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名古屋で出会った気さくに笑う渋いバー・オーナー「キタさん」のこと / 調子の合う人同士は引き寄せ合う

名古屋で出会った気さくに笑う渋いバー・オーナー「キタさん」のこと / 調子の合う人同士は引き寄せ合う

・なんで入って来たの?

さて、入口まで来てみた。お店の名前は「if」。

初めて扉を開けるその瞬間がいつも1番緊張するんだよなあ。何が待っているのかわからない。さっきのお店みたいに不機嫌なマスターがいて、居たたまれない気持ちで1杯飲むことになったらイヤだな~……。

よく見ると「EFES(エフェス)」のシールが貼ってある。珍しいな。

トルコのビールブランド「EFES」。そういえばずいぶん昔にトルコに行ったときに飲んだっけなあ。今でもこのロゴを見ると、当時のことを思い出す。これは「ここに入れ」っていうサインだな。よし、お邪魔します!

入るとそこは、屋根裏のような設えの落ち着いたバーだった。お店の規模は1杯飲むのにちょうど良い広さ。

奥にはギターやキーボード、そのほか音響機材が置かれている。どうもライブをやっている様子。その昔、うちの地元にあった弾き語りのお店を思い出させる。

そしてカウンターを見ると、お店のスタッフと常連さんと思しき方々がグラスを傾けていた。そのうちの1人のネクタイ姿の男性が私にこう言ったのだ。

「なんで入って来たの!?」

その声は決して突き放す類のものではなく、ただただ純粋に疑問を投げかけるものだった。

「『弾き語りと弾きたがりの店』って面白いなと思ったもんで」

てっきり常連さんかと思ったら、この人がこのお店のオーナー、キタさんだった。経営者が客に「なんで入って来た?」なんて普通聞かないと思うんだけどなあ。なんか面白いなこの人。私は瞬時にこの人のユニークさに魅了されていた。

仕事で東京から来たことを伝えると、キタさんは矢継ぎ早に質問をなげかけてきた。それらにほどほどの冗談を交えて応えると、キタさんは笑う。それもとても大きな声で。その笑いにとても受け入れられている気がして、私は妙な安心感を覚えた。店と客、そういう関係ではあるけども、それを超えた居心地の良さがある。

1杯飲んで帰ると決めて、扉を開けたはずなのに、もう1杯、また1杯と飲めてしまう。結局この日は何杯飲んだんだっけなあ? 気づけばこの場は私を中心に話題が回っていた。キタさんは何度も言う「佐藤さん、あんた面白いねえ」って。オシャレで話上手、初対面の私を面白がってくれているキタさん、あなたの方が私よりずっと面白いですよ。

キタさんはこのお店を12年経営している。実はそれより前から似たような形で営業していたそうだが、前のオーナーが別店舗の営業にかまけてしまって、手が回らなくなり、常連だったキタさんが店を引き継いだのだとか。以前の形を踏襲しつつ、キタさんなりに改良を加えて、今の形に落ち着いているという。

・生演奏で歌えるお店

そんな最初の出会いから約半年、羽鳥との5000円対決で東京から豊橋の手前まで行っていた私は、キタさんの顔を見に行こうと再び名古屋を訪ねていた。

この日も「1杯飲んだら帰る」、扉の前でそう誓ったはずなのに、気づけば2杯、3杯とグラスを空けて、前回同様にマイクを握っていたのだった……。

ここは生演奏で歌えるお店、ピアニストが常駐しており、リクエストに応えてくれる。私は初回も歌わせて頂き、今回も自動的に歌うハメに。前回BEGINの『恋しくて』を歌ったことを、キタさんが覚えててくれてまずは1曲この歌をうたい、他のお客さんがスターダストレビューの『木蘭の涙』を歌われたのを見て、次はチャゲ & 飛鳥の『ひとり咲き』を熱唱。

そして最後に再びキタさんリクエストの沢田研二の『時の過ぎゆくままに』。キタさん直々にギターを持ち出して伴奏して頂いた次第した。

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