年末年始の魔法はどこへ?

宿題の書初めさえも楽しかった(写真:iStock)
友人の由紀(39)は、12月に入ると決まって少し憂うつそうな顔をする。
「年末年始ってさ、昔はあんなに楽しみだったのにね。今はもう、“無事に乗り切る期間”でしかない」
子どもの頃の年末年始は、ただの楽しいイベントだった。学校は休み。宿題はあるけれど、それすら特別感があった。お正月には親戚が集まり、お年玉をもらい、テレビは特番だらけ。
夜更かしも許されて、「一年の終わりと始まり」には、なぜか魔法がかかっている気がしていた。
由紀も例外ではなかったという。
紅白を見ながら家族でみかんを食べ、元旦は少し早く起きて初詣。大人たちがバタバタしている横で、子どもはただそこにいるだけでよかった。
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休みなのに休まらない!

憂鬱だわ…(写真:iStock)
でも、大人になると、その立場はあっさり逆転する。年末が近づくにつれ、頭に浮かぶのはワクワクではなく現実だ。
帰省の予定、交通機関の混雑、親戚への手土産。 久しぶりに会う人たちとの、気まずくもある時間。
「結婚はまだ?」「仕事は順調?」「子どもは考えてないの?」
悪気がないのは分かっている。ただ、それを何年も繰り返されると、年末年始は“休み”ではなく“試練”になる。
由紀は言う。
「休みのはずなのに、全然気が休まらないんだよね」
実家に帰れば、親は親で心配してくる。親戚は近況報告という名の品評会を始める。笑顔で受け流しながらも、心の中では小さく疲弊していく。

夢や期待がなくなったわけじゃない(写真:iStock)
子どもの頃は、“何もしなくていい存在”だった。大人になった今は、“ちゃんとしているか見られる存在”になる。 それだけで、年末年始の意味は大きく変わってしまった。
さらに厄介なのは、周りが「せっかくの休みなんだから楽しみなよ」と言ってくることだ。楽しめない自分が悪いような気がして、また少し疲れる。
由紀はふと、こんなことを言っていた。
「大人になるって、行事がご褒美じゃなくて、タスクになることなんだね」
本当にその通りだと思う。片付け、大掃除、挨拶、予定調整、気遣い。年末年始は、やることリストが増える時期になった。
誰も明確には言わないけれど、“大人としてきちんとしているか”を静かに測られる期間。だから、年末年始が苦手になったとしても、それは自然なことだ。
夢や期待がなくなったわけじゃない。ただ、背負うものが増えただけ。
