
“個性”を持つ人間が当たり前となった世界で、ヒーローを目指す少年・緑谷出久(CV:山下大輝)の成長を描く物語「僕のヒーローアカデミア」。TVアニメ最終章となる「FINAL SEASON」(ABEMA、ディズニープラス・FOD・Lemino・TVer・Huluほかで配信)。11月29日に放送された第9話をプレイバック。オール・フォー・ワンとの最終決戦から一週間後、傷ついたヒーローたちのその後と、新たな一歩を描くエピソードである「エピローグ/地獄の轟くん家・FINAL」。(以下、ネタバレを含みます)
■爆豪勝己の涙、そして「最高のヒーロー」へ
オール・フォー・ワン(CV:大塚明夫)との決戦から一週間。世界中からの支援を受け、日本は驚異的なスピードで復興へと歩み出していた。その頃、セントラル病院では、奇跡的な生還を果たした爆豪勝己(CV:岡本信彦)が、ベッドの上ですぐにでもリハビリを始めようと息巻いていた。右腕の状態は絶望的で、医者から「腕より心臓よ」と諭されるほどの満身創痍にも関わらず、「どんなキツいリハビリだろうがやってやんぜ今すぐ!」と吠える姿は、いつもの爆豪らしく頼もしい。
一方、緑谷出久は、同じ病室で入院していたオールマイト(CV:三宅健太)と会話を交わす。ボロボロの体ながらも生きて再会できたことを喜ぶ二人。デクは、死柄木弔こと志村転弧(CV:内山昂輝)の命を救えなかったことに悔いを滲ませるが、オールマイトは「やっぱり心は救ったのだと思うよ」と優しく肯定する。するとそこに爆豪が乱入、デクが“無個性”になったことを知った爆豪は、震える手で顔を覆い、「なんとなく、ずっとこのまま競い合って、追っかけていくって…思ってた…」と、大粒の涙を流す。
このシーンの爆豪の涙は、単に「ライバルがいなくなって悲しい」という言葉では片付けられない重みがある。これまでデクに向けてきた拒絶や暴言、そして今回の戦いでデクに助けられた事実。それらすべてを噛み締め、後悔や自責の念、そしてデクへの巨大な感情がない交ぜになった慟哭なのではないか。そんな爆豪の姿に戸惑いを隠せないデクは、「やめてよらしくない!」と明るく振る舞ってみせる。そんな二人のやり取りを見守っていたオールマイトは、「強くなったんだよ、二人とも」と感慨深げに呟き、二人に「ありがとう」と感謝を告げる。No.1ヒーローと、その意志を継いだ二人の少年。長い戦いの果てに辿り着いた、あまりにも美しく、切ない決着だった。SNSでは、「かっちゃんの涙でもらい泣きした」「『競い合っていくと思ってた』って本音が切なすぎる」「デクへのクソデカ感情が爆発してる」「3人の絆に涙腺崩壊」といった感動の声が殺到した。

■涙の別れと新たな出会い、A組の「更に向こうへ」
季節は巡り、6月。延期されていた3年生の卒業式が行われた。DJを務めるプレゼント・マイク(CV:吉野裕行)のハイテンションな進行の中、卒業生代表として登壇したのは通形ミリオ(CV:新垣樽助)。ミリオは「ヒーローの戦いってのは、いつもだいたいマイナスをゼロに戻すためのもの」と失ったものの大きさを認めつつも、自分たちの3年間はこの先のためにあると語り、雄英を旅立っていく。
そして、進級した2年A組の教室にも、別れの時が訪れる。青山優雅(CV:桑野晃輔)が、自らの罪にケジメをつけるため、雄英を去ることを決断したのだ。「平気さ、だって僕は、君たちの手を取ったんだもの」と泣きながらも笑顔を見せる青山に、改めてエールを送るクラスメートたち。さらに普通科からヒーロー科への編入を果たした心操人使(CV:羽多野渉)も加わると、それに嫉妬した青山のレーザーが乱反射し、葉隠透(CV:名塚佳織)の素顔が一瞬だけ露わになるハプニングも。これに素早く反応した峰田実(CV:広橋涼)が飛びかかるなど、湿っぽい別れはなし。悲しみも喜びも分かち合い、A組はまた一つ強くなっていく。SNSでは「青山くんの『手を取った』回収がエモい」「葉隠ちゃんの素顔かわいすぎ!」「心操くんA組入りおめでとう!」と、別れと出会いに一喜一憂する声が多く見られた。

■「地獄」の終わりと始まり、轟家の再生
放課後、轟焦凍(CV:梶裕貴)は家族と共に、厳重な隔離施設へと向かう。そこには、全身を拘束され、生命維持装置に繋がれた轟燈矢(CV:下野紘)の姿があった。医師からは、会話は可能だが、穏やかに死へと向かっている状態だと告げられる。父・轟炎司(エンデヴァー/CV:稲田徹)は燈矢に「俺はヒーローを引退する」と告げ、さらに「これから毎日来る。話をしよう」と、残された時間を対話に費やすことを誓う。「お前の熱は俺のヘルフレイムだ」と、かつて見ようとしなかった息子の炎を、今度こそ正面から受け止めようとする父。エンデヴァーの覚悟を聞いた燈矢の目からは、一筋の涙がこぼれ落ちるのだった。
そして帰り際、焦凍は燈矢に「好きな食べ物なに」と問いかける。燈矢の答えは、弟と同じ「そば」。地獄のような業火の中で殺し合った二人が、初めて共有できた「ただの兄弟」としての会話。もし普通の家族として過ごせていたら、一緒に食卓を囲んで笑い合えていたかもしれない――そんな切ない「もしも」を感じさせる一瞬だ。「最高傑作」と「失敗作」という呪縛から解き放たれ、憑き物が落ちた燈矢は、最後に「……ごめんな」と弟に謝罪の言葉を口にする。それは敵<ヴィラン>・荼毘としてではなく、兄・轟燈矢として、傷つけてしまった弟へ向けた初めての言葉。轟一家にまつわる因縁は、こうしてようやく一つの決着を迎えた。両親に向かって「俺にはA組のみんながいるから大丈夫だよ」と言葉をかける焦凍の表情は、まるで憑き物が落ちたような晴れやかな笑顔だった。SNSでは、「『そば』って答えた瞬間、ただの兄弟に戻れた気がして泣いた」「燈矢の『ごめんな』が重すぎる…」「エンデヴァー、やっとお父さんになれたね」「焦凍くんの最後の笑顔がヤバすぎ!」など、轟家の再生を見守る安堵と感動の声が相次いだ。第10話「笑顔が好きな女の子」は12月7日に放送済み。次回のレビューもお楽しみに!
◆文/岡本大介


