現地時間9月25日、『Sanitas Foundation』でアンバサダーを務めるスコッティ・ピッペン(元シカゴ・ブルズほか)が、スペインを訪れた際に応じた現地メディア『MARCA』とのインタビュー記事が公開され、“70勝チーム同士”の仮想対決について語った。
NBAで17シーズンをプレーしたピッペンは、オールスターとオールNBAチームにそれぞれ7度、オールディフェンシブチームには歴代5位の10度選出された名選手で、殿堂入り(2010年)やNBA75周年記念チームにも選ばれている。
なかでもブルズで過ごした90年代にはマイケル・ジョーダンとともに2度の3連覇を達成。スモールフォワードながらトライアングル・オフェンスではポイントガード役もこなし、守備では相手チームの得点源をマークしつつ、複数のポジションをガードする重要な役目を担った。
名将フィル・ジャクソンHC(ヘッドコーチ)の下、デニス・ロッドマンを加えて“ビッグ3”を形成した1995-96シーズン。ブルズは当時NBA史上最高の72勝10敗(勝率87.8%)をマークし、通算4度目のチャンピオンシップを獲得した。この時のチームは、今でも史上最強に挙げられる。
ただ、この記録は20年後に更新された。2015-16シーズン、ゴールデンステイト・ウォリアーズが73勝9敗(勝率89.0%)をマーク。ファイナルでクリーブランド・キャバリアーズに3勝4敗で敗れて優勝こそ逃したが、レギュラーシーズンで70勝以上したのは歴史上この2チームのみだ。
このシーズンのウォリアーズは、MVPのステフィン・カリー、クレイ・トンプソン(現ダラス・マーベリックス)の“スプラッシュ・ブラザーズ”を中心に、ドレイモンド・グリーンやハリソン・バーンズ(現サンアントニオ・スパーズ)、アンドレ・イグダーラなど脇役陣がサポート。ブルズの72勝チームに在籍していたスティーブ・カーが指揮を執り、驚異的な戦績を残した。
インタビューの中で、ピッペンは“72勝ブルズ”と“73勝ウォリアーズ”の仮想対決について触れ、次のように語った。
「ルールによって違ってくる。現代のルールでプレーするならまだしも、1990年代のルールとなれば話は変わってくる。カリーは今と同じようにはいかないだろうね。今の時代であれば、彼は自由自在にプレーできる。誰も掴めないし、止められない。(現代のルールでは)どっちが勝つか私にもわからない」 1995-96シーズンはリーグ平均得点が99.5点だったのに対し、2015-16シーズンは102.7まで上昇。48分間のレギュレーション(12分×4クォーター)におけるポゼッション数を示すペースでも、前者が91.8で後者は95.8と大きな違いがある。
また、ブルズが72勝を飾ってからウォリアーズが73勝するまでの間、NBAではゾーンディフェンスの廃止やディフェンスの3秒ルール、さらにはハンドチェック・ルールが廃止になるなど、よりオフェンシブなゲームへ変わっていった。
特に大きく異なるのは3ポイントだろう。当時は3ポイントの本数を増やすべく、リーグが一時的に3ポイントラインを短縮していたが、1試合の平均試投数は16.0本に過ぎなかった。それが2015-16シーズンは24.1本まで上昇している。
ピッペンは“70勝チーム同士”の仮想対決をこう分析していた。
「我々のチームが1試合に25本や50本も3ポイントを放つことはなかった。その点では相手が上だろう。ベストシューターのステフ、クレイがいるからね。ただし、我々はフィジカルにプレーしていたし、ハードなディフェンスを敷いていた。相手チームを75~80点に抑え込むことだってできた。現代のNBAではほぼ不可能なことだ」
ともに当時のトップスタースターを擁する両チームだが、それぞれのプレースタイルや時代・ルールも異なるため、フェアな比較をするのは難しいとピッペンは語った。
仮に両チームが真剣勝負のプレーオフで戦った場合、どんな展開になるのか。おそらくディフェンスのブルズ、オフェンスのウォリアーズの構図になるだろう。
ブルズはジョーダン(198cm・98kg)、ピッペン(203cm・103kg)、ロッドマン(201cm・95kg)にロン・ハーパー(198cm・98kg)と、ディフェンスに優れた選手を4人も先発に据えていた。ベンチにもオールラウンダーのトニー・クーコッチ(208cm・107kg)、ディフェンダーのランディ・ブラウン(188cm・86kg)と、スペシャリストも豊富だった。
一方のウォリアーズも前述の通り盤石の布陣。勝負所ではカリー(188cm・84kg)、トンプソン(196cm・100kg)、グリーン(198cm・104kg)、バーンズ(203cm・102kg)、イグダーラ(198cm・98kg)の“スモールラインナップ”を送り込んで勝利を重ねた。
ブルズにはルーク・ロングリー、ウォリアーズにはアンドリュー・ボーガットという先発センターがいた。だが、重要な場面ではスモールボールが勝負を分けると見る。ウォリアーズに上背がない分、ブルズはロッドマンをセンターに配置し、攻撃重視ならクーコッチ、守備強化ならブラウンを起用して優位に進めていた可能性がある。
もちろん、これは仮想対決であって、実際に両チームが戦うことは不可能だ。それでも、誰もが一度は見てみたいと思う夢のカードではないだろうか。
文●秋山裕之(フリーライター)
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