WEC第7戦富士6時間レースの初日、トヨタは8号車が4番手、7号車が6番手となったが、小林可夢偉と平川亮のふたりは見かけよりも苦戦を強いられていると明かした。
確かにFP1では、8号車が6番手だったのに対し、7号車は17番手に沈んだ。7号車のドライバー兼チーム代表の小林は、これは持ち込みセットアップの差によるものだったという。
「持ってきたパッケージが思った通りにいかなくて、バランスが真反対というか、7号車がどアンダー、8号車がどオーバーでした。FP2では少しだけポジティブに行きましたけど、まだ正直足りないなと思います」
そう語った小林。トヨタ2台のトップスピードが311km/hほどと、314km/hで最速だったマシンとの差が比較的小さかったことについて聞かれると、その実態について説明した。
「(トップスピードは)参考にならないです。僕たちはクルマのパフォーマンスを最大限に出して、コーナーは速いんですけど、すごいところからぶち抜かれていくんですよ」
「パワーゲインでトップスピードの帳尻が合ったとしても、それまでのパワーがないのでメリットになることは根本的にないです」
パワーゲインとは、WECの性能調整項目のひとつであり、250km/h以上の領域における最大出力の増減を示している。今回トヨタは最高出力が483kW(フェラーリ499Pの480kWに次いでワースト2位)である一方で、パワーゲインの数値が7.7%とかなり高い。そのため、一見高速域では強そうに見えるが、250km/h以下の領域でのロスを補いきれていないのだという。
小林は決勝に向けて、普通のやり方では勝てないだろうと語った。
「あとは気合いです。数字で言うと何十馬力も足りていないものを、僕たちがどれだけ願っても増えるものでもないので、それを取り返すにはコーナーを速く走るしかない。コーナーで負けているかと言われればそうではなくて、コーナーではないところですごく負けているので、普通のやり方ではダメだなというのが正直なところです」
「ミスは無くて当たり前で、なおかつ良い流れがこないと優勝は難しいです」
またトヨタは当初、小林と平川が予選アタックを担当する予定だとしていたが、7号車はタイヤに優しいニック・デ・フリーズを担当とすることで、予選から決勝を見据えてタイヤに優しいクルマにしていくようだ。
「予選アタッカーはやめました。バランスもないからタイヤに優しく走らなくてはいけないんですよ。ニックはどちらかというと優しくナチュラルなのでロングランは良いと思います」
初日は比較的順調に見えた平川も、パワーゲインについて小林と同意見。クラス最軽量1030kgで最も出力が高い(520kW)アストンマーティンとプジョーは異次元に速いと話し、第2グループは予選から僅差の戦いになると予想した。
「最終コーナーから250km/hまでもそうですけど、ターン1からターン3(コカ・コーラ)、ターン6(ヘアピン)からターン10(ダンロップ)の250km/hにいかないところでロスしているという感覚がすごくあって、パワーゲインのメリットは感じていないですね」
「リザルトでもわかりますけど、ロングランでもプジョーとアストンマーティンが異次元に速いです。その次のグループには入れていますが、差はすごく小さいので予選は僅差になると予想しています」
「FP1からクルマを良くできたので、流れとしては良いとは思います。アタックのシミュレーションは思っていたより早めにタイヤ(のグリップ)が来たので、1周目でアタックして、次の周にすぐピットに入ったんですが、まだタイムを上げられる感触はありました」
「ただ周りもタイムを上げてくるので、どこに行けるかは分かりません。差はないなという感触があるので、少しタイムが落ちたら、そこから大きくポジションが落ちてしまいます」
今季これまで表彰台なしと、厳しい戦いが続くトヨタ。母国レース初日は比較的ポジティブに見えたが、ドライバーふたりからは予想以上に厳しい声が聞こえてきた。なんとか母国のファンの前で良い結果を掴み取って欲しいところだ。

