(3)キーワードを見つける
苫野 ここまでの事例を改めて見直して、何か見えてきたキーワードはありますか?
Dさん(社会人2年目) 「自分で」というのは「自立」に欠かせないキーワードな気がしますね。
Cさん(大1) 「自分で、自分の」みたいなのはどうですか?自分で、自分の好きや志を追求している、みたいな。
全員 なるほど。
苫野 「自分で」だと「自律」にも関わってきそうですが、その点、どうですか?
Dさん(社会人2年目) 「自律」は、自分の中の規律やルールに従ってるって感じがします。欲望に負けずに。
Aさん(高1) 「自律」して初めて「自立」ができるんじゃないですかね。
苫野 なるほど。自ら律して初めて立つことができる?「自立」のほうが「自律」より上位ってことかな。
Cさん(大1) でも経済的自立の場合、「自律」してなくても可能なんじゃないかなあ。
全員 確かに。(しばらく沈黙)
苫野 ここまでの対話を通して、どんなことでも何か発見や疑問に思ったことなどありますか?
→みんなの思考が少し行きづまったかなと感じた時には、どんなことでもとりあえず言葉にして投げてみることを促します。するとそこを手がかりに、また思考が動き始めることがあります。
Dさん(社会人2年目) さっき「自立心」の話をしましたけど、「自立心」は子どもでも持てますよね。でも、自立心を持っているだけじゃ、自立はしていなくて。自立っていうのは、自立心に加えて、実際に経済的な力とかがあって可能になるんじゃないかと思います。
苫野 なるほど。自立心だけでは自立はできないってことですか?
Bさん(中2) そうだと思います。私みたいな中学生は、やっぱり自立してると言われるとちょっと違和感がありますが、自立心があると言われるとしっくりきます。
全員 確かに!
Bさん(中2) こうなると、「自立心とは何か」の本質観取が必要ですね(笑)。
苫野 そうだね。せっかくなのでちょっとだけ考えてみましょうか。ここには中・高・大学生が参加してくれてるけど、経済的自立はたぶん完全にはしてないんじゃないかと思います。でも、Bさんが言ってくれたように、「自立心」なら持っている、と思えることはありますよね。それってどんな時か、またちょっと具体例を挙げてもらっていいですか?
Bさん(中2) 将来留学したいという夢があって、そのために経済的に自立するための準備をしてるんです。それって自立心なのかなって思います。
Cさん(大1) 来週から親元を離れて1人暮らしをするんですけど、家具を自分の意志で選んで買ったりする時、自立心を感じます。
苫野 ああ、なるほど、意志……か。なんか「意志」って言葉、自立心にも自立にも欠かせないものである気がしたんですが、みなさんどう思いますか?
→これは本質的なキーワードではないかと思った時は、ファシリテーターも遠慮なく場に投げてみます。
Dさん(社会人2年目) 確かに、「自分の意志を持つこと」が、自立心には欠かせない気がします。高校の同級生が、サッカー選手になりたいからスペインに行くと言って、いまも現地で日本語教師をしながらサッカーを続けているんです。まさに「自分の意志を持っている」ってことですよね。それはすごく自立心があるし、実際に自立もしてるなって思います。
苫野 本当ですね。なんとなく、「自分の意志」は自立心にとっても自立にとっても、ど真ん中の言葉な気がしてきましたね。
全員 はい。
苫野 じゃあこの「自分の意志」という言葉を手がかりに、「自立」とはいったい何なのか、その的の中心に言葉を当てていきましょうか。
(4)本質を言葉にする
Dさん(社会人2年目) 自分の意志を実現しようという思いを持っていることが「自立心」があるということで、実際にその意志を実現できていれば「自立」していると言えるんじゃないでしょうか。
全員 なるほど!
苫野 いいですね。だんだん言葉がテーブルの上にかたどられてきた感じがするぞ。最後にもう一歩、言葉にして改めて表現することはできないかな。的の中心を射抜くような言葉にできればと思うんですが。
Bさん(中2) 「自分の意志を実現しようとする力を持っていること」はどうですか?
全員 おお!
苫野 それは言えてる気がする!「力」っていいね。経済的な力はその一つと言えそうですね。
Aさん(高1) 納得です。真ん中を射抜けた感じ。
苫野 うん、いい本質観取ができた気がしますね。「自立とは、自分の意志を実現しようとする力を持っていることである」。すごい。この短時間で、よくここまで言葉にできたねぇ。

