肉体的なピークはもうとっくに過ぎている。現在の欧州サッカーシーンでは、自身よりも20歳下のラミネ・ヤマル(スペイン代表)ら10代の選手たちが台頭し、新スター候補に名乗りを上げている。しかし、それでもなお、リオネル・メッシは2026年北中米ワールドカップ(W杯)において最大級の注目選手であり続けている。
その一方で、彼が欧州の第一線から退いて数年が経過したのも事実だ。以来、主戦場にしている米国のMLS(メジャー・リーグ・サッカー)について、アルゼンチン紙『La Nacion』は「フィジカルが重視され、荒れた展開の多い三流リーグ」と厳しく断じている。はたして、メッシの“実力の現在地”はどこにあるのだろうか。
メッシ率いるインテル・マイアミは、先月クラブ史上初めてMLSカップを制し、頂点に立った。3-1で勝利したバンクーバー・ホワイトキャップスとの決勝でも、メッシは2アシストを記録する活躍を見せた。スペイン紙『El PAIS』は試合後、そのプレーをこう評価している。
「メッシはもはや、サイドに張り付いていた爆発的なウイングでも、偽9番として相手を翻弄していた俊足の魔術師でもない。最近の彼はクォーターバックのように一列下がった位置でプレーしている。しかし、この新たなポジションは彼の得点力を損なうものではない。容赦なく、貪欲で、冷酷。ボールをコントロールして相手ゴールに向かうたびに、今なお相手DFを恐怖に陥れている」
数字もその評価を裏付けている。メッシは今シーズン、レギュラーシーズン28試合に出場し、ともにリーグ最多となる29得点、19アシストをマーク。さらにプレーオフでは6試合で6ゴール、9アシストという全盛期さながらの成績を残した。その勢いは代表チームでも変わらない。北中米W杯の南米予選においては8ゴールで得点王に輝き、アルゼンチンを首位通過へと導いている。
スペイン紙『AS』が強調するのは、メッシの卓越したサッカーIQだ。「メッシの得点能力は、他の優れた資質を打ち消すものではない。むしろ、試合を形成するほぼすべての局面でリーダーシップを発揮し、その存在感はさらに際立っている。彼ほどサッカーを深く理解している者は、おそらく他にいないだろう。これは彼がキャリアを通して証明してきた事実であり、現在のインテル・マイアミでも変わらず継続されている」
さらに、その高い状況判断能力のおかげで、年齢を重ねてもドリブルの切れ味が維持されていると同紙は解説する。「メッシはスピードやフィジカルの持続力は失ったかもしれない。しかし、卓越した個人技ほぼ損なわれていない。現在のMLSにおいて、ドリブルとフェイントにおける『10番』の支配力は、これまで以上に確固たるものとなっている。とりわけ1対1や一瞬のスピードを要する局面での突破力は依然として高い水準にある。彼は今もMLSでは最高のドリブラーとして名を馳せている」
参加国が48か国に拡大され、より長丁場となる今回のW杯は、メッシのようなベテランにとっては過酷な大会だ。どのように体力を温存し、どのタイミングで起用していくかが重要なポイントとなるが、メッシの勝負どころを見極める目は健在だ。とっておきの“切り札”として、連覇を目指すアルゼンチンにとっては戦力面と精神面の両方で大きな力になる可能性を秘めている。
アルゼンチンの『La Nacion』紙は、「生まれながらの卓越した素質に加え、長年の自己研鑽、飽くなき野心、そしてフットボールへの情熱」を、メッシが長く活躍し続けられる秘訣に挙げる。そして「才能と努力の融合が、限界に挑戦する2人の英雄の凄みを物語っている」と、ライバルであるポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウドとの共通点を見出している。
C・ロナウドがすでにW杯出場を明言している一方で、メッシはまだ言葉を濁している。しかし、アルゼンチン国内ではよほどのアクシデントがない限り、出場は確実視されている。無限の情熱と錆びつかない才能を武器に、史上最多となる6度目の大舞台に向けてメッシは静かに牙を研いでいる。
文●下村正幸
【動画】メッシが2アシストの活躍で初制覇! MLSカップ決勝ハイライト【記事】北中米W杯のGS組分けが決定!日本の対戦相手をチェック
【画像】日本代表の歴代ユニホームを厳選写真で振り返る!(1992-2024)

