『WRESTLE KINGDOM 20 in 東京ドーム 棚橋弘至引退』東京ドーム(2026年1月4日)
棚橋が夢の46913人(超満員札止め)となった東京ドーム大会で涙の引退――。内藤哲也、柴田勝頼、武藤敬司、藤波辰爾ら新日本マットで歴史を紡いできたレスラーに労われると、「プロレスを好きになってよかった」と振り返り、万感の「愛してま〜す!」で締めくくって、約26年間のプロレスラー生活に別れを告げた。
棚橋は1999年10月10日の後楽園ホール大会における真壁伸也(現・刀義)戦でデビュー。数々の激闘と実績を重ねて、新日本マットの輝きを取り戻し、新日本のみならず、日本プロレス界をけん引。団体を離れる同世代もいる中で、新日本愛を貫き、2023年12月には社長に就任した。翌2024年10月に引退を発表すると、1年2ヵ月にわたって、縁のある選手や後輩たちとの戦いを全国で展開し、ついに引退当日を迎えた。
最後の対戦相手となったのはライバルのオカダ・カズチカ。試合は33分を超す激闘になった。棚橋は自分の歴史を振り返るように、これまでの得意技を披露。さらに、新闘魂三銃士としてともに新日本で奮闘した柴田勝頼のPKや中邑真輔のボマイェまで繰り出した。ハイフライフローも敢行したものの、オカダを破るには至らず、最後はレインメーカーポーズを解禁したオカダのレインメーカーを食らい、ごう沈した。
棚橋、完全燃焼――。精根尽き果てて大の字になった逸材の前でマイクを持ったオカダは「棚橋さん、お疲れ様でした。あと1つだけ言わせてください。ありがとうございました」と感謝の言葉を送り、握手を交わしてリングを去っていく。
棚橋は感極まった表情でロープを掴んで立ち上がると、引退セレモニーに移る。木谷高明オーナーを始め、新日本マットで名勝負を繰り広げてきたジェイ・ホワイト、ウィル・オスプレイ、ケニー・オメガ&飯伏幸太が花束を贈呈。さらに、若手時代からしのぎを削ってきた柴田とは、ロックアップとチョップ合戦を交わしてから涙ながらに抱擁した。棚橋にとって憧れの存在である藤波、武藤も逸材の労を労う。
そして、昨年4月に新日本を退団した内藤&BUSHIがサプライズ登場。東京ドームが沸騰する中、GHCタッグ王座を手に入場ゲートに現れる。棚橋は手首を指差して急いで来るように迫るが、内藤はいつものように時間を掛けてリングインした。BUSHIは花束にブラックミストを浴びせてから棚橋に手渡すと、内藤はマイクを持つ。
まずは「ブエノスノチェス、東京ドーム!」と叫ぶと、「俺は武藤敬司選手に憧れプロレスファンになり、そしてあなたを見て新日本プロレスのリングに入門しました。去年、新日本プロレスを退団した俺に、また東京ドームの花道を歩く機会を与えてくれてありがとうございました」と棚橋に感謝。「もう二度とリングで戦うことはないでしょうが……いや、ないでしょう。リングで戦うことはないけど、またいつかこの新日本プロレスのリングであなたに会えるその日を楽しみにしていますよ。その日までアディオス」と別れを告げると、拳を突き上げる。棚橋は逡巡してから拳を合わせてみせた。
リングに残った棚橋はマイクを持つと、「皆さん、本日はご来場ありがとうございました。僕が新日本プロレスで夢見た超満員が見れました。ありがとうございました」と観客に感謝の意を伝え、「今日、僕は引退しましたが、これからも新日本プロレスの選手は全力で戦っていくので、皆さん応援よろしくお願いします。ありがとうございました!」と叫ぶ。そのままリングを降りようとするが、客席からは「棚橋」コールが発生。すると、棚橋は再びリングインした。
セコンドからエアギターを受け取った棚橋は、「東京ドーム! 盛り上がっていこうぜ!」と地声で叫んで、最後のエアギターをかき鳴らすと、アンコールにも応じる。「疲れてないですからね」と語って笑いを誘うと、「最後もう1回だけお願いを聞いてください。ドーム全員でウェーブをやりましょう」と提案。棚橋のかけ声でウェーブがドームを一周すると、場内は大きな拍手に包まれた。
棚橋は満足げに場内を見渡すと、いよいよ引退の10カウントゴングへ。場内から別れを惜しむ声援も飛び、棚橋も涙をこらえきれない。最後の選手コールが行われると、コーナーに上がって両手を広げて声援に応える。リングサイドの観客とハイタッチやハグを交わすと、さらにワゴンに乗って東京ドームを一周。何度も「ありがとう」と観客に伝えながら手を振り続けた。
そして、入場ゲートに戻ってくると、再びマイクを手にする。ライオンマークの前に立つと、「今、ひとつだけ僕の中で確信できたことがあります。それはプロレスを好きになって本当によかったです。ありがとうございました」とメッセージ。途中で言葉を噛んでしまい、らしさを見せつつも、「26年間、最高のレスラー人生を送れたのはファンの皆さんの応援があったおかげです。ありがとうございました。完全燃焼、やりきりました。本当にありがとうございました」と何度も感謝の言葉を口にする。そして、最後に「ということで、じゃあ、最後に東京ドームの皆さん、愛してま〜す!」と超満員の観客とともに拳を突き上げて、リングに別れを告げた。
棚橋が姿を消すと、場内にはかつての入場テーマ曲『HIGH ENERGY』が鳴り響き、棚橋が新日本マットで紡いできた歴史を振り返る映像が流されると、「愛してま〜す」の文字が映し出され、棚橋引退試合はフィナーレとなった。
【試合後の棚橋】
▼棚橋「ありがとうございました。なりたくて、なりたくて、なりたくて、3回目で新日本プロレスの入門テストに受かって、26年間いろんなことがありました。イキのいい若手になって、U-30もあって、いいことも悪いこともあって(苦笑) ブーイングもあったけど、たくさんの人にプロレスを見てもらう、楽しんでもらうというものを僕なりに作り出すことができて。そして、こうして最高の舞台でレスラー生活を幕を閉じることができました。出来すぎのプロレス人生でした。これからは社長として新日本プロレスの選手にはもっともっと気合を入れて頑張ってもらって、今以上の新日本プロレスに大きくしていくことがこれからの僕の夢に変わりました。本当に今日は取材の方もたくさん来ていただいて、ありがとうございました」
――超満員の東京ドームは夢だったが、花道から夢の景色を見て思ったことは?
▼棚橋「圧倒されました。セミファイナルもセミファイナル前の試合も凄い歓声で、メインで待ってる僕がおいおいおいとなるぐらいのお客様の盛り上がりで。はい、最高でした」
――泣いて笑っているように見えたが、いろんな感情があった?
▼棚橋「達成感、そして感謝。そしてこれからの野望。もっとプロレスをたくさんの方に喜んでほしい、楽しんでほしいというね。いろんな感情がわいてきました」
――引退試合、最高の相手と言っていたオカダに感じたことは?
▼棚橋「もうホントに2012年からの、レインメーカーショックからの戦いの中で、レベルが違うって言ってましたけど、ホントにあいつはレベルが違うんですよ。今日も必死に食らいついていったんですけど。ただ、僕が負けて黙ってる新日本のレスラーはいないと思うんで、これからオカダを誰が倒すのか注目して見てます」
――いろんな選手への思いがほとばしる技があったが?
▼棚橋「たもとを分かっても命を削り合って戦った仲間というのは今日、僕の背中をしっかり押してくれました」
――苦しかった時に棚橋コールが聞こえてきたが?
▼棚橋「あ、いつの間にかこんなに応援していただける選手になったんだなと。ホントに…いくらでも立ち上がれるというね。プロレスラーの醍醐味を感じることができました」
――46913人の観客動員となったが?
▼棚橋「今、設定できるお客様の席数のMAXを達成したんで。本当にファンの皆様には感謝です」
――セレモニーでは豪華な顔ぶれだったが?
▼棚橋「セレモニーがあるっていうのは聞いてたんですけど、誰が来るかっていうところまでは僕は聞いてなかったので。これは棚橋を泣かしにきてるなと。棚橋のこのキャリアの中でいろんな時代に接点があった選手なんで。こうしてみんなに祝福されて。大先輩も藤波さんも武藤さんも来ていただいて感謝です。ありがとうございます」
――柴田選手から言葉をかけられたようだが?
▼棚橋「『同じ時代に競い合えてよかったです』って僕が言ったんですね。柴田さんは『俺はもうちょっと頑張る』って。『頑張ってください』と」
――最後の最後に内藤選手が来たが?
▼棚橋「いやあ、ビックリしましたね。新日本のファンの方も大変喜んでましたし。今いろんな団体に上がってますけど、リング上で新日本プロレスの門、扉は空けておくからって言っておきましたんで。あとは彼次第ですね」
――メインを控えている中でTAKESHITAvs辻を見た感想は?
▼棚橋「もう、ちょっと異次元ですね。身体能力も含めて。技術、受け身というものは道場で身につけるんですけど、それ以前に彼らが生まれながらにして持ってる能力。凄いところまでプロレスが行くっていう感想というか、思ってしまいましたね。これからの選手、大変だなと思いました」
――今年、棚橋社長としてどんな新日本プロレスにしていきたい?
▼棚橋「それはホントに僕がプロレスファンになって、こんな面白いものがあるんだって。生活するのが、ホントに人生が千倍楽しくなったんですよ。だから、これからもプロレスを知らない人に知っていただいて、楽しくなった。そういった人が一人でも増えるように、まだ社長としてもできることが山ほどあるんで、全力で頑張っていきます」
――疲れた?
▼棚橋「これねえ、今言っとかないと一生言えないと思うんで言います。ああ! ああ、疲れた! 2012年から14年間、疲れたって言ってなかったんで。14年分の疲れたをストックしてますんで。ああ、疲れた。ありがとうございます。(取材陣が拍手すると)疲れたって言って拍手が起きた人類最初の人間ですよ(笑)」
――ウルフのデビュー戦をみての感想は?
▼棚橋「デビュー戦ですよ。で、その適応能力というか、ちょっと僕らがプロレスを見てきて測れる、そういった常識をはるかに超えてましたね。今日、東京ドームで棚橋がOUT、ウルフがINしたわけですけど、これからもっと伸びしろがあるんじゃないですか。ビックリしました」
――先輩、同期を含め新日本を離れた選手はたくさんいるが、新日本一筋だった理由は?
▼棚橋「新日本プロレスが好きだからです。僕をここまで成長させてくれたのが新日本プロレスだからですね。ありがとうございます」

