
人前で恥ずかしい思いをした瞬間、顔が一気に熱くなり、頬が赤く染まっていく。
赤面は、多くの人にとって「できれば避けたい反応」です。
とくに赤面しやすい人にとっては、気恥ずかしさに追い打ちをかける厄介な現象にも感じられるでしょう。
しかし近年の研究は、この赤面という反応が、単なる失敗のサインではなく、人間社会の中で意外な役割を果たしてきた可能性を示しています。
実は赤面には、進化の過程で育まれた「社会的メリット」が隠されているかもしれないのです。
目次
- 赤面はなぜ起こるのか?
- 赤面は「正直さ」を伝えるサインだった?
赤面はなぜ起こるのか?
赤面は、恥ずかしさや照れ、強い自己意識を感じたときに起こる、無意識の身体反応です。
感情が引き金になると、自律神経の一つである交感神経系が活性化し、アドレナリンが分泌されます。
通常、アドレナリンは血管を収縮させますが、顔の血管では逆に拡張が起こります。
その結果、顔や首の皮膚近くに血液が急激に流れ込み、熱感と赤みが生じます。
肌の色が明るい人ほど赤みは目立ちますが、肌の色が濃い人でも、同じ生理的変化は起きています。
たとえ他人から見えなくても、本人は「顔が熱い」「ピリピリする」といった感覚をはっきりと自覚します。
重要なのは、赤面が本人の意思とは無関係に起こる反応だという点です。
だからこそ、この現象には進化的な意味があると考えられています。
赤面は「正直さ」を伝えるサインだった?
赤面が起こるのは、多くの場合「望ましくない社会的注目」を浴びたときです。
そのため一見すると、危険に備える「闘争・逃走反応」の一部のように思えますが、実際には身を守るための反応ではありません。
研究者たちは、赤面は「自分の失敗や気まずさを理解している」ということを周囲に伝える、社会的な合図として進化した可能性が高いと考えています。
赤面は作り笑いや言い訳と違い、意図的に操作できません。
そのため周囲の人は、赤面している相手を「正直そう」「誠実そう」と感じやすくなります。
言葉にしなくても「申し訳ない」「分かっています」という気持ちを伝える、無言の謝罪として機能する場合もあるのです。
実際、赤面は人間関係の修復に役立つことがあり、社会的な失敗のあとでも信頼関係を保つ助けになると考えられています。
つまり赤面は、恥をさらす反応であると同時に、集団の中で生き延びるための「潤滑油」でもあったのです。
赤面は、多くの人にとって悩ましい反応です。
とくに社交不安がある人にとっては、生活の質に影響することもあります。
ただし、赤面そのものは異常ではなく、人間が社会的な存在として進化してきた証でもあります。
顔が赤くなるのは、失敗を認め、他者との関係を大切にしようとする身体のサインなのかもしれません。
そう考えると、赤面は単なる欠点ではなく、人間らしさを映し出す自然な反応と言えるでしょう。
参考文献
Why do we blush? Turning red may have surprising social benefits
https://theconversation.com/why-do-we-blush-turning-red-may-have-surprising-social-benefits-267012
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

