2026年2月6日に開幕するミラノ・コルティナ五輪まで1か月を切った。日本代表最終選考会を兼ねたフィギュアスケート全日本選手権の結果により、同五輪に臨む代表選手が下記のように決まった。大会初日には日本の金メダル獲得が期待されるフィギュアスケート団体戦が行なわれる。ライバル国の名物記者に日本代表メンバーの印象、団体戦の行方について訊いてみた。
<ミラノ・コルティナ五輪 フィギュアスケート日本代表>
男子シングル(3名) 鍵山優真、佐藤駿、三浦佳生
女子シングル(3名) 坂本花織、中井亜美、千葉百音
ペア(2組) 三浦璃来/木原龍一、長岡柚奈/森口澄士
アイスダンス 吉田唄菜/森田真沙也(※団体戦のみ。個人枠はなし)
昨年12月末、全日本が開催された東京・代々木第一体育館。その記者席に米国のフィギュアスケート解説者ジャッキー・ウォン氏の姿があった。同氏はグランプリシリーズをはじめ、冬季五輪や世界選手権など多くの国際大会を取材している敏腕記者である。連日、全日本フィギュアを取材し続けたTHE DIGESTは同氏を直撃してみると、快く取材に応じてくれた。
ウォン氏は「実際に日本でナショナルを現地取材するのは今回が初めてなんだ。普段は自宅で観戦しているよ」と明かしてくれた。「特に今季は五輪シーズンだ。もともと日本の選手に興味があったから今回来日できて嬉しいよ」と笑顔を浮かべた。3日間、大会を見届けた同氏は「今まで見たきた中で最高の競技会のひとつだった」と絶賛。勢いあるジュニア勢の伸びしろに関心を示しつつ、日本フィギュアのレベルの高さに改めて脱帽していた。
まず男子の代表選手、全日本で表彰台に上った3選手の印象について訊いてみると、高い評価が返ってきた。「シーズンを通して鍵山優真は常に表彰台の有力候補のひとりだ。すべてのスケート選手の中で彼が最もイリア・マリニン(米国)に挑戦できる可能性が高いだろう」と分析。“4回転の神”と称されるマリニンと、現時点で鍵山が勝負できる相手だと主張した。
続けて「佐藤駿も表彰台に立てることを証明している。三浦佳生はクリーンな演技ができれば、彼もまた表彰台に立つ可能性がある。つまり、3人とも五輪本番で大きな可能性を秘める素晴らしい選手だ」と熱弁。「3人とも280点~300点までを獲得できることが証明されている。特にカギヤマは320点までを出せる力がある」と日本のエースに注目した。
一方、実力伯仲だった女子シングルの代表争いは「技術、芸術性、スケーティングの基礎。すべての選手が非常に高く、素晴らしいレベルが繰り広げられた」と唸る。「ミラノ・コルティナ五輪代表に選ばれた坂本花織、中井亜美、千葉百音はシーズンを通して自分たちの実力を証明し、全日本でも素晴らしい演技を見せた」と語り、彼女らの代表選出は順当な結果だと評した。 次にミラノ・コルティナ五輪の団体戦について訊いてみた。2014年のソチ大会から採用されたフィギュアスケート団体戦は、昨季の世界選手権や今季のグランプリシリーズなど対象大会の成績に基づくポイントランキングで上位10チーム(アメリカ、日本、イタリア、カナダ、ジョージア、フランス、イギリス、韓国、中国、ポーランド)が出場する。
国際スケート連盟(ISU)より発表された出場国のなかで日本は強豪アメリカに次ぐ2位で4大会連続での出場枠を獲得。前回の北京大会では史上初めて銀メダルに輝き、初の表彰台に立った。
フィギュアスケートの五輪団体戦は、各チーム男子シングル1人、女子シングル1人、ペア1組、アイスダンス1組で構成される。昨年11月に中国・北京で開催されたオリンピック最終予選で個人枠での出場を逃した日本のアイスダンスも、団体戦の出場要員として1組の出場が確定している。
ウォン氏は男女シングル、ペア、アイスダンスの各カテゴリーで日本と米国が参加チームの中で「頭ひとつ抜け出している存在」だと前置き。そのうえで日本はペアで、米国はアイスダンスでそれぞれアドバンテージを持っていると分析する。
「日本はペアで優位に立てるだろうし、米国はアイスダンスで有利だ。男子シングルについては米国が誰を派遣するかにもよるが、全体的には米国がやや優勢な立場にある」
同氏は“りくりゅう”こと、世界王者の三浦/木原ペアの実力を認めつつも、25年世界選手権と名古屋でのグランプリファイナルを制したイリア・マリニンとアリサ・リウの男女エース、アイスダンスで優勝したマディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組を擁す米国の総合力がわずかに上だとみて、米国の2連覇を展望した。
「ペアとアイスダンスの2種目である程度、両国の得点が相殺されるかもしれない。男子は、米国がイリアをショート、フリー両方で起用するかどうかで状況が変わってくるだろう。もし彼が両方滑らないのであれば、日本に有利に働く可能性がある。女子は、かなり互角な展開になる。全体としては接戦になると思うが、現時点では米国が少しリードしていると見ているよ」
日本は男子シングルで北京五輪銀メダリストで、GPファイナル2位に入った鍵山、同じく3位の佐藤駿、女子シングルでは、同大会初出場で2位に輝いた17歳の中井亜美、3大会連続の五輪出場で北京大会銅メダリストの坂本花織、今季GPシリーズ2勝の千葉百音ら実力者揃いだが五輪初出場のメンバーも多い。フィギュア王国としての総合力が問われる団体戦は、坂本や鍵山、りくりゅうら前回大会の経験者が勝負所のカギを握るかもしれない。
<ミラノ・コルティナ五輪フィギュアスケート団体戦>
男女シングル、ペア、アイスダンスの4種目で構成され、各演技のポイント合計で競う。予選(ショートプログラム/リズムダンス)で上位5チームが決勝(フリースケーティング/フリーダンス)へ進出。1チーム最大10名で、予選では各種目1位=10点~10位=1点。決勝でも同様に上位にポイントが与えられ、フリーでは2種目まで選手交代が可能。
取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

