」は、深津が「高原絵里」名義で担当。制作総指揮は三宅裕司、監督はのちに映画「ブギーポップは笑わない」やドラマ「牙狼<GARO>」シリーズなどで知られることになる金田龍が務めた。深津、寺脇だけでなく金田も同作で監督デビューを果たしたことを考えると、どうにも特別な縁を感じてしまう。

当時のファンからは「“高原里絵”時代のかわいさが詰まっている」「まだあどけなさが残っていて、今とはまた違う魅力がある」といった声も。キャリアを重ねて演技に深みと凄みを増した国際的女優・深津の軌跡、そのスタートが見られる貴重さは言うまでもない。

■ドラマとは一線を画した 幻の映画版「ショムニ」

今回の特集では、「満月のくちづけ」と並んで、もう1つの貴重な作品がラインナップされている。江角マキコ主演で大ヒットしたテレビドラマの“映画版”「ショムニ」(1998年公開)だ。

多くの人が「ショムニ」と聞いて思い浮かべるのは、会社の掃き溜め部署「庶務二課」のOLたちが破天荒な方法で社内の問題を解決していく痛快なストーリーだろう。しかし映画版はテレビドラマ版とは全く異なり、ドラマ版よりも原作コミックに忠実な作風となっている。

映画版の主人公は、経理課からショムニにヘルプとしてやってきた地味なOL・塚原佐和子(遠藤久美子)。映画では彼女の視点を通して、一癖も二癖もあるショムニメンバーのさまざまな姿を映していく。

またドラマ版ではボスの坪井千夏(江角)が主役だったのに対し、映画版は塚原が物語の軸。そして会社の問題をスカッと解決するのではなく、深夜の街を舞台にドタバタ劇が繰り広げられるという点もテレビ版とはテイストが異なる。キャストもドラマ版でお馴染みの女優陣ではなく、一部のキャラクターは設定や名前まで違う。ただこれは、テレビ版が原作から設定を変更しているため「映画版のほうが原作に則っている」が正しい。

ドラマ版のような豪快さよりミステリアスな雰囲気を醸し出す坪井千夏は高島礼子が、魔性の女・宮下カナは河合美智子が、ドラマ版では頭脳派だった丸橋梅は丸橋由美子となって小林麻子が、情報通の徳永あずさは原作通り関西弁のほら吹き・徳永佳代子として濱田マリが演じた。

同作も「満月のくちづけ」と同じく、長らく配信・放送の機会に恵まれなかったレアタイトル。衛星劇場では「満月のくちづけ」を10月3日(金)朝8時30分から、映画「ショムニ」を10月2日(木)深夜1時30分から放送する。なかなか見られない懐かしの名作たちと再会できる貴重なタイミングだけに、改めて両作品で往年の俳優たちの輝きを確かめておきたい。

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