
ADHD(注意欠如・多動症)は、不安定な集中力・落ち着きのなさ・思いつきで行動してしまう衝動性などを特徴とする発達障害の一つです。
このほど、米ルイジアナ州立大学(LSU)の最新研究で、ADHDを持つ成人は「恋人から十分なサポートを受けていない」と感じやすい傾向があることが明らかになりました。
研究の詳細は2025年4月15日付で学術誌『Journal of Social and Personal Relationships』に掲載されています。
目次
- ADHDの大人は「支援を強く求める」
- 「欲しい支援」と「受け取った支援」のズレ
ADHDの大人は「支援を強く求める」
人間関係において、支え合いは欠かせない要素です。
研究者たちは、恋人や家族からの支援を大きく五つに分けています。
・共感や思いやりを示す「情緒的支援」
・能力や価値を認める「評価的支援」
・居場所を感じさせる「ネットワーク支援」
・助言や知識を与える「情報的支援」
・金銭や手助けなどの「道具的支援」です。
今回の研究では、ADHDの診断を受けた成人286人を対象に、恋人との関係における支援の感じ方が詳しく調べられました。
その結果、ADHD症状が重い人ほど、ほぼすべての種類の支援に対して、より強い欲求を抱いていることがわかりました。
特に、情緒的支援や評価的支援といった「心に関わる支え」への期待が高い傾向が見られています。
これは、ADHDのある人が甘えているという話ではありません。
集中の難しさや感情の揺れやすさといった特性を日常的に抱えているため、安心感や理解をより強く必要とする状況に置かれやすいと考えられます。
言い換えれば、支援への欲求が高まるのは、生活上の負荷が大きいことの自然な結果とも言えるのです。
「欲しい支援」と「受け取った支援」のズレ
しかし問題は、ここからです。
研究では、支援を強く求めているにもかかわらず、「実際にはあまり支えてもらえていない」と感じている人が多いことも示されました。
これがいわゆる「支援ギャップ」です。
特に目立っていたのが、多動性の症状でした。
落ち着きのなさや衝動性が強い人ほど、「これだけ支えてほしい」と思う気持ちと、「実際に支えてもらっている」という実感が、ほとんど結びついていなかったのです。
情緒的支援や道具的支援では、このズレが統計的にもはっきり確認されました。
研究者たちは、その理由としてコミュニケーションの難しさを指摘しています。
多動性が強いと、相手の言葉や行動をじっくり受け止める前に気持ちが次へ移ってしまい、提供された支援に気づきにくくなる可能性があります。
また、衝動的な伝え方によって、何を求めているのかが恋人に正確に伝わらない場合も考えられます。
さらに、感情調整が苦手な人ほど、「傷ついた」と感じやすいこともわかりました。
支援が足りないと感じたときの落胆や痛みが強く、わずかなすれ違いでも、拒絶されたように感じてしまうのです。
支援への期待が大きいからこそ、満たされなかったときの反動も大きくなってしまうと言えます。
この研究が示しているのは、ADHDのある大人が「支援されにくい性格」だという話ではありません。
むしろ、支援を必要とする量が多い一方で、その支援がうまく伝わらず、受け取れないという環境とのミスマッチが問題なのです。
実際、恋愛関係に満足している人ほど、症状の重さに関係なく「支えてもらえている」と感じやすく、傷つきも少ないことが示されました。
強い信頼関係は、すれ違いを和らげるクッションの役割を果たすのです。
ADHDのある大人が感じる「恋人が支えてくれない」という思いは、孤立やわがままから生じているわけではありません。
伝え方、受け取り方、そして関係の築き方。その小さなズレに気づくことが、より良いパートナーシップへの第一歩になるのかもしれません。
参考文献
Adults with ADHD crave more relationship support but often feel shortchanged
https://www.psypost.org/adults-with-adhd-crave-more-relationship-support-but-often-feel-shortchanged/
元論文
Preferences for social support and perceived support gaps among attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD) adults
https://doi.org/10.1177/02654075251332687
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

