
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え…っ! 「めっちゃ立派やん」「美しい」 コチラがトキとヘブンが今後引っ越す「武家屋敷」の現存する姿です
月給100円でも厳しくなる?
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、1890年に来日し、『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え、「再話文学」の元ネタとなるさまざまな怪談を語った、妻・小泉セツさんがモデルの物語です。
第14週68話では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が、意を決して松野家の家族に「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」と夫婦になったことを話します。かつてはヘブンを敵視していた養祖父「勘右衛門(演:小日向文世)」は、意外にもすんなりと結婚を認め、さらにそのまま自分も想い人の「上野タツ(演:朝加真由美)」にプロポーズをしてOKを貰いました。
それ自体はめでたいことですが、放送後SNSでは「ヘブン先生の扶養家族、どんどん増えてない?」「結局タツさんのこともヘブン先生が養うんでしょ?」といった心配の声も出ています。
トキはこれまでヘブンの女中として月20円を貰い、松野家の借金返済と、生家の母「雨清水タエ(演:北川景子)」と弟「三之丞(演:板垣李光人)」の生活費に充ててきました。トキはまだ、自分の給金に家族5人の生活がかかっていることをヘブンに言えていない状態です。そんななか、勘右衛門の妻になったタツの面倒も見ることになると、状況はさらに厳しくなります。
タツは松江の外れでひとりで暮らしているそうで、孫たちに会いに来るなかで勘右衛門と出会いました。タツがどのように生計を立てているのかは不明で、勘右衛門はこれまで描かれている通り、明治維新から20年以上働いていません。おそらく、今後ふたりだけで自立して生活するのは難しいでしょう。
ヘブンは現在、松江中学の英語教師として破格の月給100円を貰っていますが、さすがに今後ずっとトキとその家族全員を養い、借金も返済しなければならないと知れば、すんなりとは受け入れられないはずです。
ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーンさんは、来日後は高給取りになったものの、若き日からお金に困る生活を続けてきました。黒人女性のアリシア・フォリーさん(愛称:マティ)と結婚したせいで新聞記者の仕事を失ったり、レストランを始めるも共同経営者がお金を持って逃げたためひと月で潰れたりと、『ばけばけ』でも語られた苦労を味わっています。
そんなハーンさんは、小泉セツさんと夫婦になってから数か月後の1891年11月、熊本の第五高等中学校(現、熊本大学)に転任しました。1887年に開校したばかりだった第五高等中学校は当時全国に5つしかなかった官立(国立)の学校で、ハーンさんの月給は松江時代の倍となる200円にアップしています。
ハーンさんが熊本に移住した理由は、松江の冬の寒さが耐えられなかったほか、セツさんの家族(生家・小泉家、養家・稲垣家の人びと)を養うためだったと言われています。熊本市中央区手取本町の屋敷には、稲垣家の養父・金十郎さん、養母・トミさん、養祖父・万右衛門さんのほか、数人の女中、トミさんの養家・高浜家の親族なども代わるがわる身を寄せており、ハーンさんが生活を支えていました。それに加えて、松江にいるセツさんの実母・チエさんにも仕送りを続けています。
ハーンさんは当時近代化、西洋化が進んでいた熊本のことが好きになれなかったそうですが、家族のために我慢したのでしょう。
今後、ヘブンもトキとその家族のために熊本に移住することを決意すると思われます。その際、勘右衛門は万右衛門さんと違って松江に残るのか、それともタツを連れて一緒に熊本に行くのかにも注目です。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』(中央公論新社)、『小泉八雲 漂泊の作家 ラフカディオ・ハーンの生涯』(毎日新聞出版)
