スクーデリア・フェラーリは、“プロジェクト678”のコードネームで呼ばれる2026年用F1マシンの開発に注力しているところだ。2025年のコンストラクターズ選手権で4位に沈んだフェラーリは、その恩恵を受けることになるのか? それとも……。
フェラーリは新年を迎え、新たな1ページをめくった。彼らの目標は、悪夢のような2025年シーズンをファンに忘れさせ、グラウンドエフェクトカーに代わって導入される新時代のF1マシンで復活を遂げることだ。
何度も言われてきたように、2026年シーズンはF1の様相を一変させるような大革命が起こる。車体、パワーユニット共に大きく姿形が変わり、あらゆる技術的価値基準が見直される。その結果、勢力図が変わる可能性も十分にある。
フェラーリはそんな重要な2026年シーズンに向けて、早くから開発をスタートしていた。フレデリック・バスール代表が認めるように、彼らは2025年4月の段階で同年のマシンSF-25の空力開発をストップ。人的・時間的・財政的なリソースを、プロジェクト678に集中させていた。
空力開発の早期中止の代償は、間違いなく2025年シーズン後半の成績に影響したと言える。彼らはマクラーレンとの差を縮めるため、改良型のリヤサスペンションを導入したが、ロイック・セラ率いるエンジニア陣が期待したほどの成果をもたらさなかった。結局、2025年のフェラーリは(スプリントを除いて)未勝利に終わった。
新シーズンは、1月末にバルセロナで行なわれる非公開テストでスタートするが、事実として未勝利に終わった昨年1年間が、間もなく始まる2026年シーズンに様々な影響を与える。
フェラーリは2024年シーズンに5勝を挙げ、マクラーレンとわずか14ポイント差でコンストラクターズタイトルを逃し2位だった。しかし昨年はその差が一気に拡大し、マクラーレンに435ポイントもの大差をつけられて4位に転落した。
ポジティブな側面から挙げると、フェラーリは年間順位を落としたことにより最初の6ヵ月間で2025年よりも多くの風洞実験を行なえる。一方、チームは半年前に2025年のコンストラクターズ選手権で2位になることを見越して予算を承認したが、4位に終わったため得られる賞金(分配金)が想定よりも少ないという結果になった。その不足は、1800万ユーロ(約33億円)に及ぶ。
ここでひとつの疑問が浮かぶ。空力部門とCFDチームが得る開発上のアドバンテージは、FOMによる賞金の1800万ユーロ減というマイナスを上回るのだろうか? ということだ。
当然ながら、明確な答えは存在しない。結局はいかに質の高い仕事をできるかに大きく左右されるからだ。
定量的な観点で言えば、フェラーリは空力テスト制限の規則により、王者マクラーレンよりも180時間多い1020時間の風洞使用時間を確保できる。また稼働回数で言えば、フェラーリは6月までに272回の風洞実験を実施できる一方、マクラーレンは224回しか実施できない。またCFDによるコンピュータ解析に関しても、フェラーリが1700のジオメトリを研究できる一方でマクラーレンは1400にとどまっている。
予算不足という課題は、リソース配分を工夫することで影響を最小限に抑えることが可能だが、世界王者よりも多くの開発ツールを使えるという点は確実にアドバンテージとなる。ただし、コンストラクターズランキング7位だったアストンマーティンは、鬼才エイドリアン・ニューウェイの指揮の下でより多くの開発を行なえる立場にあることも考慮すべきだ。
フェラーリは2025年の段階で、2026年マシンをかなりの時間風洞にかけてきたはず。678プロジェクトが堅実なものであれば、その成果は冬季テストの段階からすぐに見えてくるだろう。なおライバルのマクラーレンもMCL39の開発をかなり早い段階で打ち切っており、少なくともメルセデスやレッドブルよりは早かったことは記しておく必要がある。
ただ、仮に期待された成果が得られなかった場合、フェラーリにとってはライバルよりも多く使える風洞での実験が、ミスを修正するための重要な切り札になる可能性がある。
もしかすると、バスール代表が「開幕戦で1位であろうと10位であろうと関係ない」として、シーズン中の開発競争が鍵になってくるとコメントしたのには、こうした背景があるのかもしれない。

