テレビはまだまだトガっている。心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。新年一発目の回は、テレビウォッチャーの戸部田誠(てれびのスキマ)が、年末年始に放送されたネタ番組に注目。コンプラゆるゆるの空気の中で、売れっ子芸人たちが届けた珠玉の笑いとは…?
バイきんぐが放送コードすれすれのネタを披露
年末年始といえば、各局がこぞってネタ番組を編成し、数多くの芸人たちがネタを披露するのが風物詩だ。年の瀬や正月だからこそ許されるようなネタもあれば、純粋に唸らされる完成度の高いネタもある。今回の年越しも例外ではなく、印象的な瞬間がいくつも生まれた。その中から特に心に残ったネタを振り返ってみたい。
「これを見ると年末だと感じる番組」として、すっかり定着しているのが、20周年を迎えた『爆笑問題の検索ちゃん 芸人ちゃんネタ祭り』(テレビ朝日系)だ。オリエンタルラジオ(RADIO FISH)の「PERFECT HUMAN」がテレビ初披露されたことに象徴されるように、この番組の「ネタ祭り」は、とりわけ自由度の高さが特徴だ。
今回もその空気は健在だった。ロバート・秋山竜次と友近はユニットでコントを披露。「機長と副機長」に扮し、ひたすらボケ合う。ナイツは「時事漫才には免許が必要」という設定を持ち出し、1級保持者はビートたけしと爆笑問題・太田光のみ、塙宣之は2級で昇給試験中という体裁で、往年の時事ネタを堂々と掘り返していく。
極めつけが、バイきんぐ。左遷されたサラリーマン・小峠英二が配属された新部署で出会うのは、「クールビズ」でパンツ一丁の男・西村瑞樹。その部署は、会社で“やらかした”人間が集められる掃き溜めのような場所で、「いずれ小峠さんもこうなります」と予言される。
昼間は外出禁止。その理由は「底辺の人間が働いているのを知られたくないから」。かかってきた電話には「最下層底辺部です」と名乗る。主な業務は社長の靴舐めと床舐めで、社長に足を折られれば30万円支給。定期的に毒ガスが撒かれるのは、「社員をギリギリで生かしておくのが社長の癖」だからだという。
『奇譚クラブ』に連載された小説『家畜人ヤプー』などを思わせる背徳的でディストピア的な世界観。そこからさらにカオスが加速していく。見終わった小池栄子が「ヤバっ」と絶句し、田中裕二が「何してんだよ」と呆れ、太田が「ネットでも無理だぞ!」とツッコむように、この年末年始どころか、ここ数年のテレビで見た中でも屈指のイカれたネタだった。
その爆笑問題自身も、導入こそ時事漫才の体裁を取りながら、「田中裕二のドラマ化」を構想する15分超の長尺漫才を披露。まさに圧巻の一本だった。
ほぼ同時間帯に日本テレビ系で放送されていたのが『漫才パーティー』だ。自由度の高い『検索ちゃん』とは対照的に、MCのオードリーを含む9組が各月を担当し、1年を振り返るという明確な“縛り”がある。だからこそ、それぞれの技術や工夫がよくわかる。
中でも光ったのはヤーレンズ。映画『8番出口』で「歩く男」を演じた河内大和とコラボするという課題を与えられた彼ら。正直、この手のコラボネタはうまくいかないことが少なくないが、ヤーレンズは見事にこのコラボを活かしていた。
「自腹で1000万円やるわ!」チョコプラ長田が驚いた女性コンビ
まず3人で登場。真ん中に無表情の河内が立っている。漫才が始まるとおもむろに舞台袖にはけていく河内。少し経って2人で漫才をしていると、その後ろを河内が歩いて去っていく。それを指摘しないと、漫才が最初に戻ってしまう。そう、漫才に『8番出口』の設定を踏襲したのだ。
年を越した1日の早朝2時(31日深夜)に放送されたのは、『新春!幻の優勝ネタ祭り』(テレビ東京系)。各賞レースのファイナリストが2本目にやるはずだった、とか、このネタをやっておけば、というネタを披露するという趣旨だが、M-1グランプリファイナリストのヨネダ2000が披露した「マダムマッチョ」といういつもに増してカオスなネタに対し、司会のチョコレートプラネットの長田庄平が「ホンマにこれを(M-1の)2本目にやろうとしてたんなら、マジで自腹で1000万円やるわ!」と言ったように、その真偽はわからない。
そんな中で「スペシャルアクト」として登場したキングオブコント王者・ロングコートダディも奇抜なネタを披露した。頭がギターの男子が好きな女の子の机で音を出している。そこにあらわれた女の子は頭はドラム。楽器の音だけでケンカや切ない恋心を表現した見事なコントだった。
そのロングコートダディは、元日朝の定番『爆笑ヒットパレード』(フジテレビ)でも王者たる所以を見せた。万引きした主婦が捕まって店員に動機を問い詰められる。「スリルがたまらなくて」と話すも、店員は「スリル」という言葉自体を知らず噛み合わないまま展開していく。
続くジャルジャルも秀逸だった。漫才をしているのだが、ツッコミがどこかにズレている。そしていちいちボケの構造を解説し「つまりこれは◯◯の笑いだったんですねー。これでこのボケをすべて紐解いて、このボケも素っ裸!お笑いスケベでごめんなさい!」と繰り返す。絶妙に嫌な感じのカツラも可笑しみに拍車をかけるメタ的なネタだった。
トム・ブラウンは、「剛力彩芽vs峯岸みなみ」をテーマにした漫才。それだけ聞いてもわけがわからないと思うが、見てもわけはわからない。けれど、爆発的に面白い。
『NHK紅白歌合戦』の翌日のため、その名場面をものまねする「きのうの紅白ものまね合戦」というコーナーもあったが、それとは別にナイツも、『紅白』をネタにした漫才を披露。わずか数時間で仕上げた塙は間違いなく、“時事漫才資格1級”だ。
その夜に放送されたのは、浜田雅功司会の『ドリーム東西ネタ合戦2026』(TBS)。お正月はなぜか下ネタの規制がユルくなる傾向にあるが、特にこの番組はそうだった。
錦鯉の漫才では、渡辺隆が長谷川雅紀にアニメ『チ。』を見てほしいと言うと、長谷川は「チ。(まる)ポ」を見たいと綺麗に返していたが、これを筆頭に「チンコ」系ネタが続出。何しろ、東軍として大トリを務めたニューヨークが披露した漫才も「チンコ太鼓」だった。

