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謝罪同行から不妊検査まで。親を呼べない結婚式に立つ仕事『レンタル家族』18年の現場とは

謝罪同行から不妊検査まで。親を呼べない結婚式に立つ仕事『レンタル家族』18年の現場とは

誰にも知られず「なかったこと」にされる“影の仕事”

謝罪同行から不妊検査まで。親を呼べない結婚式に立つ仕事『レンタル家族』18年の現場とは

――現在はどのような方がスタッフとしてはたらいているのでしょうか?

スタッフは、60〜70代の方やフリーランスではたらいている若い方が中心です。最初は業務の特性から演技経験者やモデルを募集していたんですが、実際にはまったく向いていなくて。台本があればできても、想定外の質問をされたときの臨機応変な対応が難しかったり、報酬面で揉めたりと、かなり苦労しましたね。

さらに、もしそのスタッフが役者やモデルとして有名になってしまったら、「この人、あなたの恋人だったよね」とバレる危険性もある。彼女役なども、周囲の人に「怪しい」と思われるような組み合わせになってはいけないので、あまりにも綺麗すぎる人は適しません。結局、一番適していたのは印象に残りすぎない“普通の人”だったんですよね。

――“普通の人”であることが重要とは意外です。この仕事ならではの大変さはありますか?

事前準備が本当に大変で、親代行や両親代行は10日〜2週間の準備期間が必要です。相手のプロフィールを覚え、突っ込まれた質問にも対応できるように打ち合わせを重ねる必要があります。生年月日や血液型、星座、相性占い、兄弟の有無やエピソードまで、相手と自然に話せるように何度もシミュレーションをするんです。

私たちの仕事は「その人の人生の一部になりきる」こと。少しでも嘘がバレたら、依頼者の人生が台無しになってしまう。実際には2週間の準備期間でも足りないくらいです。この時間と労力を考えると、一般的なアルバイトの時給よりもずっと安い報酬になってしまいますが、それでもいいと思える人だけスタッフになってください、というかたちで募集しています。

――それほどまで責任が重く、大変なサービスを続ける理由はなんでしょうか?

依頼者の人生の大切な場面をサポートできたという実感でしょうか。「おかげさまで結婚式が無事に終わりました」「謝罪を受け入れてもらえました」という報告を受けたときはやはり満足感がありますね。

ただ、依頼者にとっては、私たちの存在自体を忘れてしまいたいような、ある意味“なかったこと”にしたいような、誰にも知られたくない秘密。そのため、こちらから結果を聞くこともありませんし、報告もなくそのまま静かに終わることがほとんどです。

私が本当に望むのは、依頼を受ける前の段階で、「こういう選択肢もありますよ」「少し考えてみるのも一つの手ですよ」と伝えて、「考え直しました」「自力で解決します」と言ってもらえること。

でも現実は厳しくて、どうしても真実を言えない人たちがいる。私たちのサービスを使うことで、その人が幸せになれるなら、長年やってきたことにも意味があるんじゃないかと信じています。

「普通すぎる」に悩む人へ――その「普通」が価値になる

謝罪同行から不妊検査まで。親を呼べない結婚式に立つ仕事『レンタル家族』18年の現場とは

――『レンタル家族』というサービスは、現代社会の孤立や人間関係の複雑さを映し出しているように感じます。

そうですね。正直に言うと、最初は「こんなサービスに社会的意義があるのか」と疑問に思うこともありました。でも長年続けてきて、確実に救えている人はいるはずだと自負しています。

『レンタル家族』の仕事をやってみて分かったのは、世の中には本当にさまざまな境遇の人がいて、それぞれに事情を抱えているということです。親を紹介できない、友人がいない、一人で病院に行けない。でも、大切な場面では誰かに寄り添ってもらいたいと思っているはず。それが私たちへの依頼として表れているのだと思います。

――最後に、はたらくことや自分の人生にモヤモヤを抱えている若者に向けて、自分らしく楽しくはたらくためのアドバイスをいただけますか?

私自身、カウンセラーになるつもりが、まさかこの仕事を18年も続けることになるとは思いませんでした。最初はただのメール相談から始まって、結婚式の代理出席を頼まれたときも「そんなことできるわけない」と思っていた。でも一歩踏み出してみたら、意外とできるもので、多くの方に求められていることでもありました。

若い人たちの中には「自分には特別な才能がない」「普通すぎる」と悩んでいる人もいらっしゃるかもしれませんが、それは決して悪いことではありません。うちのスタッフが重宝されるのも、まさに“普通の人”だからです。自分ではなんでもないと思っていることが、実は誰かの役に立つ。その「普通」にこそ価値がある、と目を向けてみるのも一つかもしれません。

今の日本は、はたらく場所も時間も柔軟に選べますし、正社員、派遣、アルバイト、フリーランスなど、はたらき方もさまざまあります。一つに固執せず、いろいろな仕事を試してみると、自分でもまだ気付いていない才能が見つかるかもしれません。完璧な計画なんてない。大事なのは、思い詰めすぎずに、まず一歩踏み出してみることだと思います。

(「スタジオパーソル」編集部/文:間宮まさかず 編集:いしかわゆき、おのまり/写真提供:市ノ川さん)

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