
MFゴーストの音響監督を務める三間雅文さん
【画像】え…っ!「カッコよすぎ」 こちらが『MFゴースト』三間音響監督が“自腹”を切って進化させた「ハチロク」です(14枚)
実車購入から始まる収録──「偽物の音は使わない」三間雅文監督の覚悟
アニメの音響収録のために、音響監督が数百万円の車を自腹で購入──。そんな並々ならぬこだわりを持つ制作現場が、『MFゴースト』には存在します。
音響監督・三間雅文さんは、劇中の主人公「片桐夏向(かたぎり かなた)」が駆るトヨタ「86」を実際に購入。アニメで86の仕様が進化するたびに、三間さんの愛車も同じ仕様へとチューンナップし、その都度エンジン音を録り直したといいます。
2026年1月4日から順次放送される『MFゴースト 3rd Season』では、主人公の86がターボ化されますが、三間さんの愛車も同様にターボキットを装着し、新たな音を収録しました。
2025年9月28日、茨城県の筑波サーキットで開催された「ハイパーミーティング」では、BLITZがコーディネイトを手がけた片桐夏向の86レプリカモデルが展示されました。この実車こそが、三間さんが所有する収録用の86です。
イベントでは、『MFゴースト』制作の裏側や音響へのこだわりについて、貴重な話を伺うことができました。
(文=編集部/撮影:小林岳夫)
『頭文字D』の時代から、作品に登場するクルマの音はすべて実車で収録されており、『MFゴースト』でもその伝統は引き継がれています。制作陣は細部の音まで妥協することなく、本物の走りを届けることを最優先にしてきました。
実際、収録するたびに86を借りるとコストや時間の制約が生じたことから、三間さんは「それならば」と自腹で86を購入したといいます。劇中で86の仕様が進化するごとに、自らの86も同じ仕様へと進化させ、その都度音を録り直しています。まさに「アニメと同じく実車が進化する」という異例の状況が現場で起こっているのです。
アニメと同じく進化するマシン──ターボ化やカーボンボンネットも再現
2026年1月から始まる第3シーズンに登場する主人公・カナタの86は、サスペンションやブレーキの刷新に加え、ターボキットを装着した仕様へと進化しています。さらにカーボンボンネットも採用されているので、劇中で戦うためのスペックが現実の86でも再現されました。ターボ化されたエンジン音だけではなく、軽量化された車体による音を収録し直し、アニメに反映させています。単なる演出ではなく「本当に存在するマシン」のリアルな音と挙動が、視聴者の耳と心に届くからです。
他にも、アニメの中で描かれる「ブレーキバランス調整用のコントローラー」は実車では存在しない装備ですが、三間監督はなんとハンドメイドでスイッチを製作。しかもダミーのスイッチでは、防犯カメラ用のスイッチとして機能させるなど、遊び心も交えながら実用性を持たせています。
さらに、車内に飾られるお守りも本物を用意し、ルーフアンテナの長さといった細部まで意識しています。オタク層から「偽物」と言われないよう、徹底的に作り込みが行われているのです。

三間音響監督が自腹で購入した「ハチロク」
声優は免許持ちを起用──リアルな体感をセリフに反映
試収録用のレプリカ86にもかなりのこだわりが見えましたが、声優のキャスティングにも独自のこだわりがあります。ドライビングの感覚を知らないままでは、リアリティーのある演技は難しいと三間監督は判断。そのため、免許を持つ声優を優先的に起用しているのです。
実際に運転経験があることで、セリフに込められる抑揚や呼吸のタイミングが変わり、聞き手に伝わる臨場感が大きく向上します。単なる声の演技ではなく「ドライバーが走りながら発している声」を届けたい──そんな制作陣の思いが形になっています。
さらに、通常のアニメでは立って行うアフレコが一般的ですが、『MFゴースト』では座った状態で収録するケースがあります。これはドライバーが運転席に座って発声する姿を再現するための工夫です。
立って演じると腹式呼吸が強調され過ぎてしまいますが、座ることでドライバー特有の声の響きが生まれるといいます。こうした細やかな配慮が、アニメの中のセリフを「本当に運転中に発せられた言葉」に近づけています。
高額車両の音も実車で収録──3500万円級のマシンに挑む緊張感
86以外にも、収録対象となるのはフェラーリやランボルギーニなど高額なスーパーカーやスポーツカーたちです。なかには3500万円を超える車両もあり、事故を起こせば大きな損失となりますので、収録現場は常に緊張感に包まれていました。
いかにして本物の音を引き出すか、いかに安全に収録を行うか──。アニメ制作とは思えないほどシビアな現場の空気が、音響監督をはじめとするスタッフに課せられていました。
リアリティーが『MFゴースト』を特別なアニメにする
『MFゴースト』が他のアニメ作品と一線を画すのは、ここまでリアルを追求しているからにほかなりません。実車で録音されたエンジン音、声優の演技にまで影響する収録スタイル。すべてが「本物の走り」を視聴者に届けるための工夫です。
第3シーズンの放送開始は2026年1月4日。三間さんが自ら進化させた86の音が、間もなく視聴者の耳に届けられます。音響監督が自腹を切ってまで追求した「リアルな音」が、どれほどの臨場感を生み出すのか注目です。
