
今から約1100年前、まだ若者と呼ぶべき年齢の少年たちが、すでに一流の戦士として戦場に立っていたようです。
このほど、ハンガリーで発見された3人の男性の遺骨は、そんな想像を現実のものとして突きつけています。
剣や弓、馬具、そして大量の銀貨とともに埋葬されていた彼らは、単なる戦士ではなく、社会的にも高い地位にあった「エリート戦士」だった可能性が高いのです。
しかも、そのうち2人は10代でした。
目次
- 若すぎる「エリート戦士」たちの正体
- 戦場に立った10代と、遠征の痕跡
若すぎる「エリート戦士」たちの正体
今回発見されたのは、10世紀前半に埋葬された男性3人の遺骨です。
年代測定の結果、3人はいずれも920年代から930年代に亡くなったことが分かりました。
年齢はそれぞれ17〜18歳、15〜16歳、そして30〜35歳で、驚くべきことに3人のうち2人は10代でした。
【発見された遺骨の画像がこちら】
副葬品の内容は非常に豪華です。
サーベル(刀剣)、弓と矢筒、馬具、銀製の装身具、さらに合計81枚もの硬貨が見つかっています。
硬貨の多くは北イタリアで鋳造されたもので、当時イタリアの一部を支配していた王の治世に由来するものでした。
DNA解析の結果、3人は血縁関係にあることも判明しています。
最年長の男性は、最年少の戦士の父親、もしくは兄弟だった可能性が高いとされています。
つまり、この埋葬は単なる戦士の集合墓ではなく、血縁で結ばれた「戦士一族」の墓だった可能性があるのです。
戦場に立った10代と、遠征の痕跡
当時のハンガリー人は、ヨーロッパでも恐れられた騎馬弓兵として知られていました。
王国を形成した彼らは、北イタリアを含む各地で軍事遠征を行っていたことが史料からも分かっています。
今回見つかったイタリア由来の硬貨は、そうした遠征の「戦利品」だった可能性があります。
10代でありながら、弓矢や刀剣、馬具を扱い、さらに豪華な装身具を身に着けていたことは、彼らが単なる兵士ではなく、指導層に近い立場で育てられていたことを示唆します。
特に17〜18歳の戦士は、金で装飾された帯や指輪、銀製の腕輪や足輪を身に着けており、その装いは明らかに特別なものでした。
また、同位体分析からは、3人が動物性タンパク質を豊富に含む食生活を送っていたことも分かっています。
これは、当時としては恵まれた食環境にあったことを意味し、彼らが社会的に高い地位にあった裏付けとも言えるでしょう。
今回の発見が突きつけるのは、中世初期の社会が想像以上に過酷だったという現実です。
現代であればまだ学生である年齢の少年たちが、すでに戦場に立ち、命を落としていたのです。
なぜ彼らは若くして死んだのか、どのような戦いに身を投じていたのかは、まだ分かっていません。
しかし、武器や馬具、遠征を物語る硬貨、そして血縁関係という手がかりは、1100年前の「戦士として生きること」の重みを静かに物語っています。
発掘された遺骨は、歴史の影に埋もれていた若きエリート戦士たちの人生を、今ようやく私たちの前に浮かび上がらせたのです。
参考文献
1,100-year-old burials of elite warriors and their ornate weapons discovered in Hungary
https://www.livescience.com/archaeology/1-100-year-old-burials-of-elite-warriors-and-their-ornate-weapons-discovered-in-hungary
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

