最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
慶應生&東大生研究チームが徹底分析!テニスの競技成績を飛躍的に向上させるヒント【ブレークスルーの鍵:第5回】<SMASH>

慶應生&東大生研究チームが徹底分析!テニスの競技成績を飛躍的に向上させるヒント【ブレークスルーの鍵:第5回】<SMASH>

どうすればテニスで一段上のステージへ行けるのだろうか?日々練習に打ち込み、試合にも出場している方であれば、誰でも一度は思うことでしょう。

 この謎に迫るべく、飛躍的に競技成績が向上する現象を「ブレークスルー」と名付け、過去にブレークスルーの経験があり、全国大会で上位進出経験のある8名の選手にインタビューを行ない、その内容を徹底分析しました。

 その結果、多くの選手が共通してブレークスルーのために重要だと感じている事柄が浮かび上がってきました。まず欠かせないのは、練習の質を高め、競技力を継続的に高めていくことです。それに加え、日々の練習に打ち込むための土台となる、高いモチベーションを保ち続けること、身につけた実力を試合で発揮できるようになることも重要です。インタビューを通して、これらを実現するために選手が行なっている具体的な工夫や実践も明らかになりました。

 第5回は、継続的に成長するために重要となる「練習量を増やすこと」について解説していきます。 ■練習の「量」と「質」、どちらが大切か?

 この問いは、スキルの成長を目指すうえで一度は考えるものではないでしょうか。明確に「こちらが大切だ!」と言い切りたいところですが、「量と質はどちらも大切」というのが私たちの考えです。今回は練習の「量」に焦点を当て、その重要性について考えていきます。

 練習量に関する有名な理論に「1万時間の法則」というものがあります。これは、スポーツ、音楽、芸術などの領域で、超一流のパフォーマンスを発揮する人は、1万時間にもおよぶ練習を積み重ねていたことを示したものです。ここで注意したいのは、この理論が「1万時間の練習をすれば、必ず成功を収められる」ことを示していない点です。また、その練習が高い質を伴っていることが必要不可欠だとされています。

 それでも一定程度の練習量を確保することが大切なのは、高いスキルを獲得するうえで、「反復」が重要な役割を果たすためです。スキルの上達は、①失敗を繰り返しながら学ぶ「試行錯誤の段階」、②意識しながらであればできるようになる「意図的な調整の段階」、③無意識でもできるようになる「自動化の段階」といったプロセスを踏むと言われています。さらに、自動化されたスキルであっても、試合のようなプレッシャー下で安定して発揮できるものであることが求められます。こうした揺るぎないスキルを獲得するために、「反復」が重要な役割を果たします。

■選手の語りから見る、練習量が増加するパターン

 インタビューにおいても、ブレークスルーに至る過程で練習量が増加していたことを多くの選手が話しています。その中には、進学や練習拠点の移籍など、環境の変化によって練習量が増加するパターンと、自主練習の量が増加するパターンが見られます。

「環境の変化」について、ある選手が「高校に入ってから練習量がかなり増えたと思う。中学までは週6回、夜に3時間練習して終わりだった。高校ではまず朝練をして、放課後に部活をしてから夜にスクールで練習していた」と話すように、1日の練習回数が増えることによって練習の総量が増えるパターンが多いようです。

「自主練習の増加」について、「練習が終わった後に、その日の練習でダメだった部分を追加で練習したり、自分の空いている時間を見つけてこまめに練習したりしていた」と話すように、チーム全体で行われる練習に+αする形で、練習量が増加しています。
 ■自主練習をする選手は何が違うのか?

 ここからは「自主練習」に焦点を当て、より深く考えていきます。とある研究では、バイオリン奏者をレベル順にSグループ、Aグループ、Bグループに分け、これまでに積み重ねてきた練習時間を調査しました。練習時間は、Sグループから順に約7500時間、5300時間、3400時間でしたが、実は「チーム全体での練習」の時間だけを見ると、それぞれのグループに大きな差はありません。

 すなわち、それぞれのグループの練習時間の差は、自主練習によって生まれているのです。この結果から「自主練習をすれば、必ず成功する」という結論を導き出すことはできませんが、自主練習が選手の成長にとって重要な役割を果たしていることが考えられます。

■「成長のサイン」としての自主練習の増加

 こうした中で、私たちは自主練習の量が増えることを、「選手の成長のサイン」として捉えています。その1つ目の理由として、「自主練習をする選手は、もれなくモチベーションも高い」と考えるためです。自主練習というのはその名の通り、自らの意志で主体的に取り組む練習です。そのため、ある程度のモチベーションがなければ、なかなか実行には至りません。

 さらに、こうした高いモチベーションはオンコートでの練習の質を高めるばかりか、食事・睡眠・ケアなど、オフコートでの取り組みにも好影響を与えます、こうした好循環が起こるサインとして、自主練習の増加が挙げられるのではないかと思うのです。

 また、「自主練習をする選手は、周りの選手とのつながりが充実している」と考えています。当たり前ですが、テニスの練習は原則2人以上で成り立つものです。さらに、上で記したように、「自主練習をしよう」と言うのは簡単ですが、それを実行することには心理的なハードルがあります。それを乗り越える手助けとなるのが、一緒に自主練習をする仲間の存在です。

 ある選手は、インタビューの中で、「自主練習を沢山していた頃、周りの選手も一緒にモチベーションが高くなっていって、いつも練習に付き合ってくれた」と話しています。また、他の選手も「いつも自主練習をする常連の仲間がいる」と話しています。

 自分自身の競技生活(特に部活動)を振り返っても、自主練習をする選手の周りには、自主練習が好きな選手が集まっているような印象があります。こうした選手の間では、お互いのプレーへのフィードバックなど、コーチなしで行う自主練習の質を高めるコミュニケーションが起こっている可能性も考えられます。こうした成長へと繋がる人間関係が、自主練習を通じて構築されているのではないかと思うのです。
 ■忘れてはならない身体のケア

 ここまで、ひたすら「練習量を増やす」ことの大切さについて記してきましたが、練習量を増やすと、ケガのリスクが高まることを忘れないようにしましょう。練習量を増やすならば、そのぶん練習前のウォームアップや、練習後のクールダウン、食事でのリカバリーなどを丁寧に行なうことが大切になります。

【やってみよう!今日からできる実践へのヒント】
以下のポイントを意識して、「練習量を増やすこと」を実践してみましょう! 

1)目標設定などを通してモチベーションを高める(連載第1回~4回を参照)

2)自主練習をする仲間を作る

3)練習量を増やした分だけ、身体のケアにも意識を向ける

解説=日置和暉
2000年生まれ。慶應義塾体育会庭球部を経て、慶應義塾大学大学院に進学。慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師。プリンス契約コーチ。2023年、日本テニス学会研究奨励賞。

解説=發田志音
2000年生まれ。慶應義塾体育会矢上部硬式庭球部を経て、東京大学大学院に進学。国際テニス連盟のコーチング科学誌で論文審査を担当。2018年、日本テニス学会研究奨励賞。

構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2024年6号より抜粋・再編集

【画像】なかなか見られないトッププロの練習やテニス教室の様子

【関連記事】慶應生&東大生研究チームが徹底分析!テニスの競技成績を飛躍的に向上させるコツ【ブレークスルーの鍵:第1回】<SMASH>

【関連記事】慶應生&東大生研究チームが徹底分析!テニスの競技成績を飛躍的に向上させるコツ【ブレークスルーの鍵:第2回】<SMASH>

配信元: THE DIGEST

あなたにおすすめ