
銀二郎役の寛一郎さん(時事通信フォト、2024年11月26日)
【画像】え…っ! 「すごい」「200円も稼げるの?」 コチラが『ばけばけ』銀二郎のモデルが「社長」として成功を収めた「業種」です
親戚から送られてきた手紙によると
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、1890年に来日し、『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え、「再話文学」の元ネタとなるさまざまな怪談を語った、妻・小泉セツさんがモデルの物語です。
第13週では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」のかつての夫「銀二郎(演:寛一郎)」が、成功を収めて再登場しました。東京で社長になった銀二郎は月200円は稼いでおり、トキも彼女の養家・松野家の家族も養う覚悟でしたが、彼は最終的にトキは「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」と一緒になった方が幸せになれると身を引いています。
小泉セツさんの最初の夫・前田為二さん(1887年に出奔し、1890年1月に正式に離婚)は、銀二郎のように彼女とよりを戻そうとはしていませんが、離婚後に社長として財を成したのは史実通りです。
1897年1月、当時ハーンさんと結婚して東京に住んでいたセツさんと、養父・稲垣金十郎さん宛に、親戚の高木苓太郎さんという人物から手紙が届きます。そこには、1896年11月頃に苓太郎さんが鳥取県岩美郡岩井村(現岩美町)で為二さんと偶然会い、彼が岡山で社長になっていることが分かったと綴られていました。
苓太郎さんは「(為二は)必至の御勉強にて薬剤師の免許を受けられ、職業を転じ御自分は工事請負業を致され候に付…巨大の金を得られたる趣」と、為二さんが松江から大阪に逃げた後、猛勉強して薬剤師の免許を取得し、さらにそこから工事請負の事業を始めて資産を築いたことを語っています。
為二さんの会社は本店が岡山県岡山市にあるほか、同県津山市に支社もあり、為二さんは本店に「本妻」、支店に「権妻(妾、第二夫人)」を置いていたそうです。また、苓太郎さんが為二さんが話を盛っているのではないかと疑い、津山市に行って調査したところ、彼は当時本当に「二千円」ほどの資産を持っていたといいます。
諸説ありますが、明治時代の1円が現代換算で約2万円の価値だと仮定すると、為二さんはセツさんと離婚して10年もしないうちに、4000万円ものお金を貯めるほど成功していました。さらに、苓太郎さんは為二さんが松江に戻って「積年の汚恥をすすがん」と一旗揚げようとしていることを書いていましたが、為二さんがその後どうなったのかは不明です。
また、当時離婚後も為二さんの籍は稲垣家に残っていたため、苓太郎さんはこの手紙で「稲垣家を為次(為二)君に御相続の思召は無御座候や」と、為二さんに稲垣家を継がせるつもりはあるか金十郎さんに気持ちをうかがっています。
もちろん、すでに新しく家族を作っていた為二さんが稲垣家を継ぐことはなく、その後の1901年、セツさんとハーンさんの次男・巌さんが稲垣家の養子となって、為二さんは10年以上前の失踪を理由にようやく稲垣家の籍から外されました。
上述のように為二さんはかなり優秀で、借金まみれの稲垣家から逃げた後は才を発揮して巨万の富を得ています。1891年春時点の銀二郎は、まだ社長になって2、3年と思われるので、さすがに2000円の貯金はないでしょうが、今後再登場する頃にはさらにお金持ちになっているかもしれません。
おそらく、トキと銀二郎は「東京編」(セツさんたちは1896年9月に東京に移住)で再会するでしょう。そのときまでに、銀二郎が新しく家族を持って幸せになっているのかも注目です。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、八雲会年刊会誌『へるん No.62』
