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男の子なら雑に扱っていいのか…男子運動部に今なお残る「しごき」と「体罰」問題に潜む日本独特の慣習

男の子なら雑に扱っていいのか…男子運動部に今なお残る「しごき」と「体罰」問題に潜む日本独特の慣習

身体接触に伴う複雑な感情

西井 一応補足しておくと、被暴力経験がある若い男性が「体罰」に賛成する傾向にある一方、同じく被暴力経験のある場合でも若い女性のほうは「体罰」を否定する傾向が強いことをアンケート調査から実証している研究があります。

20年以上前の調査なので、変化してきた可能性はありますが、それでもまだ体罰を肯定的に捉える男子も存在していると思います。

例えば2022年12月、長崎県の私立高校バドミントン部の顧問が、部活動中に生徒を蹴ったり髪をつかんだりする事件が発覚しました。その際、体罰を受けていた男子部員が「自分たちを強くするための指導だと思う」と言っていたという報道がありました。

川口 天野さんの話は、保育を専攻している男子学生ということで、ある種の─表現が難しいですけれど、例えばそういった体罰的なものを嫌悪している学生が集まっている可能性はありますね。

天野 おっしゃる通りですね。みんな今時の子たちですけども、やはりマッチョな感じではなく、どちらかというと「男らしさ」とは少し距離があり、おっとりした子たちが多いように見受けられます。

西井 体罰を肯定するか否かにジェンダーが関わっているかどうかという問いとは別に、スポーツを媒介にすることによって、子どもたちを雑に扱ってもいい、暴力的な扱いは許容されるという価値観がずっと残り続けるという問題がありそうですね。

杉田 あまりうまく言えるかわからないんですけど、教師からの身体接触イコール体罰で絶対悪、みたいな話に対する違和感は自分にもちょっとあるんですよね。自分が中学生のときには、忘れ物をすると体育教師が棒でお尻を叩いたりとかって普通にあった。もちろん今ではアウトなんでしょうけれど、でもそれは僕の中ではそれほど嫌な記憶ではない。

むしろ嫌だったのは、職員室に呼び出して、自分が悪いと謝るまで許さない音楽教師とかのほうでした。「自分が悪い」と認めるまで、絶対に職員室から出さない。その代わり殴ったり叩いたりはしない。そっちのほうがすごい屈辱というか、嫌な暴力の記憶として残っていて……。

だから叩いていいって話でもないんだけど、身体接触=体罰=悪ということに対して、それで何かが逆に見えなくなっていないかなっていう疑問を抱くことは、一つの角度としてあってもおかしくないと思うんです。

難しいですよね。例えば最近、ケア論や感情史のような、感情や情動についての学問がいろいろ出てきています。ケアは他者に対する配慮や心理的共感、またはシンパシーとエンパシーなど、割と心理面で捉えられがちです。

けれども、やっぱりケアとか保育って、身体接触が常にあるから、それに伴うもろもろ複雑な現象が生じていると思うんですよね。身体接触を伴うから、完全にセクシュアルなものを消し去れない側面があるし、ハラスメントか否かで分けきれないような複雑で微妙なものが生じやすいような気がして。

つまり、身体の面倒くささ、厄介さ、細やかさのようなものが割と置き去りにされちゃっている面があるのかな。

名著でひらく男性学 〈男〉のこれからを考える

杉田俊介、西井開、川口遼、天野諭名著でひらく男性学 〈男〉のこれからを考える2025年10月17日発売1,089円(税込)新書判/240ページISBN: 978-4-08-721385-0

〈男〉はそれほどわかりやすくない――。対話で学ぶ、はじめての男性学。
日本では1990年代にいったん注目を集めた男性学が、近年再び盛り上がりを見せている。家父長制による男性優位の社会構造を明らかにするフェミニズムに対し、その理解が進む一方で、アンチフェミニズム的な声も目立つ。また一枚岩的に男性を「強者」として把握できない実像もある。構造の理解と実存の不安、加害と疎外のねじれの中で、男たちはどう生きていけばいいのか。本書は、批評家、研究者、実践者など4人が集まり、それぞれの視点から男性学の「名著」を持ち寄り内容を紹介・解説した後、存分に語り合った。多様で魅力的な男性学の世界にようこそ。

◆目次◆
序章 男性学とは何か――西井開
第一部 名著で読み解く男性学
第1章 ギーザ『ボーイズ』[発表・天野 諭]
第2章 セジウィック『男同士の絆』[発表・西井 開]
第3章 彦坂 諦『男性神話』[発表・杉田俊介]
第4章 コンネル『マスキュリニティーズ』[発表・川口 遼]
第二部 対話編 今、男性について何を語るべきか

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